かつてはフランクフルトモーターショーと呼ばれていた国際イベントが、今回は「IAAモビリティ」という名になってドイツ・ミュンヘンで開催されています。欧州のEVシフトの加速がひと目でわかるほど、どのブランドも世界初公開の電気自動車(EV)を展示、まさに「EV祭り」と呼べるほどの様相です。そんななかでも注目の3台を集めてみました。

前回までフランクフルトショーと呼ばれていた「IAAモビリティ」

 2021年9月7日より、ドイツ・ミュンヘンにて「IAAモビリティ」が開催されています。

 これは、ドイツ自動車工業会が2年ごとに開催するモーターショーで、日本でいえば「東京モーターショー」のような存在になります。

 IAAの歴史は古く、第1回の開催は1897年と120年を超える歴史を誇ります。かつては東京モーターショーと並び、世界5大ショーとも呼ばれていました。

 ちなみにその5つとは、北米、ジュネーブ、ドイツ、パリ、東京となります。IAAは、前回の2019年まではフランクフルトで開催されていたため、このモーターショーは、これまで通称「フランクフルト・モーターショー」とも呼ばれていました。

 しかし、2021年の今回より開催地をミュンヘンに移動。名称も「IAAモビリティ」とし、新たな歴史を歩み始めたところです。

 移転の理由は、フランクフルトでのモーターショーに、参加メーカーが減ったことにあります。

 前回の2019年は、グループPSA(当時)やFCA(当時)だけでなく、トヨタや日産などの日系メーカーの多くも不参加。

 IAAの「I」は、インターナショナルを示しますが、2019年の内容はドイツブランドばかりの国内イベントというものになってしまったのです。いってしまえば、2021年のミュンヘンへの移転は、そうした陰りを払拭するのが狙いということでしょう。

 ちなみに、こうした海外メーカーの不参加という流れは、フランクフルトに限らず他の5大ショーの多くも同様なのです。

 日本やパリ、北米も、同じように海外ブランド出展減少に苦しんでおり、それぞれに打開策を模索中です。たとえば2019年に開催された前回の東京モーターショーは、展示内容をクルマよりも広め、さらにテーマパーク化を狙ったものでした。

 また、今回のIAAモビリティも、東京モーターショーと同様に、“モビリティ”を謳い、クルマだけでなく移動手段そのものと幅広い展示内容となっているようです。

IAAモビリティ2021で注目のEVとは?

 そんなIAAモビリティで目立つのは、EVの展示の多さです。

 メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲン(VW)、アウディ、BMWからはコンセプトカーや量産プロトのEVが数多く出展されています。また、サプライヤーのブースにも数多くのEVが飾られ、さらには超小型のマイクロEVも出展されている。まさにEV祭りといった様相です。

 そんななかで、注目のEVを3台紹介しましょう。

 まず、EVシフトの急先鋒であるVWが発表したのは、コンパクトなクロスオーバーEVである「ID.LIFE」です。

 ID.3 などと同じMEBプラットフォームを使った全長4mほどの前輪駆動車で、172kW(234馬力)のモーターを搭載し、0-100km/h加速は6.9秒の俊足を誇ります。

 搭載バッテリーは57kWhで、航続距離は約400km。セアトやシュコダ版も用意されます。ルーフは再生プラスチックのファブリックで簡単にオープン状態にすることが可能です。また、フロントガラスにスクリーンを設置して、プロジェクターで投影した映画を車内で楽しむこともできるのも魅力のひとつ。

 しかし、このモデルでもっとも驚くのは、2025年までに約2万ユーロ(約260万円)から販売するということ。もしも本当に実現すれば、相当のヒット作となることは間違いありません。

 メルセデス・ベンツのコンセプトEVは「ヴィジョンAVTR」です。

 有機的なボディ・デザインとインホイールモーターが目を引きますが、今回の展示の目玉は「ブレイン・コンピューター・インターフェイス(BCI)」。これは人とクルマではなく、脳とクルマを結び付けるという技術です。

 ユーザーの頭に装着したBCIデバイスで、脳波を分析して、クルマの機能を操作するというもの。SFの世界の話ではなく、リアルな技術としてメルセデス・ベンツはBCIに注目しているといいます。IAAモビリティの会場には、実際にユーザーが思考で操作することを体験できるブースが用意されています。

 最後に、BMWからはコンセプトEV「iビジョン・サーキュラー」が登場しました。

 名前にあるサーキュラーとは「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」を指すのでしょう。その特徴は、100%リサイクル可能を目指しているところです。

 全長4mの4座のボディや内装だけでなく、搭載するバッテリーも全個体電池とし、リサイクル可能とのこと。動力源をエンジンからモーターに変えるだけでなく、クルマの生産から廃棄までを見据えてのCO2排出を減らそうというコンセプトです。

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 これ以外にも、VW「ID.5」やメルセデス・マイバッハ「EQS」、メルセデス・ベンツ「EQE」「EQB」「コンセプトEQG」、ポルシェの「ミッションR」、ルノーの「メガーヌE-TECHエレクトリック」、ポールスターの「ポールスター2」などが登場。夢のあるコンセプトから、実用化直前のモデルまで、多彩なEVが揃いました。

 EVシフトの渦中にあるドイツらしい展示内容ではないでしょうか。