新車登録後は3年、以後基本的には2年ごとにやってくる車検ですが、クルマの維持費のなかでも車検費用を負担に感じる人が多いようです。車検費用を抑えるコツはあるのでしょうか。日ごろのメンテナンスや運転の仕方など、コストダウンにつなげるための注意点などをプロに聞いてみました。

公道を安全に走るための基準を満たしていることを示す「車検」

 クルマを乗り続けていくうえで避けては通れないのが「車検」です。正式名称は「自動車検査登録制度」といい、国が定めた保安基準を満たしているかを検査し、問題なければ再登録して継続して公道を走れます。

 新車なら登録から3年、以後2年ごとに受ける義務があり、また、車検が切れてしまうと公道での走行ができなくなります。

 車検時に整備や修理などをおこなわない場合、クルマのサイズにもよりますが、自動車重量税、自賠責保険料、測定検査料などのいわゆる法定諸費用と、ディーラーや整備工場などに依頼した代行手数料の費用は5万円から10万円程度というのが、日本車では一般的ではないでしょうか。

 たとえば1.5t未満の2リッター以下の普通車の場合で見ると、自動車重量税は2年で2万4600円、加入が義務付けられている自賠責保険料は24か月で2万10円(2021年4月から値下げ)、測定検査料が1700円、代行手数料が数万円というのが内訳になります。

 ちなみに、エコカーの場合は「エコカー減免」の対象となり、ピュアEVなら重量税は免除、ハイブリッドなど低燃費車の場合は1万5000円とガソリン車より1万円程度安く設定されています。

 しかし、実際には3年または2年走行すると、クルマの保安部品が経年劣化や壊れているなどの不具合が見つかり、追加料金を支払うケースが多いものです。

 また車検時にオイル交換などのメンテナンスをおこなう場合は車検時の支払いが増え、クルマの維持費のなかでも車検を負担に感じる人も多いとされています。

 では、車検で検査される項目はどんなものがあるのでしょうか。検査項目は大きく分けて6つあります。

 1つ目は「同一性の確認」です。車検証に記載されている車両かどうかを確認するものですが、エンジンに刻印された番号と車体に刻まれた車台番号が一致しているかチェックします。盗難車やエンジン載せ替えなど、よほどいわく付きのクルマでなければ問題なく済みます。

 2つ目は「外回り検査」です。灯火装置、ワイパー、ウィンドウォッシャー、マフラー、ドライブシャフトブーツ、ステアリングラックブーツの6つがチェックされます。

 灯火装置とはライト類全般を指しており、ヘッドライトやテールランプ、ブレーキランプ、バックランプ、ナンバー灯、ウインカー、車幅灯がすべて正常に作動するかを確認します。これは道路交通法で定められた規定に適合するか、ヘッドライトは光軸や反射光の広がりなどを中心にチェックがおこなわれます。

 ワイパーは正常に作動するか、雪や雨などを拭き取ることが可能かをチェック。問題なく動いてもワイパーゴムが切れていたり緩んでいる場合は事前の交換が必要です。

 ウィンドウォッシャーは、十分な量の洗浄液(または水)が出てくるかを確認する項目です。これもノズルの詰まりなどで液の出が悪いと車検に引っかかることもあります。

 マフラーの項目では、音量や取り付け位置、触媒の有無などが確認されます。触媒は排出ガスに含まれる有害物質を浄化させる機能を持つパーツで、未装着状態では車検が通りません。

 またマフラー本体が劣化によって穴が空いてしまったり、断熱材(バッフルプレートなど)に破損が生じて排気音が大きくなっていないかもチェックされます。

 ドライブシャフトブーツとは、エンジンから発生したパワーをタイヤ(正確にはホイール)に伝えるドライブシャフトにはベアリングとジョイントが取り付けられており、これを保護する目的で取り付けられているゴム製のカバーのようなものです。

 これが破れているとグリスが飛散し、タイヤに推進力が伝わらない事態にもなりやすいため、主に破れていないかをチェックされます。

 ステアリングラックブーツは、タイヤ(正式にはホイール)とステアリングを連結させるタイロッドと呼ばれるパーツを保護するカバーのこと。これも正常な動作に欠かせないパーツを守る重要なパーツなので、破れている場合は事前に交換が必要になります。

 ここではブレーキもチェックされます。フット式ブレーキとサイドブレーキの効き具合をチェックし、合わせてブレーキパッドの残量などもここで計測されます。

 3つ目は「タイヤ」です。チェック項目はトレッド摩耗、空気圧、偏摩耗、ひび割れやキズの有無です。

 摩耗具合の目安である、タイヤの溝の残りが1.6mmになると現れる「スリップサイン」が出ていると車検は通りません。

 また「サイドスリップ検査」という、クルマが真っ直ぐ走れているかを調べる検査もおこなわれます。これは、ハンドルを真っ直ぐにして走行させたとき、1mにつき左右への横滑り(ズレ)が5mm以内である必要があります。

 4つ目は「ガラス類」のチェックです。フロントガラスやサイドウインドウ、リアガラス、サイドミラーなどが割れていないか、フロントガラスとフロントサイドウインドウに着色フィルム装着の場合は可視透過率が70%を超えているかなどが検査されます。ここで着色フィルムが濃すぎると車検は通りません。

 5つ目は「各種メーターの動作確認」です。主にスピードメーターがチェック対象で、時速40km時点でのメーターの数値と実際の速度にズレがないかをチェックされます。合わせてインパネ内のシートベルト警告灯やエアバッグ警告灯など各種メーターの不具合がないかも確認されます。

 6つ目は「内装」です。各種車内灯の点灯、シートベルトの破損の有無、ギアパターン(MTの場合)の不具合の有無、クラクションスイッチ部分にホーンマークの有無、ヘッドレスなどの有無(平成24年7月以降)などが目視で確認されます。

こまめなメンテナンスが車検の費用をセーブする秘訣

 数あるチェック項目のなかで、とくに厳しいポイントや、事前に確認や修理・交換するポイントを押さえておけば、結果として車検での費用を安く済ませられるといえるでしょう。

 車検で一度に多くの出費をさせないためには、どうするのがいいのでしょうか。

 都内で輸入車・国産車を問わず数多くの修理や整備を手がけているプロの整備士Hさんに、車検で費用を抑えるコツを聞いてみました。

「車検で一度に全部を修理や交換すると多額の出費になってしまいますので、やはり消耗パーツやオイル類などは定期的なチェックや交換がお勧めです。トータルで計算するとそれほど費用が抑えられるわけではないのですが、分散して支払えば負担が軽減されるといえます」

 やはりこまめなメンテナンスをしていたほうが、クルマも良好な状態を維持でき、車検で必要経費以外の出費をぐっと抑えることができそうです。

 それでは、車検をスムーズにすませるには、どんなことに注意すればいいのでしょうか。項目ごとにポイントを教えてもらいました。

●タイヤ

 タイヤのチェックで多いのが摩耗とひび割れなどの劣化の確認です。

 タイヤワックスなどを大量に使っている人がいますが、じつはタイヤを劣化させる可能性もあります。そのため、ボディ以外のコーティング材の使用はほどほどにしておきたいところです。

 また直進性をチェックするサイドスリップ検査の前に、ホイールのバランス取りをしておくことをお勧めします。

 クルマを買ってからそのままの人や、タイヤを交換して安心されているケースも多いと思いますが、意外に組み付けが甘かったり、正しいタイヤの向きではない状態なこともあります。

 バランス取りをしてくれるガソリンスタンドもあるので、事前に確認しておくと問題なく車検に合格できると思います。

●ドライブシャフトブーツ・ステアリングラックブーツ

 ドライブシャフトブーツやステアリングラックブーツは、どんなに丁寧に運転しても劣化を遅らせることは難しく破れることもあります。

 事前の定期点検などでチェックしておき、交換したほうがいいかを相談するといいでしょう。

●灯火類

 灯火類で不合格になりやすいのが、ヘッドライトバルブを純正ハロゲンから社外品のLEDに交換したケースです。

 車検に対応した商品でも、リフレクター(ヘッドライトユニット内の反射板)形状がLEDとマッチせず不合格になってしまうケースも増えています。

 できれば車検前に光軸調整をお願いするか、純正バルブなどに交換しておくことが車検に落とされる可能性を軽減できるといえます。

●ブレーキ

 ずっとブレーキを軽くかけながら走っている人がいますが、本人は安全のつもりでブレーキを緩く長めにかけているつもりでしょうが、ブレーキを引きずっているだけで、あれではパッドも無意味に減ってしまいます。

 同じように、信号前などでポンピングブレーキ(複数回に分けて踏むブレーキ)をする人もいますが、あれもほとんど意味はありません。

 日頃からしっかりと同じ踏力でブレーキを操作することで効果的に制動力を発揮できます。

●ドレスアップパーツ

 ドレスアップで取り付けたパーツもできるだけ純正に戻しておくほうが車検は通りやすいです。最近は灯火類でのチェックがかなり厳しくなっていますが、騒音問題などもあり、社外品マフラーなども可能な限りできるだけ純正に戻しておいたほうが車検は通りやすいでしょう。

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 もっとも車検費用を安く済ませる方法としては、自分で検査場にクルマを持ち込む「ユーザー車検」があります。

 ただし、これも何も対策をしないで持ち込むと不合格になってしまう可能性があるといいます。

「そういった場合は、テスター屋と呼ばれる『予備検査場』で事前にチェックすることができます。ここは、実際の検査場と同じチェックをおこない、不具合がある箇所を洗い出してくれる民間の施設になります。

 とくにヘッドライトの光量不足や光軸のズレ、ブレーキの動作確認やパッドの残量なども調べてくれます。

 費用は施設ごとに違いますが、おおむね数千円で済み、修理や交換が必要な箇所のみ、改めて整備工場や修理工場などにお願いすることで最低限の追加費用で車検を通すことができます」(整備士H氏)

 このユーザー車検は、自分でさまざまな書類を提出、実際に検査場で作業をおこなう必要があるなど手間がかかりますが、クルマに関する知識も増えるので、時間と気力のある方人は試す価値はあるでしょう。

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 日ごろの運転やメンテナンスなどに気を付けることで、車検費用を抑えることができるでしょう。

 タイヤとブレーキの摩耗を抑制するために急のつく運転を極力控えたり、タイヤの空気圧は常に適正を保つなどによりタイヤの偏摩耗を防ぐことができます。

 ブーツ類の負担軽減するために、極端なローダウンやリフトアップをおこなわないことも対策のひとつです。

 また、ウォッシャー液の補充や、灯火類のバルブ交換などDIYできることは自分でおこなうなども車検時の費用を抑えるコツだといえるでしょう。