ホンダはスーパースポーツカーとなる2代目「NSX」を2022年末で生産終了することをアナウンスしました。果たしてホンダのスーパースポーツは欧州ブランドを超えられたのでしょうか。

フェラーリ・ランボルギーニ・マクラーレンと比べて「NSX」に足りない物とは

 2021年8月3日、ホンダはスーパースポーツカー「NSX」の上位仕様となる限定モデル「NSX タイプS」の追加に加えて、「2代目NSXは、2022年12月をもってその歴史に幕を閉じる」という発表をおこないました。
 
 登場から約6年という形で生産終了となる2代目NSXは、どのようなモデルだったのでしょうか。

「歴史に幕を閉じる」というホンダのコメントはあくまで2代目NSXに対してのものなので、必ずしもNSXの歴史が終わるわけではありません。

 しかし、その後継となる3代目のNSXに関する情報はないので、次期型にスイッチするというのではなく、2022年末でNSXの歴史にひとつのピリオドが打たれることとなるでしょう。

 クルマ好きのひとりとして、時間がかかってもいいですから「第3章」の幕が開けることを期待したいところです。

 2代目NSXがデビューしたのは2016年。すでに5年が経ち生産終了する2022には6年を超えるので、一般的なモデルサイクルとして短すぎるということはありません。

 しかし、初代が1990年から2005年まで15年間作られたことを考えると、あまりにも短かったと感じるのは気のせいではないでしょう。この手のスーパーカーとしてはかなりの短命です。

 なぜ短命に終わってしまったのか。理由は環境対応や社会状況の変化、今後施行される世界各地の規制の強化、また生産工場の都合など複数が考えられ、どれかひとつということはないのかもしれません。

 しかし、販売台数的にそれほど多くなかったというのも、短い生涯に少なからず影響しているでしょう。

 現時点での販売台数は、日本で400台半ばとなり、メインマーケットとなる北米でも2500台強。

 年間1500台とされたNSX専用工場の生産キャパシティからすれば、決して多いとはいえない数に留まっています。

 果たして、累計2万台弱という多くの台数(生産期間が異なるとはいえ年間販売台数でも大差がついている)がオーナーのもとに渡った初代モデルとの違いはどこにあるのでしょうか。その理由を、ライバルと比べながら推察してみました。

 まず考えられるのは、パワートレインが先進的過ぎたことです。

 ハイブリッドシステムは、2代目NSXの大きな特徴であり、「社会的状況を考え、未来を先取りする先進的なスーパーカーとしてハイブリッドとした」というホンダの考え方は理解します。

 しかし、スーパーカー愛好者は本当にハイブリッドを求めていたのでしょうか。たとえば、「超高回転型で10000回転まで回るエンジン」といった突き抜けた純ガソリンエンジン車のほうが、欲しがる人を増やしたのではないでしょうか。

 また、エンジンはV6でした。それが悪いということはありません。しかし「V6エンジン+モーターでV8並み」というNSXのパワートレイン(581馬力)は、スーパーカー好きにとってグッとこなかった気がします。

「V6+モーターでV10よりパワフル」くらいまでいかないと、積極的に購入したいという気持ちなれなかったのではないでしょうか。

 参考までに、ほぼ同時期のV8スーパーカーとなるフェラーリ「488GTB」は670馬力、V10を積むランボルギーニ「ウラカン」は610馬力でした。

 先ごろ、フェラーリは「3リッターのV6エンジン+モーター」の「296GTB」を発表しましたが、こちらのシステム出力は830馬力。

 V6とはいえパワーはV8どころかV12レベルです。もしNSXも700馬力くらいあれば、ライバルとの関係が違ったものとなり、スーパーカーオーナーにも一目置かれる存在になったと悔やまずにいられません。

 クルマとして考えれば、排気量を控えめにしてモーター付きで環境にやさしい、スーパーカーの世界に一石を投じるパワートレインでした。

 しかし、それがスーパーカーオーナーの物欲を刺激したかと問われれば、そうではなかったのではないでしょうか。

 エンジニアリングは素晴らしかったけれど、マーケットが付いてこられなかった。そんな2代目NSXは“時代を先取りしすぎたスーパーカー”といえそうです。

 もうひとつ、高すぎた価格も人気が盛り上がらなかった理由と考えられます。

 2代目NSXの価格は2370万円からですが、初代の初期モデルは800万円からとわずか1/3ほどでした。

 確かに、安全装備の向上などで車両価格が上昇しているのはNSXだけでなくすべてのクルマに共通することであり、四半世紀の時間の流れを無視して車両価格を語るのは意味がないことです。

 しかし、ライバルと比べてみるとどうでしょうか。たとえば、1991年にデビューし「NSXのライバル」といわれたフェラーリ「348」の新車価格は2000万円弱からのスタート。つまりNSXはその半額未満でした。

 一方で2代目NSXの2370万円からに対して、やや先だって2015年にデビューしたフェラーリ488GTBは3070万円からのプライス(NSX発売時)。

 比べると2代目NSXは安いのは間違いないですが、かつてほど差が開いていません。

 また、同じくベーシックタイプのスーパーカーを見回すと、マクラーレン「540C」は最高出力こそ540馬力と劣るものの、V8ターボエンジンを搭載してNSXの発売時では2188万円となっています。

 また、V10エンジンを積むウラカンのエントリーモデル「LP580-2」は580馬力に留まりますが、NSX発売時点の価格は2462万円でした。

 すなわち、NSXと540C、ウラカンのエントリーモデルはほぼ横並びの価格です。このなかから、NSXを選ぶ人はどのくらいいたのでしょうか。

 もし、NSXがハイブリッドなしで1700万円程度で販売したら、ライバルとは立ち位置の異なるお手軽なスーパーカーとして、今よりは人気が保てたと思わずにはいられません。

2代目「NSX」デザイン面ではどうだった? 歴史を継承できたのか?

 ところで、デザインはどうでしょう。

 2代目NSXのデザインも、あくまで主観でしかありませんが単体でみると不足はないと思います。ちょっとガンダムテイストですが、これはこれで悪くないでしょう。

 しかし、そこに初代NSXの魂を感じることはできるでしょうか。

 NSXのメインマーケットはアメリカですが、アメリカでのスーパーカーやスポーツカーは“伝説”や“魂の継承”と“ノスタルジィ”が重要です。

 とくに昨今は、デザインに過去のモデルへのリスペクトが求められるのです。

 フォード「マスタング」しかり、シボレー「カマロ」や「コルベット」や先日発表された日産「フェアレディZ」もそうで、見るからに過去のDNAが漲っているのは気のせいではありません。あえてそうしているのです。これはファンやユーザーが喜ぶからです。

 2代目NSXも、デザインにもっと初代のリスペクトが感じられたら、愛とロマンを感じられる人が増えたことでしょう。

 なかには「フェラーリもランボルギーニも新型が出るたびにデザインはまったく違う」という人もいるかもしれません。

 しかしそれらは世代交代とともに「車名」が変わり、まったく別のクルマになるのですが、NSXはそうではありません。

 また欧州のスーパーカーでも、先日ランボルギーニが発表した新生「カウンタック」をみれば歴史を大切にすることの重要性がわかります。

 過去のモデルが復活する場合は、見るからにそのデザインを纏うことがファンを喜ばせるのです。

 また、スーパーカーに一石を投じる、環境を考えたハイブリッドシステム。そして異次元の旋回性能を生むSH-AWD。

 2代目NSXはホンダの先進技術を集結したスーパーカーであり、その走りとドライバビリティが素晴らしいことは疑いようがありません。クルマとしては盛大な賛辞を送りたいと思います。

 しかし、それは本当に消費者が望むパワートレインやデザイン、そして立ち位置だったのでしょうか。

 あえていうのであれば、スーパーカーオーナーになる人の気持ちを理解することができなかった、そんな商品企画のボタンの掛け違いが、2代目NSXの運命を決めてしまったのかもしれません。

 繰り返しますが、技術水準と走り、そしてドライバビリティは素晴らしいものでした。

 そして、その後に続くハイブリッドスーパーカーへの道を開くという役割も、しっかり果たせたと考えられます。