近年、新型コロナ禍も追い風となり、キャンプに関心を持つ人が増えています。なかでも1人で楽しむ「ソロキャンプ」という新しいスタイルが人気ですが、なぜか夜はテントではなく車中泊するようです。なぜなのでしょうか。

ソロキャンプ人気でなぜ車中泊需要は増加した?

 ここ数年、新型コロナ禍も追い風となり、キャンプ熱が高まっています。
 
 そのなかで登場したのが「ソロキャンプ」という新しいスタイルです。
 
 しかし、キャンプに行くのに、夜はテントではなく車中泊する人が多いといいますが、どういうことなのでしょうか。

 ソロキャンプといえば、煩わしい都会の喧噪を離れ、一人でのんびりとキャンプ場で楽しむというのが一般的です。

 しかし、昨今はYouTubeなどの影響もあって、オフロード4WDで山に分け入り、誰もいない場所で泊まるというキャンパーも少なくありません。

 休日は必ずソロキャンプに出かけるという、静岡県在住のキャンパーにその理由を聞いてみました。

「一人になりたくてソロキャンプに出かけるのに、キャンプ場では人との接触があります。

 山の中であれば、ほとんど人と出会うことはありませんし、場所によっては携帯電話も通じません。まさに社会から隔絶された状態になれます」

 ソロキャンプを突き詰めると、やはり孤独がいいということになるといいます。

 インタビューをしたソロキャンパーは、より山中に入るために数年前に現行型のスズキ「ジムニー」を購入しました。

 都内にあるオフロード4WD中古車店によれば、ソロキャンプで山奥に行くために、ジムニーやトヨタ「ランドクルーザー」などを購入する人が非常に多くなっているといいます。

「最近は、旧型のランドクルーザーがよく売れます。価格が手ごろというのもありますが、ランドクルーザーは車内が広いため、車中泊に適しているからです」(オフロード4WD中古車店)

 ここでひとつの疑問が浮かびます。キャンプに行くのに、車中泊とはどういうことなのでしょうか。

 実は、これにはある理由があるといいます。それは、熊による人身被害が起因していたのです。

 環境省の資料によれば、令和(2019年)に入ってから、熊の人身被害が急激に増えています。

 令和元年(2019年)、2年(2020年)とも年間の被害件数は全国で157件。死亡者こそいませんでしたが、重篤な状態になった被害者もいます。

 ツキノワグマやヒグマの捕獲件数は、2011年を境に急激に増えています。

 被害件数を月別に見てみると、熊の活動が活発化する3月から5月頃までが、ほかの時期よりも圧倒的に多いのが分かります。

 前述の中古車店スタッフは次のように語ります。

「ひとりでテントで寝ていると、熊に襲われた場合に怖いということのようです。

 起きているときはタープの下で過ごして、寝るときは車中泊というソロキャンパーが増えているようです」

「熊は凶暴」は本当? もし熊に遭遇したらどうする?

 昨今、熊被害が多いことはさまざまなメディアで報じられていますが、なぜそのような状況になっているのでしょうか。

 長野県軽井沢町で、人と熊との共存に取り組んでいるNPO法人「ピッキオ」のスタッフに聞いてみました。

「よくいわれますが、山中で熊の餌となるドングリや栗などが減っているというのも、要因としてはあると思います。

 ただ、それよりも原因として考えられるのは、里山の崩壊です」(ピッキオスタッフ)

 里山とは、山と人里の境にあるエリアのこと。農耕地を肥沃にするための山林であり、炭焼きや自然の恵みを採取するための大切な場所です。

 しかし、昨今は農村部の高齢化が進み、離農する人が増えたことから、里山の管理が行き届かなくなっているといいます。

「人の手が入らない里山は、動物にとっては食料の宝庫になります。

 そのため、より人里に近い場所で野生動物が生息することになるわけです。熊もそのなかのひとつに過ぎません」(ピッキオスタッフ)

 そんな熊と人間の接触機会が増えているような状況下で、山中に入って車中泊をすることに危険はないのでしょうか。

 ステレオタイプなイメージですが、ヒグマであれば映画のようにクルマさえも倒してしまいそうです。しかし、ピッキオのスタッフはその心配はないといいます。

「熊をバケモノのように捉えていることが多いですが、元来はヒグマもツキノワグマも臆病な動物です。

 クルマを倒したり、傷つけたりというようなことはまずありません。車内でしっかり施錠をして寝れば安全です」(ピッキオスタッフ)

 とはいえ、山中でキャンプをする場合は留意すべき点があるといいます。それは食料の管理です。

「一度、餌づいた熊は、餌がどこにあるのかを覚えてしまいます。

 例えば、車内にあった餌を食べた熊は、クルマには餌があるという経験から、再びクルマに餌を探しに来るようになるのです。

 野営地でも同じです。山中でキャンプをする場合は、生ゴミや食料の管理をしっかりとして、野生動物が食べられないようにしておくことが、次に来る人のためにも重要なのです」(ピッキオスタッフ)

 ちなみに、もしクルマに熊が近寄ってきて場合は、クラクションを鳴らしたり、エンジンをかければ、大抵は熊が逃げるということです。

 もし、熊に出会った、もしくは見かけた場合は、必ず地元の市町村役場に報告して欲しいとピッキオのスタッフはいいます。それが次に来る人への注意情報になるからです。

 すでに2021年に入ってからも、熊の出没情報が各地から入ってきています。

 一人という状況になるソロキャンプでは、野生動物との接触を十分に気をつけると共に、山火事の原因となる火の管理にも留意して楽しみたいものです。