2021年6月12日に発表された2代目となる新型「NX」は、次世代レクサスの第一弾として登場しました。ブランド初のPHEV化&新開発ターボなどさまざまなユーザーに適した仕様を展開する新型NXとは、どのようなモデルなのでしょうか。今回は、チーフエンジニア(CE)の加藤武明氏と、レクサスデザイン部 部長の須賀厚一氏の独占インタビューを紹介します。

見た目以上に大幅刷新された新型「NX」のチーフエンジニアに独占インタビュー

 2021年3月にレクサスのブランド変革「レクサスエレクトリファイド」をモノとして表現したコンセプトモデル「LF-Zエレクトリファイド」が世界初公開されました。
 
 このとき、「このモデルに採用された技術/デザインは、今後登場する新型車や改良モデルに投入」と語っていましたが、その第一弾となるのが2021年6月12日に発表された2代目となる新型「NX」です。

 初代NXは2014年に「RX」の弟分として登場。扱いやすいボディサイズ、魅力的なデザイン、走りへのこだわり、(レクサスにしては)お求めやすいプライスなどから、レクサスの入口としての役目が与えられたモデルとして人気を博し、モデル末期まで安定したセールスを実現。また、RXと並んで販売台数をけん引するモデルの一台でもありました。

 そんなヒットモデルの2代目ですが、ズバリ「刷新」という言葉がこれほど似合うクルマはないな……と感じました。

 今回の発表に先駆けて、筆者(山本シンヤ)はチーフエンジニア(CE)の加藤武明氏と、レクサスデザイン部 部長の須賀厚一氏に、新型NXに掛けた「想い」や「こだわり」を伺っています。

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――2005年にレクサスの国内導入から現在まで、初代から2代目で同じCEなのは加藤さんくらいですよね?

 加藤:トヨタブランドだと「MIRAI」の田中義和も同じ状況ですが、レクサスは私だけ……光栄なことだと思っています。

――つまり、初代の良い所/悪い所をすべて知る人が2代目を開発したわけですが、NXとして変えなかった所、逆に新世代レクサスの幕開けとして変えた所はどこでしょうか?

 加藤:まず、変わった所は社内でのレクサスの立場と期待値で、初代のときとはではまったく違っています。

 初代は「いかにトヨタと差別化するか」が目的でしたが、今回は「トヨタというプラットフォームのなかでレクサスの役目は?」、「会社としてカーボンニュートラルに向けて何をするのか?」でした。

 そのため、マインドセットとしては「もう一度やり直す」という意気込みで取り組みました。

 その一方で、レクサスのサスティナブルな成長のなかで若い世代を虜にしなければなりません。

 現在は、末っ子の「UX」もラインアップされていますが、RXと並んでこのセグメントを引っ張ってきた自負もありますので、「これがNXだよね」といった部分はシッカリと継承していく必要があると考えました。

――世界初公開の前にリーク画像がSNSを中心に出回りました。ただ、ユーザーの反応が非常にポジティブだったことに驚きましたが、それに対してどうでしたか?

 加藤:リークに関してはノーコメントですが(笑)、多くの人に「レクサスだよね」、「NXだよね」と思っていただけたことは、ブランドとして認知されている証拠かな……と。

――プラットフォームはTNGA「GA-K」を採用と発表されています。RAV4/ハリアーにも採用しその実力は私も実感していますが、さらにレクサス流の考え方がプラスされると考えると、期待値はさらに高まっています。

 加藤:GA-Kなので「RAV4シリーズを流用?」という人もいますが、そうではありません。

 実はGA-Kを立ち上げる企画段階から、RAV4がやりたいこと、レクサスがやりたいことをシッカリ議論して開発がスタートしました。

 なので、「足りないから後から対応する」ではなく、ベースの段階からレクサス独自の補強やアイテムを追加することを想定したモノづくりをしています。

 ただ、下山テストコースで鍛えていくと、やはり「足りない」という部分があったのも事実で、その辺りは新たな追加や変更などをおこない、体幹を徹底して鍛えました。

 基本構造という意味でいえばGA-Kですが、中身はレクサス独自のモノです。

――今もトヨタ/レクサスは別でなければいけないという人もいますが、僕はトヨタとレクサスのいい所は一緒で、その先に違いがあればいいと思っていますが、新型NXはそういう考え方と聞いて安心しました。

 加藤:私のなかでも「レクサスって何だろう?」という葛藤は常にありましたが、今は「トヨタブランドのなかのレクサス」と考え方も整理されています。

 社内のレクサスに対する理解はもちろん、実績も含めて。なので、差別化のための差別化はしていません。

 新型NXは「レクサスの走りの考え方『ドライビングシグネチャー』はどうあるべきか?」、「レクサスが必要な先進安全・マルチメディアはどうあるべきか?」など、レクサスを再定義する第一弾のモデルでもあります。

――RAV4/ハリアーと基本性能が高いモノがトヨタブランドに存在するなか、「レクサスとは?」がプラスされた新型NXですが、俄然ハードルが上がりました(笑)。

 加藤:そこは自信がありますので、楽しみにしていてください。

新型NXの内外装デザインはどのように変わった? 新機能とは?

――今回、一目でNXと解るけど、新旧で見比べると実はかなり違うことに驚きました。キープコンセプトのようで実は攻めている印象を受けました。

 加藤:パッと見はヘリテージを継ぐが、実はパッケージ・デザインを含めてすべて新しくなっています。そう感じていただいたことこそ、最高の褒め言葉です。

 須賀:実は初代NXはレクサスが攻めに転ずるキッカケとなったクルマで、カテゴリーもスタイリングも挑戦的でした。

 そのマインドセットは2代目でも不変です。一般的には「初代が成功すると2代目は苦労する」といわれていますが、幸いなことに武器がありました。

 その武器のひとつは新プラットフォームです。「走りの性能を高めたい」という加藤の強い想いから開発されましたが、リアトレッドが59mm拡大されています。

 そんな基本骨格の武器があったので、デザインは初代の「デザイン表現で挑戦」ではなく、基本骨格を素直に受け止めて大人な表現にしようと。

 そのうえで「NXの要素って何だろう」と研究していくサイドフォルムのとくにリアに力感を持たせたシルエットだということが解りました。

 その一方で、ほかの部分の造形はシンプルにしたのが新型NXであり、新しいレクサスデザインになります、実はボディのラインの数を数えると、減っているのが解りますよ。

――確かに初代はエッジが強くガンダムチックでしたが、新型は面で表現されているので滑らかで優しい印象を受けました。

 須賀:実はそこは意識した部分です。ガンダムも初代より2代目のほうが形は複雑ですが、僕らはあえてそこにいかず「純度」を高めることに挑戦しました。

――スピンドルグリルも採用当初は色々いわれましたが、最近は上手くデザインに溶け込んでいます。この辺りは新型NXではどうなっていますか?

 須賀:スピンドルグリルは「フロントオーバーハングの質量を抑える」、「開口部を抑えながら冷却性能を保証する」と慣性諸元にこだわった結果です。

 最近はスピンドルグリルもこなれてきたといわれますが、それを良しとせず原点に返って技術を向きあいました。

――NXの特徴だったヘッドライトと独立したデイライトが、新型では一体化されましたがその意図は?

 須賀:スピンドルグリルと同じく軽量化のためです。

 下山テストコースで鍛えるうえでフロントオーバーハングの重量削減は重要な要素で、今回は機能に忠実を優先しました。

 加藤:新型を開発するうえで「もう一度クルマづくりの基本に立ち返ろう」と。

 今回は差別化のためのデザインではなく、軽量化は? 質量はどう使う? トレッドは? パッケージは? といったなかで、「その時のデザインはどうあるべきか?」というイメージです。

――一方、インテリアは大きく変わりました。その点についてはどうですか?

 須賀:TAZUNAコクピット「人とクルマが一体になる」をクルマのなかでどう表現できるかの挑戦でした。

 企画時からセンター14インチ大型モニター搭載は決まっていましたが、「エンタメ志向にならずに走りに対してどうあるべきか?」にこだわりました。

 視線を自然に誘うメーターフード、ドライバー側に寄せてコクピット感を強調させたモニター系、ステアリングを中心に走行系機能は腕のリーチ内にレイアウトなど、ドライビングにより集中できる環境を目指しました。

 これらの基本的な考え方は、今後のモデルにも順次採用していきます。

――レクサスの特徴のひとつだったリモートタッチは廃止されましたが?

 須賀:直近は併用式が多かったですが、スマホがスタンダードですのでやめました。

 物理的なスイッチはかなり減らしましたが、タッチ式スイッチを含めて直感的な操作にこだわっています。

 ちなみにドライブモードセレクトもシフト操作をしてからスッと使えるように手の届く位置に変更しています。

――ステアリングスイッチも変わっていますね?

 加藤:静電タッチ式を採用しました。右が運転支援系、左がオーディオ系ですが、HUD上に機能表示されるので目線を前方に置いたまま操作が可能です。

 そういう意味では、リモートタッチの進化版ともいえます。

 ナビゲーションはタッチ式ですが。姿勢を崩すことなく操作できる最大の幅を持たせています。

――ドアノブに採用された「eラッチシステム」はどのような機能なのでしょうか?

 加藤:ふすまの所作は1モーションでシンプルに開けますが、それをドア開閉に応用できなか……という発想から生まれた機能で、ドアのラッチ/アンラッチ機構をスイッチによる電気制御にしています。

 乗車時はドアノブに手を入れて引くだけ、後者時はドアノブを押すだけでOKです。

 さらにBSMと連動させて後方からの接近を検知して、注意喚起はもちろん状況によってはドア開放をキャンセルさせることもできます。

 もちろん、内外共に物理レバーも隠されているので、もし電気が落ちたとしても心配はありません。

 これらも今後のモデルに水平展開していく予定です。

レクサス初PHEVと新開発ターボ、そして電子制御AWDはスバルと協業?

――パワートレインは日本向けには4種類用意されています。その役割は?

 加藤:レクサスはカーボンニュートラル実現に向けて電動化リッチな戦略を取ることを発表していますが、その答えのひとつです。

 UXではレクサス初の電気自動車(BEV)を投入しましたが、新型NXはレクサス初のPHEVの設定に加えて、HVもモーターサイズアップ(RXサイズを動かすパフォーマンスを備える)&バッテリーのリチウムイオン化により駆動力をアップさせています。

――ガソリン車はどうでしょうか?

加藤:初代は2リッターターボも好評でしたが、新型ではより走りを楽しむ方向けに3.5リッターV型6気筒をダウンサイズさせた2.4リッターターボを新設定。

 さらにリーズナブルにNXを楽しみたいという人向けに2.5リッターNAも用意。廉価版と思われがちですが、駆動力は初代の2リッターターボ十分以上の加速力を備えています。

――2.4リッターターボは新型NXが初搭載となる新エンジンで、高トルク対応型8速ATとの組み合わせとなります。このエンジンのみ電子制御4WDが設定されていますが、これは?

 加藤:この時代でもコンベンショナルなエンジンを選びたい人への提案です。絶対的な力強さはもちろんですが、非常に熱効率の高いターボでセンターインジェクション採用なども相まってエミッションも高いレベルを実現している、新時代ターボです。

 電子制御フルタイム4WDは駆動力コントロールをおこなっており、レクサスの「スッキリとした操舵」と4WDの持つ「高い接地感とドライバーの安心感」を両立させたシステムとなります。駆動力配分は電子制御多版クラッチでコントロールし、前後駆動力配分は75:25から50:50まで可変します。

――電子制御多板クラッチというとGRヤリスのGR-FOURも同じ機構を採用していますが、それとの関連性はどうでしょうか?

 加藤:鋭いですね。駆動力配分や味付けは異なりますが、モノとしてはGRヤリス用と同じです。

 このシステムはレスポンスが非常にいいのでドライバーのインプットに対して瞬時に反応してくれるので、新型NXに水平展開しています。

――トヨタグループのいい所は活用しようという考えは大賛成です。この電子制御4WDの開発で今までとは違う取り組みがあったと聞いていますが?

 加藤:ひとつはこのシステムを搭載するうえで、下山テストコースでプロドライバーの指摘を織り込みながら、体幹を鍛えるために走り込んだこと。もうひとつはスバルとの協業です。

――スバルとの協業はGR86/BRZ、bZ4X/ソルテラだけではなかったわけですね。

 加藤:スバルが直接開発に関わっているわけではありませんが、スバルと協業しているメンバーと車両開発を一緒におこなっています。

 楽しいクルマづくりの哲学を共有するスバルと、「クルマをどう動かすのがいいのか?」、「どう評価するのか?」、「そのための要素技術は?」など、そこで得た技術や知見をハード/ソフト共に入れ込んでいます。

 最終的にはレクサスの味になっていますが、スバルはある意味「4WDの先生」でもあるので、色々学ばせてもらいました。

 ぜひ乗っていただきたいです。

――プラグインハイブリッドはどうでしょうか? 「RAV4 PHV」とシステム構成に違いはあるのでしょうか?

 加藤:タイミング的にRAV4の二番煎じと思われがちですが、プラットフォーム開発と同じように、企画当初からNXへの展開を前提に開発されたモノになります。

 ハードは一緒ですが最大の違いは駆動力コントロールで、新型NXはリアモーターをより積極的に使う設定になっています。

 さらにエンジンはハイオク仕様にすることでシステム出力は227kW(RAV4 PHVは225kW)とこのシステム最大のパフォーマンスを発揮させます。

 細かい部分ではリアの補機バッテリーの位置で、RAV4 PHVはメンバーの外、新型NXはフロアパンの中に配置しています。

 これは重量配分やデザインの観点から譲れなかった部分です。ただ、その結果スペアタイヤが搭載できないので、20インチのタイヤにはEMT(ランフラットタイヤのようにパンクの際も一定距離走る性能を確保した構造を備える)を採用しています。

――グレード構成は、初代と同じように通常モデル/Fスポーツのふたつですか?

 加藤:そうですが、今回は「Fスポーツとは何か?」を真剣に議論し、形にしました。つまり、見た目の差別化だけでなく走りの部分も明確に差別化しようと。

 ちなみに日本仕様のハイブリッドには両グレード設定しますが、2.4リッターターボはFスポーツのみ、逆に2.5リッターNAはノーマルのみの展開となります。

――つまり、2.4リッターターボ+電子制御4WDはFスポーツ専用のパワートレイン/ドライブトレインというわけですね。北米で発売されたV8搭載の「IS500 Fスポーツパフォーマンス」を彷彿とさせますね。

 加藤:つまり、新型NXからFスポーツブランドも見直していくという宣言でもあります。2.4リッターターボのFスポーツは想いとしてはFスポーツパフォーマンスと共通です。

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 次世代レクサスの第一弾として登場した新型NX。トヨタの良いものやスバルとの協業で得たノウハウを活かしたことで、どのようなパフォーマンスを発揮するのか、2021年秋の発売が期待されます。