毎年、各メーカーから数多くの新型車が登場しますが、ヒットに恵まれるモデルばかりではありません。過去にも新たなジャンルを開拓しようと挑戦したものの、残念な結果となってしまったモデルも存在。そこで、新たな試みに挑戦して消えていったクルマを、5車種ピックアップして紹介します。

新ジャンルを開拓できなかったクルマを振り返る

 世界中の自動車メーカーから、毎年数多くの新型車が登場します。近年はSUV人気を反映して続々と新型SUVが登場し、さらに電動化も常識になりつつあります。

 しかし、そうしたトレンドに乗っかっていても、すべてがヒット作になるとは限りません。

 一方で、ほかには無い個性を重要視して、新ジャンルや新コンセプトに挑戦したものの、残念な結果となったクルマも存在。

 そこで、新たな試みに挑戦して消えていったクルマを、5車種ピックアップして紹介します。

●日産「インフィニティQ45」

 いわゆるバブル景気の頃、日産「シーマ」とトヨタ「セルシオ」が登場してヒット作となるなど、高級セダンが隆盛を極めていました。

 そして日産は1989年に次の一手として、シーマよりもさらに上級のプレステージセダンとして、「インフィニティQ45」を発売。

 インフィニティQ45は「ジャパンオリジナル」をコンセプトに、従来の高級車像にとらわれない世界に通用する日本独自の価値を追及したセダンで、車名のとおりアメリカで展開していたインフィニティブランドのフラッグシップとして開発されました。

 高級車というとメッキで加飾した大型のフロントグリルというのが定番ですが、インフィニティQ45はあえてグリルレスとした独創的なフロントフェイスを採用。

 また、七宝焼きのエンブレムや漆塗りのインパネを設定するなど、日本の伝統工芸を取り入れた斬新な試みがおこなわれました。

 搭載されたエンジンは新開発の4.5リッターV型8気筒DOHCで、最高出力は280馬力を発揮。

 足まわりには市販車としては世界で初めて油圧アクティブサスペンションをグレード別に設定し、高い走行安定性と乗り心地の良さを両立するなど、先進技術が搭載されています。

 内装ではシート生地にウールやレザーの素材が用意され、スイッチ類はしっとりとした操作感となっており、車載工具の品質にまでこだわるなど高級車として入念につくりこまれていました。

 しかし、個性的な高級車を目指して採用したグリルレスのフロントフェイスは、保守的なユーザーから敬遠されてしまい、マイナーチェンジでフロントグリルが追加されて、平凡な高級車になってしまいます。

 その後、バブル崩壊の余波もあって販売が低迷したため、インフィニティQ45は1997年に生産を終了。3代目シーマに統合されるかたちで、国内では一代限りで消滅してしまいました。

●トヨタ「プログレ」

 トヨタの高級車というと、頂点に「センチュリー」、その下に前出のセルシオ=レクサス「LS」、さらに「クラウン」というラインナップが平成以降は続いています。

 そこでトヨタは、さらに高級車の拡大を目論んで、1998年に「プログレ」を発売。

 全幅を1700mmに収め「小さな高級車」を目指したモデルで、オーソドックスなセダンのフォルムである外観は全長4500mmとクラウンより300mmも短いもののホイールベースは2780mmと比較的長く、余裕のある室内スペースを持ち、静粛性や乗り心地もクラウンと遜色のないレベルと評されました。

 また、内装にはウォールナットの本木目パネルや本革シート、高級オーディオなど高級車にふさわしい素材や装備を採用。ほかにもカーテンエアバッグや、カーナビゲーションの情報と走行中のクルマからの情報をもとに車両制御をおこなう「NAVI・AI-SHIFT」など、当時の最新技術も盛り込まれています。

 エンジンはコンパクトなボディに2.5リッターと3リッターの直列6気筒DOHCを搭載したことで、ゆとりあるパワーによるなめらかな走りを実現。

 日本の道路事情にもマッチした高級車のプログレでしたが、落ち着きや品の良さを追求した内外装は「退屈で地味」という声もあり、年配者にしか受け入れられず2007年に生産を終了。

 プログレは9年間のロングセラーだったもののモデルライフ末期は販売台数低迷が続いたため、後継車はなく一代限りで消滅しました。

●ホンダ「CR-Xデルソル」

 かつて「シビック」と共にホンダのFFスポーツラインナップを形成していたモデルとして、1983年に発売された「バラードスポーツ CR-X」があります。

 ショートホイールベースで軽量な車体、パワフルなエンジンが相まって、高い運動性能を誇りました。

 1987年には初代からキープコンセプトとしながら、より高性能なエンジンを搭載した2代目「CR-X」が登場。

 そして、1992年に発売された3代目「CR-Xデルソル(delSol)」は大きくコンセプトを変え、タルガトップのオープン2シーターモデルへと生まれ変わりました。

 CR-Xデルソルにはルーフの開閉機構によって2種類あり、ひとつはルーフ部分を手動で脱着する方式で、もうひとつが電動の「トランストップ」です。

 トランストップはルーフ部分が折りたたみではなく、トランクに自動的に格納される非常にユニークなギミックを採用していました。

 また、CR-Xの名にふさわしく、トップグレードには最高出力170馬力を発揮する1.6リッター直列4気筒VTECエンジンが搭載され、4輪ダブルウイッシュボーンの優れた足まわりを採用するなど、スポーツカーといえる走りを実現しています。

 1989年に発売されたユーノス「ロードスター」のヒットに追従したかたちのCR-Xデルソルは、ハイパワーなエンジンを搭載したFFオープンスポーツという、ロードスターとは異なるコンセプトのモデルといえます。

 しかし、トランストップは重量増につながり、2代目までのライトウエイトスポーツというイメージは薄れ、さらにオープン化はボディ剛性の低下ということをイメージさせました。

 CR-Xデルソルは従来のCR-Xユーザーから敬遠されてしまい販売は振るわず、1998年に生産を終え、この代をもってCR-Xは消滅してしまいました。

最先端だったはずが消えてしまったモデルとは

●ユーノス「800」

 現在、マツダの主力車種といえば「CXシリーズ」や「MX-30」といったSUVラインナップですが、バブル景気のころは数多くのセダンを販売していました。

 そのなかの1台が、1993年にユーノスブランドから発売されたフラッグシップセダンのユーノス「800」です。

 外観はフラッグシップにふさわしい大型セダンながら、角を丸めた流麗なフォルムを採用。

 4輪操舵やABS、トラクションコントロールを装備して実現した高い走行安定性と、アルミボンネット、ソーラー・ベンチレーション・システムなどが注目されました。

 そして、ユーノス800最大のトピックスは、2.3リッターV型6気筒DOHCエンジンにリショルムコンプレッサー(スーパーチャージャーの一種)を装着した、量産車世界初のミラーサイクルエンジンを搭載したことにあります。

 最高出力は220馬力と3リッター自然吸気エンジンと同等のパワーを誇り、2リッター車並みの低燃費を両立し、理想的な内燃機関に近づいたと評されました。

 しかし、すでにバブル景気は崩壊しておりマツダの業績が急激に悪化したことで、1997年にユーノスブランドを廃止。ユーノス800はマツダ「ミレーニア」として継続販売されましたが、2000年のマイナーチェンジでは肝心のミラーサイクルエンジンがラインナップから消滅しました。

 そして、2003年には車種整理のためミレーニアは生産を終了して「アテンザ」に統合。その後、ミラーサイクルエンジンは簡素化して「デミオ」や「アテンザ」に搭載され、他メーカーにも普及することになりましたが、複雑なメカニズムを搭載したのはユーノス800(ミレーニア)のみです。

●三菱「ギャランスポーツ」

 現在のSUV人気よりもさらに日本の自動車市場を賑わせていたのが、1990年代初頭を中心とした「RVブーム」です。

 当時は本格的なクロカン車が大ヒットし、各メーカーからクロカン車が販売されていました。

 このブームに乗るために、一般的な乗用車をクロカン車風にアレンジしたモデルも販売され、そのなかの1台が1994年に登場した「ギャランスポーツ」です。

 ギャランスポーツは7代目ギャランの派生車としてデビュー。欧州仕様の5ドアハッチバックボディをベースに、フロントに小ぶりなバンパーガードとルーフレールを装着してRV風なフォルムを実現。

 また、ギャランスポーツは「GT」と「RV」を融合した「GTRV」という新しいコンセプトのモデルとアピールされ、トップグレードのエンジンは、最高出力240馬力(5速MT)を誇る2リッターV型6気筒DOHCツインターボを搭載。駆動方式も本格的なフルタイム4WDシステムを組み合わせるなど、まさにGTRVと呼ぶにふさわしい走行性能を獲得していました。

 ステーションワゴンに匹敵する使い勝手の良さに、高性能エンジン+4WDという欲張りな組み合わせといえましたが、当時は5ドアハッチバック不遇の時代で、「5ドアハッチバックは売れない」というジンクスを証明するかたちで販売は低迷。

 1996年に8代目ギャランが登場すると同様のモデルは設定されず、ギャランスポーツは短命に終わりました。今のクロスオーバーSUVに近いコンセプトですから、出るのが早すぎたのかもしれません。

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 冒頭にもあるとおり、今や各メーカーから新型SUVが次々に発売されています。しかし、新たなジャンルやコンセプトを開拓しようというクルマは、ほとんどありません。

 それだけ自動車市場が成熟したということなのでしょうが、失敗が許されないという面も大きいでしょう。

 そのため、個性的なモデルが少なくなってしまったのは、寂しい限りです。