トヨタ新型「GR86」とスバル新型「BRZ」がフルモデルチェンジし、2代目モデルが2021年夏以降に発売される予定です。ベースを共有するものの、新型GR86と新型BRZの走りの方向性は異なります。具体的に、どのような点が違うのでしょうか。

トヨタとスバルが共同開発したFRスポーツ第2弾登場!

 2代目となるトヨタ「GR86」/スバル「BRZ」が間もなくフルモデルチェンジしますが、多くの人が気になっているのは「この2台、何がどう違うのか?」ということではないでしょうか。

 新型GR86と新型BRZは初代モデルと同様に、トヨタとスバルの関係から生まれたモデルですが、2社の関係はいまから16年前からスタートしています。

 最初のコラボレーションはスバル米国工場(SIA)でのトヨタ「カムリ」の受託生産(2016年5月まで)でした。

 その後はあまり知られていませんが、トヨタ「ラクティス」/スバル「トレジア」の開発で、スバルのエンジニアがトヨタに出向して一緒にクルマづくりを実施。

 そして、その流れは2012年に登場した86/BRZの初代モデルでより強固なモノとなり、今回の2代目へと繋がっています。

 ちなみに、2022年に発売されるといわれている電気自動車のトヨタ「bZ4X」/スバル「ソルティア」、さらには2021年秋に発売されるレクサス新型「NX」の電子制御AWD開発などにも、両社の関係が反映されているのです。

 そんな2代目となる新型GR86と新型BRZですが、初代と変わった部分がいくつかあります。ひとつは初代以上に一体感のあるワンチームで開発が進められたことです。

 2代目は初代と同じくトヨタが企画・デザイン、スバルが開発・生産と役割分担されていますが、今回はその垣根を大きく超えるやり取りがあったといいます。

 初代はトヨタとスバル初の共同開発ということでお互い遠慮や探り合いをしていた部分も無きにしも有らずでしたが、2代目では対等な立場で「遠慮なし」という関係になったといいます。

 実際に今回開催されたサーキット試乗会でも、トヨタとスバルのエンジニア同士が積極的にコミュニケーションを取る姿が見受けられ、「本当に別々の会社の人なのか?」と思ってしまったくらいです。

 もうひとつは、86のトヨタにおけるポジショニングが変わったことです。それは2代目であると同時にトヨタのスポーツブランド「GR」のオリジナルスポーツカーになったことです。

 じつはこれこそが、今回の2台の「走りの差」に大きな影響を与えた部分のひとつといってもいいのかもしれません。

 今回、千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイでほぼ量産仕様のプロトタイプに試乗しました。新型の走りの変更部位は初代に対して多岐にわたっています。

 エンジンは2.4リッター水平対向自然吸気エンジン(FA24型)で235馬力/250Nmというスペックは新型GR86と新型BRZで同じですが、MT車のエンジンの特性は新型GR86がレスポンス重視、新型BRZがリニアリティ重視の設定です。

 実際に走らせてみるとアクセル開度全開時はまったく同じですが、発進時やコーナー脱出時などアクセル開度50%以下でコントロールしている領域で明らかな違いを感じました。

 具体的には新型GR86は「さすが2.4リッター!」と感じる後輪の蹴り出しを実感するパワー感、逆に新型BRZは過度なところはないが全体的に底上げされた「+400ccの余裕」のトルク感です。

 ただ、誤解してほしくないのは、新型GR86は演出過多、新型BRZは力強さがないというわけではなく、「レスポンス」と「リニアリティ」の比率が違うだけです。

 AT車のエンジン特性は2台共通ですが、シフト制御は新型GR86が「僅かにシフトショックよりもシフトスピード優先」、新型BRZは「全域でシフトスピードとシフトショックの両立」と異なります。

 こちらはエンジン特性の差と比べると少なめですが、その違いはパドルを使うと良くわかり、新型GR86はシフト感、新型BRZは滑らかさが実感できます。こちらもエンジン特性と同じ考えです。

 ハンドリングはどうでしょうか。当初はダンパー/EPS制御の違いのみで2台の差別化をおこなっていたそうですが、ほぼ開発終了のタイミングで新型GR86が異例のセットアップ変更を実施。

 この決断をしたのは豊田章男社長で、自身がテストカーに乗って「GRは“味”を大事にするブランド、その味の妥協はできない」と感じ、スバルの中村社長に直接連絡をして「魂の会話」をおこなったといいます。

 ちなみに共同開発は開発がスタートする前にトヨタとスバルでさまざまな取り決めや契約をおこないましたが、その内容の最後に何かあったときのためにと、「契約事項の変更は両社の合意があればOK」という項目を入れていたそうです。新型GR86の仕様変更はその項目に助けられたということです。

 最終的に新型GR86/新型BRZのフットワークを構成するアイテムの違いは、ショックアブソーバーの減衰特性、フロントスプリング(新型GR86:28Nm/mm、新型BRZ:30Nm/mm)、リアスプリング(新型GR86:39Nm/mm、新型BRZ:35Nm/mm)、EPS制御に加えて、フロントハウジング(新型GR86:鋳鉄、新型BRZ:アルミ)、フロントスタビライザー(新型GR86:中実 直径18mm、新型BRZ:中空 直径18.3mm)と、新型GR86はあえて重量が増す素材を選択したのも興味深いところ。

 さらにリアスタビライザーも径の違い(新型GR86:直径15mm、新型BRZ:直径14mm)だけに留まらず、取付構造まで違います(新型GR86:リアサブフレームブラケット取付、新型BRZ:ボディ直付)。さらにリアトレーリングアームブッシュも異なります。

 ちなみにタイヤは17インチが「ミシュラン プライマシーHP」、18インチが「ミシュラン パイロットスポーツ4」の2種類が用意されていますが、今回の試乗車はすべて18インチでした。

サーキット試乗でGR86とBRZの違いが明らかに!

 サーキット試乗ですが、1周目は全開走行ではなく6、7割のペースでグリップ走行に徹しました。2台の違いは明確です。

 印象的なのはステアフィールと操舵してからの一連のクルマの動き、どちらも「手ごたえ」と「滑らかさ」、「対話性」を備えていますが、新型GR86は手ごたえ重視。操作に対して阿吽の呼吸で反応するメリハリのあるクルマの動きなど、「スポーツカーに乗っている」ことを実感しやすいフィーリングです。

 一方、新型BRZは操作に対するクルマの動きが滑らかかつシームレスで、そこにも過度なところがない連続性の高さなどから「2ドアのレヴォーグか!?」と錯覚してしまったくらいのフィーリングに感じました。

 2周目からは全開走行です。比較なので同じ速度・操作を心掛けて走行してみましたが、やはり2台の違いは明確です。

 新型GR86はアンダーステアを嫌いフロントはかなり粘るのに対して、リアはタイヤの限界ギリギリまで粘らせない代わりに流れてからのコントロール性を重視したクルマの動きです。コーナー進入時の荷重移動が楽で、アクセルOFFでもドリフトのキッカケが作れるくらい。

 新型BRZは前後のグリップバランスが均等な印象かつ、アクセルONでリアがグッと沈み込むためリアはタイヤの限界ギリギリまで粘ります。

 ただ、限界を超えて流れ出すときには新型GR86と比べると僅かに唐突な部分を感じましたが、ドキッとするモノではなくコントロールできる範囲なのでまったく問題なし。また、新型BRZのコーナー進入時の荷重移動は新型GR86よりも少なめで、ドリフトをする際にはドライバーの明確な操作が必要となります。

 これだけ聞くと、「新型GR86はドリフト重視」、「新型BRZは安定方向」と思われがちですが、それは正しくもあり、間違いでもあります。

 ちなみに各々のクルマの特性に合わせた走らせ方をすると同じです。たとえば、新型GR86はリアタイヤのグリップを意識すると滑る・滑らないのギリギリの走行も楽しいし、新型BRZは前荷重を意識した進入でコーナーに入れば大胆なドリフト走行も可能です。

 つまり、どちらも「グリップ/ドリフトは自由自在」、「限界」は共通であり、そこに至るまでの「アプローチ」や「道筋」が異なるのです。それが結果的にそれぞれの「味」に繋がっています。

 そういう意味では、新型GR86は明確に「FRスポーツカーを楽しんでほしい!」という味付け、新型BRZは初代の0:100の全輪駆動を超え「トルクスプリット機能を持ったFRスポーツ」という味付けだと理解しました。

 となると、「どちらが優れている?」「どちらが良い?」と思うのですが、筆者(山本シンヤ)の結論は「どちらも正解」だと思っています。

 その理由は、各々が目指したコンセプト/キャラクター/走りに対してどちらも実現しているからです。

 さらに言うと、GR86に乗ると「GRスープラ」や「GRヤリス」と同じ「野性味」、BRZに乗ると「レヴォーグ」や「WRX S4」と同じ「洗練/安心」を感じましたが、それは各ブランドの味がブレていないことも証明しています。

内外装にもトヨタとスバルのこだわりが!

 じつは見た目の違いにも2社のこだわりがあります。エクステリアの最大の違いはフロントバンパーです。

 GR86はGRブランド共通の「ファンクショナルマトリックスグリル」、BRZはスバル共通の「ヘキサゴングリル」をモチーフとしたデザインが採用されています。

 初代に装着されていたフォグランプが2代目で未採用なのは、その部分に冷却ダクトを設けたためです。

 ヘッドライトはデイタイムライトの部分で独自性(GR86はL字、BRZはコの字)を持たせていますが、ヘッドライトの筺体自体は共通となっています。

 じつは当初の企画時はGR86とBRZは共通フロントマスクだったといいます。ただ、デザインがあまりにGR86に寄り過ぎてしまい、スバルの社内から「これは本当にBRZなのか?」という声が聞かれたそうです。

 そこでスバル側から「新型BRZ独自の顔を作らせて欲しい」とトヨタ側にリクエストした結果、別々の顔になったといいます。

「契約事項の変更は両社の合意があればOK」の規約の発動は、前述のGR86の走りの仕様変更だけではなかったのです。つまり、お互い様だったということです。

 サイドビューはホイールの色(GR86:マットブラック、BRZ:マットダークグレー)、ドアミラーの色(GR86:ブラック、BRZ:ボディ同色)程度の差ですが、フロントフェンダーのエアアウトレットはGR86がレクサス「RC F」、BRZは「WRX STI」との共通性があるデザインに見えてくるのが不思議です。

 リア周りはエンブレム以外の部分は共通仕様です。ただ、リアコンビランプはコの字の部分はスバル(=水平対向をイメージ)、上部の黒い部分はGRヤリスを彷彿させる形状と、偶然なのか必然なのかわかりませんが、トヨタとスバルがコラボされたデザインになっています。

 細かい部分では、リアフォグランプがGR86は標準装備、BRZはオプションとなっています。

 インテリアのデザインは共通ですが、じつはロゴだけでなく細部が独自仕様となっています。

 具体的にはドアインナーハンドル(GR86:ブラック、BRZ:メッキ)、プッシュスタートボタンのリング部(GR86:シルバー塗装、BRZ:メッキ)、ドアミラー調整スイッチ(GR86:ブラック、BRZ:シルバー塗装)、パワーウィンドウスイッチ先端加飾(GR86:ブラック、BRZ:メッキ)などです。

 さらにインテリアコーディネイトもGR86(パーフォレーション:シルバー、アクセント:ガンメタリック、ステッチ:シルバー)とBRZ(パーフォレーション:シルバー、アクセント:レッド、ステッチ:レッド)と異なります。

 ちなみにGR86のみブラック/レッド内装(パーフォレーション:レッド、アクセント:レッド、ステッチ:レッド、フロアカーペット;レッド、ドアトリム:レッド)の設定が用意されています。

 このように内外装の違いは走りの違いと比べると僅かですが、その想いは走りと何ら変わりません。

 GR86とBRZは、似ていないようで似ているし、また、似ているようで似ていない兄弟だといえます。

 購入する際には2台をシッカリと乗り比べた上で選択してほしいと思います。そして間違いないことは、どちらを買っても笑顔になれるクルマであるということです。