実用的ながらドライビングプレジャーにあふれたクルマといえばミドルクラスセダンが挙げられますが、近年は数の減少が顕著です。そこで、かつて正統派スポーツセダンとして君臨していた2リッター自然吸気エンジンのセダンを、5車種ピックアップして紹介します。

近年は少数派となってしまった正統派スポーツセダンを振り返る

 走行性能が高くドライビングプレジャーあふれるクルマといえばスポーツカーですが、その反面、実用性や経済性が犠牲となってしまっているケースが多いのも確かです。

 しかし、優れた走行性能ながら実用的で燃費も良く、バランスのとれたモデルとして挙げられるのが、2リッター自然吸気エンジンを搭載したスポーティなセダンではないでしょうか。

 1980年代から1990年代、同クラスのセダンは各メーカーから販売されていましたが、近年はニーズの変化からラインナップは減少を続けています。

 メーカーは売れないからつくらない、ユーザーは選択肢が少ないから買わないというように、2リッタークラスのセダンは負のスパイラルにあるというのが現状です。

 そこで、往年のセダンのなかから、2リッター自然吸気エンジンのスポーティなモデルを、5車種ピックアップして紹介します。

●日産「プリメーラ 2.0Te」

 かつて、正統派のFFスポーツセダンとして高い人気を誇っていたのが、1990年に誕生した日産初代「プリメーラ」です。

 プリメーラ誕生の背景にあったのが、『1990年までに世界No.1の動性能を実現』という日産の開発目標、通称「901活動」で、日本市場に特化した「R32型 スカイラインGT-R」、北米市場に向けた「Z32型 フェアレディZ」、そして欧州市場をターゲットとして開発されたのがプリメーラでした。

 プリメーラは欧州市場を主戦場としたグローバルカーで、欧州車に匹敵する走りの性能と、快適性、使い勝手の良さを高い次元でバランス。

 外観も奇をてらうことなく比較的オーソドックスなデザインで、やや丸みをおびた飽きがこないスタイルが好印象です。

 ボディサイズは全長4400mm×全幅1695 mm×全高1385mm、ホイールベースは2550mmと、日本の道路環境にもマッチ。

 内装のデザインも比較的おとなしいものの、前後長に比較的余裕を持って設計によって居住性は秀逸です。

 トップグレードの「2.0Te」に搭載されたエンジンは、最高出力150馬力の2リッター直列4気筒DOHC「SR20DE型」で、トランスミッションは5速MTと4速ATを設定。

 エンジンは飛び抜けてパワフルではありませんが、車体の大きさにもちょうどよい出力であり、フロントには新開発のマルチリンク式、リアはパラレルリンクストラット式とされた4輪独立懸架の採用とあいまって、優れた走行性能を発揮。

 とくにハンドリングは高く評価され、日欧でスマッシュヒットを記録しました。

 その後、1995年に初代からキープコンセプトとされた2代目にバトンタッチ。2001年にはデザインが大きく変更された3代目がデビューしましたが2005年には国内での販売を終了し、プリメーラの歴史に幕を閉じました。

●ホンダ「アコード SiR-T」

 ホンダ車のなかでも、「シビック」と並んで長い歴史を刻むモデルが「アコード」です。1976年に初代が誕生し、発売当初は3ドアハッチバックのみでしたが、遅れて4ドアセダンが追加されるとセダンのイメージが定着して代を重ねました。

 そして、1997年に登場した6代目では、全長4635mm×全幅1695mm×全高1420mmと5代目よりもサイズダウンして再び5ナンバーサイズに回帰するなど大きな転機を迎えました。

 外観は日本市場専用にデザインされており、シャープなフロントフェイスが特徴で、全体のフォルムも正統派のスポーティセダンという印象です。

 トップグレードの「SiR-T」には200馬力を誇る2リッター直列4気筒VTECエンジンを搭載し、トランスミッションは5速MTのみの設定。

 SiR-Tは日本の道路事情にもマッチしたボディとパワフルなエンジンが相まって、取りまわしもよくキビキビ走る軽快さを取り戻しました。

 さらに2000年にはより高性能なモデル「ユーロR」が登場しましたが、SiR-Tでも十分にスポーティなモデルで、実用性や経済性と合せて優れたバランスのモデルだったといえます。

●マツダ「マツダスピード ファミリア」

 昭和の時代を代表する大衆車といえば、トヨタ「カローラ」と日産「サニー」が挙げられますが、実はこの2車よりも前にデビューしたのがマツダ初代「ファミリア」で、1963年に誕生。

 ファミリアはマツダのラインナップで主力車種として代を重ねましたが、次第に人気は低下していったことから2004年に9代目をもって生産を終了し、後継車である「アクセラ」の登場で心機一転を図り、現在の「マツダ3」へと系譜は続いています。

 この最終モデルである9代目ファミリアには、有終の美を飾る魅力的なセダンが存在。それが2001年に100台限定で発売された「マツダスピード ファミリア」です。

 9代目の主力モデルだったのはショートタイプのステーションワゴン「Sワゴン」シリーズでしたが、マツダスピード ファミリアはセダンのみにラインナップ。

 1.5リッター車をベースとし、Sワゴン用の2リッター直列4気筒エンジンに換装され、トランスミッションは5速MTのみです。

 このエンジンは内部も手が加えられており、ハイコンプピストン、専用プロフィールのカムシャフト、吸排気ポートの研磨、さらに軽量フライホイールとステンレス製エキゾーストマニホールドの採用など、最高出力はベースの170馬力から175馬力となり、エンジンレスポンスも向上。

 また、サスペンションと前後スタビライザーは強化品とされ、大径ディスクブレーキの搭載など、エンジンに合せてシャシもチューニングされています。

 外装色は専用の「スターリーブルーマイカ」のみで、ゴールドのホイール、リアウイングなど専用のエアロパーツが装着されるなど、マツダスピードの名にふさわしくスポーティに仕立てられていました。

 マツダスピード ファミリアはかなり魅力的なセダンでしたが、この100台のみで販売は打ち切りとなり、現在では中古車市場でもレアなモデルです。

4WDとFR、NAエンジン搭載を搭載した2台のスポーツセダンとは

●トヨタ「アルテッツァ」

 トヨタのコンパクトFRスポーツカーといえば、伝説的なモデル「AE86型 カローラレビン/スプリンタートレノ」が挙げられますが、1987年に生産を終えました。

 このAE86型の再来と噂され満を持して登場したのが、1998年に発売されたコンパクトボディのFRスポーツセダン「アルテッツァ」です。

 外観は流麗でダイナミックなフォルムのボディを採用し、見るからにスポーティかつプレミアムな印象で、北米や欧州ではレクサス「IS」として販売。

 アルテッツァはパワーの追求よりもドライビングそのものを楽しむことをコンセプトに開発され、搭載されたエンジンは2リッターの直列4気筒DOHCと直列6気筒DOHCです。なかでも4気筒モデルはスポーツユニットとして定評があった「3S-GE型」で、最高出力は210馬力(MT)を発揮。

 トランスミッションは4気筒車では6速MTとステアマチック付の5速AT、6気筒車は当初5速ATのみでしたが、遅れて6速MTが設定されました。

 足まわりは4輪ダブルウイッシュボーンとし、ドイツのニュルブルクリンクで磨きをかけ、優れた高速安定性と高いコーナリング性能を両立。

 また、バッテリーをフロントサスペンションタワーの後方へ、燃料タンクはリアシートの下に配置し、最適な前後重量配分とするなど、FR車としてこだわった設計でした。

 2001年にはステーションワゴンの「アルテッツァジータ」も加わりますが、2005年をもって生産を終了。

 国内でもISに系譜は引き継がれ、プレミアムなスポーティセダンとして現在もラインナップされています。

●スバル「レガシィB4 2.0R」

 かつてスバルを代表するミドルクラスセダンといえば「レガシィ」で、1989年に初代が誕生して以来、高性能グレードといえばターボエンジンと決まっていました。

 そんななか、4代目レガシィに2003年に加わった「レガシィB4 2.0R」は、それまでと異なる高性能な2リッター自然吸気エンジンを搭載したモデルという、異例の存在でした。

 外観はターボ車と基本的には共通のスポーティなフォルムですが、ボンネットのエアスクープが省略されています。

 搭載されたエンジンは2リッター水平対向4気筒DOHCで、圧縮比11.5というハイコンプから最高出力190馬力を7100rpmで発揮(MT車)する高回転型エンジンです。

 トランスミッションは5速MTと4速ATが設定され駆動方式はAWDとし、優れた旋回性能と高い走行安定性を実現。

 絶対的なパワーはターボモデルに劣りますが、高いシャシ性能のレガシィB4に、ほどよいパワーのエンジンという組み合わせは高く評価されました。

 なお、高性能な2リッター自然吸気エンジン車はこの2.0Rが最初で最後のモデルで、以降のレガシィシリーズには設定されていません。

※ ※ ※

 現在、国内メーカーにおいて、2リッターの自然吸気エンジンはかなり数を減らしている状況です。

 近年では1.5リッターや1.8リッターターボなどに置き換えられており、とくに高性能な2リッター自然吸気エンジンは貴重な存在となってしまいました。

 この傾向は今後も続くとみられ、近い将来には国内モデルから姿を消してしまうかもしれません。