「イエローバード」という愛称で知られるRUF「CTR」は、空冷ポルシェのオークションマーケットでの価格上昇に合わせるように高騰している。今回は、930型ではなく964型をベースとしたCTRを紹介しよう。

フェラーリ「F40」よりも速かった「イエローバード」

 ドイツのRUF、あるいはRUFを率いるアロイス・ルーフの名前は、スーパースポーツの世界に興味を持つ者にとって、常に注目のキーワードに違いない。

 たとえば、ルーフが何かの新型車を発表した、あるいはアロイスが胸中に何かのプランを秘めている……といった情報は、スーパーカーのファンにとっても、またメディアにとっても、常に目を離してはならない話題といっていいだろう。

●RUFを有名にした「イエローバード」とは

 RUFの名前を一躍有名にした存在といえば、プロトタイプが鮮やかなイエローで塗装されていたことから「イエローバード」と呼ばれた「CTR=カレラ・ツインターボ・ルーフ」(グループC・ツインターボ・ルーフとする説もある)だろう。

 時はまさにスーパースポーツによる最高速戦争が、再び始まりを迎えた1980年代。200mphの壁を超えたフェラーリ「F40」は、323km/hの世界最速ホルダーになったが、RUFは数週間後にイエローバードで211mph(339.6km/h)を記録し、最高速を塗り替えてみせた。それはスーパーカーのファンにとって大きな驚きであり、RUFの名もまたイエローバードとともに世界に轟くことになった。

 初代CTRのベースとなったのは、ポルシェ930型「911カレラ3.2」のホワイトボディである。RUFはこれにエンジンやサスペンションを始めとするメカニカルコンポーネンツを開発して独自のクルマを作り上げた。

 したがってRUFは、ドイツの自動車工業会に認められた小規模ながら独立した自動車メーカーとして存在している。

964ベースの貴重なCTRにつけられたプライスとは

●「イエローバード」とはこんなクルマ

 RUFの最初のこだわりは、エアロダイナミクスの向上と軽量化にあった。リペアが楽なようにとスチール素材を用いていたドアやフェンダー、エンジンカバーなどは軽量なアルミニウム製に改められ、前後のバンパーにはグラスファイバーも使用されている。

 リアバンパーに設けられたエアアウトレットやコンパクトなミラーなどを見れば、RUFのエアロダイアミクスへの取り組みがいかに積極的だったかを伺い知ることができる。

 リアには当時のターボ風のウイングが装備され、キャビンにはレカロ製のレーシングバケットシートやロールケージなどのエクイップメントが装備される。

 リアに搭載されるエンジンは、排気量を3.2リッターから3.4リッターへと拡大したツインターボチャージャー付きの水平対向6気筒SOHCだった。

 最高出力は469ps、最大トルクは553Nmと発表されたが、RUFは常に世界中どこでもその環境下で得られるパワー表示しかしないのが常であるので、おそらくこのCTRも実際には500ps前後の最高出力を発揮していたと思われる。トランスミッションは5速MT。これもまたRUFによるオリジナルである

 1987年から生産されたコンプリートのCTRは、諸説あるものの30台といわれている。

 さらに2台のみ、930型の次世代モデルとなる964型911のホワイトボディから製作されたものが存在する。

 正確にはアメリカに在住する964型911のカスタマー、ヘッドドール兄弟が各々の911をCTR化することを望み、ドイツへとクルマを送って作り上げられたものである。

●オークションに出品されたCTRのヒストリーとは

 アロイス・ルーフにとっても、964型でCTRを製作することは歓迎すべき話だった。ヘッドドール兄弟は、アメリカのさまざまなモータースポーツイベントで優秀なリザルトを残しており、何よりその964型911はAWDの駆動方式を持つカレラ4だったからだ。

 アロイス・ルーフはかねてからAWDに強い興味を抱いており、それが最善の駆動方式であるという確信を持っていた。つまり964型911カレラ4でCTRを製作できるのは、RUFとしても大いに価値のあることだったのだ。

 ホワイトとブラックのカレラ4はほどなくRUF社へと届けられるが、そのうちの1台、ホワイトのモデルが今回アメリア・アイランド・オークションに出品されることになったのだ。

 オークションの結果は、34万6000ドル(邦貨換算約3740万円)であった。世界でわずか30台ほどしか生息しないイエローバードのなかでも、さらに珍しい1台。それを実際に見るのは、絶滅危惧種の生物を見るより難しいのは確かだ。