交通量の多い高速道路では、ICやJCTなどの加速車線が通常より長く数キロほどにわたり整備されていることがあります。この場合、本線のクルマが走行車線から移って走っても良いのでしょうか。

渋滞対策で数キロにわたり続く加速車線

 高速道路のインターチェンジ(IC)などで、本線に合流する加速車線が通常より長めに整備されている箇所があります。後ろの速いクルマをやり過ごすときなどに、走行車線からこの「長い加速車線」に車線変更して走っても良いのでしょうか。

 結論からいうと、法的には問題ないものの、長い加速車線の設置目的を踏まえると推奨できないといいます。

 長い加速車線の多くは交通量の多い高速道路で、混雑・渋滞対策の一環として整備されています。

 たとえば大動脈の東名高速では、海老名JCTで上り線に合流する加速車線が約2km、その先の海老名SAの加速車線が3kmほどと、それぞれ通常より長く整備されています。

 関越道は、上り渋川伊香保IC付近が上り坂になっており、IC直前のサグ部(下り坂から上り坂に変わる箇所)とICからの合流車で渋滞が発生しやすいポイントです。

 そのため対策として、ICの加速車線が坂を上りきる地点まで約1.9kmにわたり整備されています。

 同じく関越道の上り花園IC付近もサグ部が近接しており、サグ部と上り坂、ICの合流で渋滞を誘発しやすい構造となっています。

 対策の一環として、上り線はICから上り坂が続く区間を中心に、およそ2.4kmにわたり加速車線が延伸されています。

 このように、走行車線(左の車線)のさらに左に加速車線が長く整備されているとき、交通の流れを円滑にするために走行車線から車線変更して走っても良いのでしょうか。

「違反ではないが推奨されない」理由は?

 ある県の警察関係者は、扱いとしては、長い加速車線は本線車線ではなく「付加車線」であり、走行車線から車線変更すること自体は法令違反ではないといいます。しかしだからといって気軽に車線変更してよいかというと話は別で、次のように話します。

「そもそも加速車線は、本線に合流する車両が加速するための車線であるため、その設置目的を踏まえると、距離が長いからといって走行車線から移ることは推奨されません。

 高速道路の本線は基本的に2車線や3車線が整備されていますので、例えば速いクルマに先を譲る場合でも、追越車線から追い越してもらう方が良いでしょう」

 別の県の警察関係者も同じく、本線を走る車両がいったん長い加速車線に移ること自体は「法令違反ではないですが……」と前置きしたうえで次のように話します。

「長い加速車線の本来の設置目的は、たくさんの合流車両が本線にスムーズに合流できるようにするためのものです。そのことを踏まえると、本線の車両は加速車線に移るべきではありません」

 このように加速車線は、あくまで本線に合流する車両が加速するためという位置付けのようです。そのため、本線の車両は仮に流れが悪くなったとしてもそのまま本線を走り続ける方が無難といえます。

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 ちなみに渋滞ポイントとなる高速道路の合流地点では、加速車線を伸ばす以外の対策をしているケースがあります。その一つが「ファスナー作戦」です。

 そもそも渋滞の発生原因の一つに、合流車両が十分に加速しないまま早々と本線に合流することが挙げられます。

 名神高速の一宮JCTでは、東海北陸道から名神上り線(名古屋方面)に合流する車両が多く渋滞が多発。

 そこで管轄するNEXCO中日本は、加速車線と本線の走行車線を分けるラバーポールを約520m延長し、加速車線の先端のみでファスナーのように1台ずつ交互に合流させるファスナー作戦を展開しています。

 高速道路の合流をめぐっては法令の面でも変化が見られます。2020年4月、運転支援や自動運転システムの開発の進展にあわせて実勢速度との矛盾を解消するため、加速車線や減速車線の最高速度を定める道路交通法施行令が一部改正されました。

 それまで高速自動車国道の本線車道に接する加速車線・減速車線の最高速度は60km/hでしたが、一部改正により本線車線と同じ(100km/hまたは80km/h)に変わっています(施行令第11条・第27条。自動車専用道路などは別)。

 高速道路で本線に合流する際は、加速車線の長さを存分に使って、十分なスピードまで加速してから、ということを改めて意識した方がよさそうです。