フォード「マスタング」がEV化されただけでなく、SUVとして登場したことはセンセーションを巻き起こしたが、モーターの特性を活かした加速力など、走り好きにとっても満足いくスペックとなっているようだ。

EV「マスタング」は英国で1000万円から

 2021年7月9日、英国において、フォードのフル電動車「マスタング マッハE GT」のオンライン受注が開始された。価格は6万7225ポンド(邦貨換算約1030万円)から。初回限定生産となるこのクルマは、2021年内に納車が開始される予定だ。

●5名乗車可能、0-100km/h加速タイムは3.7秒

 マスタング・マッハE GTは、ジャンルとしてはSUVとなる大柄なボディとなっている。サイズディメンションは、全長186.7インチ(約4742mm)×全幅74.1インチ(約1882mm)×全高63.5インチ(1613mm)、ホイールベースは117.5インチ(2984mm)になる。乗車定員は5名だ。

 搭載しているバッテリー容量は88kWhで、WLTP4に準拠したフル充電で最大310kmの航続距離を実現している。150kWでの充電をおこなうと、10分間で平均60マイル(約96km)走行でき、45分間充電すると、充電状態10%から80%の容量まで充電できる。

 そんなマッハE GTの最大の魅力は、速さにある。前輪用と後輪用をそれぞれ用意したふたつのACモーターの出力は、487ps(358kW)。最大トルクは860Nmとのこと。

 このトルクは、自然吸気のガソリンエンジンでいえば、9000cc近い排気量のものと同等となる。そのトルクを活かした加速力は爆発的なもので、0-62mph(0-100km/h)加速タイムは3.7秒。5人乗りのクルマとしては、トップクラスといっていいだろう。前後輪のパワーバランスは、レギュラーモデルとなるマッハEと比べて、後輪へのトルク配分が高められている。

 また、その強大なトルクを受け止めるため、ブレーキにはブレンボ製のシステムが採用されている。フロントのブレーキローター径は385mmと大型で、それを収めるホイールのサイズは20×8.0J。ピレリと共同開発したというタイヤのサイズは、245/45R20となっている。

走り好きでも満足できる「マッハE GT」のドライブモードとは

 サスペンションは、磁性体を利用して減衰力を発生させるマグネライド・アダプティブ・サスペンションを標準装備。

 このサスペンションは、ドライブモードと連動した減衰力のセッティングが可能となっている。このマッハE GTには、これまでの「Whisper(ウイスパー)」「Active(アクティブ)」「Untamed(アンテイムド)」という3つのドライブモードに加え、「アンテイムドプラス」というモードが追加された。

 このアンテイムドプラスは、サーキット走行をターゲットとしたセッティングとなっており、減衰力の向上のほか、モーターの出力バランスの調整や介入を最小限にするトラクション/スタビリティコントロール、鋭くなるスロットルレスポンスなどによって、車両の状況や路面状況に応じた、その時々の最大限の速さでラップを刻めるようになっている。

 車室内に聞こえるサウンドも強化されているとのことだ。

●マスタングの新しいカタチ

 ちなみに、後輪を駆動するためのモーターは、0.5秒で最大トルクを発生するという新開発の油冷式永久磁石同期型が採用され、前輪用モーターとは独立してコントロールされている。ウイスパー・モードでは4輪駆動らしく、フロントにもしっかりとトルクが伝わるのに対し、アクティブ・モードでは若干後輪寄りに、アンテイムドプラス・モードでは後輪のトルクが強くなるようセッティングされている。

 インテリアには、15.5インチサイズのフルHDタッチコントロールディスプレイを採用。ドライバーの行動を学習するフォードの次世代コミュニケーション・エンタテインメントシステム「SYNC 4A」をサポートしている。

 シートとステアリングにはレザー調素材が採用されていて、10スピーカーのオーディオシステムや、パノラマガラスルーフ、ハンズフリーオートテールゲートなどはオプションとして用意。

 ストップ&ゴーとレーンセンタリング機能付きインテリジェントアダプティブクルーズコントロールや、ブラインドスポットアシスト付きレーンキーピングシステム、アクティブパークアシスト、自動緊急ブレーキ付きプリコリジョンアシストといった、運転支援技術は標準装備となっている。

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 スーパーカーのような加速性能と、サーキット走行を視野に入れたドライブモードが実装されたプレミアム仕様の5人乗りSUV、マスタング マッハE GT。充電時間という大きな壁はあるが、走る楽しさは原動機の種類にはとらわれない、ということを、実際のものとして見せてくれているクルマといえるだろう。

 フォードが日本から撤退したことが、非常に悔やまれる1台だ。