2021年9月に、ドイツ・ミュンヘンで「IAAモビリティ2021」が開催されました。欧州の自動車メーカーがさまざまな新型EVを世界初公開、その様子はあたかも「EV祭り」。欧州ではEVシフトが加速していますが、日本でのEV普及率はまだ全体の0.7%といいます。現状、日本でEVは「使える」のでしょうか。

力強い加速と静かな車内はEV最大のメリット

 グローバルで電気自動車(EV)シフトが叫ばれるようになり、一般ユーザーにとってもEVを含めた電動車への関心は急速に高まりつつあります。

 車種のラインナップも増え、選択肢が豊富になってきました。電動車にはガソリンやディーゼルを使う内燃機関エンジンにはなかったクリーンなイメージがある一方で、電動車と付き合うにはさまざまな不安もつきまといます。この不安をどうすれば払拭できるのでしょうか。電動車との上手な楽しみ方をレポートします。

 EVには、内燃機関のモデルでは得られない新たな快適性があります。

 エンジンは、たとえ高級車であっても燃焼による音や振動が発生しますが、EVでは電動モーターで走っている限りそれがありません。とくに信号待ちなどで停車中の静けさは圧倒的で、走り出しても聞こえてくるのはタイヤからのロードノイズだけ。この静けさは、たとえば運転しながら音楽を楽しみたい人にとっても最高の動くリスニングルームとなるでしょう。

 また、その快適性は乗り心地にも通じます。これはバッテリーをフロア下に積むことが多く、その重さはEVの場合で約250kgから500kgほど。それだけに、バッテリーは頑丈なフレームに囲まれて収められており、これがボディ剛性の向上にもメリットをもたらし、結果として操縦安定性の向上やしっかりとした乗り心地にもつながっているのです。

 スタート時から発生する加速の力強さもEVならではの魅力です。モーターは電気が流れた時点で最大トルクを発生させることができるためで、一定の回転域に達してからトルクを発生させる内燃機関エンジンとはここが大きく違います。

 実際、EVでスタートすると身体がシートに押さえつけられるような強い加速感を味わえるモデルもあります。しかも、この感覚が日常で使う常用域で得られるのです。この感覚を味わったら、多くの人が後戻りできなくなるのではないかと思います。

 では、これだけ魅力あるEVにある不安というのはなんでしょうか。その筆頭となるのが航続距離です。

 EVでは、バッテリーに蓄電した電力が内燃機関の燃料に相当します。この容量が大きくなればその分だけ航続距離の長さにつながりますが、内燃機関で使う燃料のガソリンや軽油は液体で、給油はほとんど空の状態であっても満タンまで数分で済みます。

 一方で、電動車ではバッテリーに蓄電するのに充電することになりますが、すぐに“満タン”にすることはできません。これはスマホのバッテリーに充電することを思い浮かべればすぐに理解できるはずですが、ましてやその1000倍以上もの容量を持つEV用バッテリーが対象です。満充電となるまでに相応の時間がかかるのは容易に想像できるでしょう。

 ここで重要となるのが、いかにこの充電を効率よくおこなうかということです。

 意外と知られていないのが、バッテリーへ充電する際、電力は均一に蓄電されていくわけではないということ。バッテリーの残量が低い時は、最初こそ効率よく充電されていきますが、徐々に充電効率は落ちていき、約80%を超えるとその効率はグッと落ちてしまいます。これはバッテリーに負担をかけないよう保護回路が働いているためで、急速充電器が80%までとしているのも、じつはここに理由があります。

 また、急速充電器はほとんどが30分で自動的にカットされます。これは前述のバッテリー保護の目的、また過充電によって異常な発熱・発火を未然に防ぐ意味もあります。加えて長時間にわたって充電器を独り占めできないようにする目的もあるようです。

 それでも標準的な50kWの急速充電器を使えば、20%から30%まで残量が落ちた状態で30分充電するとだいたい70%から80%ぐらいまでには回復します。これはもっとも効率の良い状況下で充電するからで、じつはバッテリー残量が半分以上の状態で充電した場合でも、結果はほぼ同じとなることが多いのです。

 つまり、追加充電は20%から30%程度まで残量が減ったときにおこなうのがもっとも効率的で、これを念頭に充電のスケジュールを組むのがある意味正しい付き合いかたといっていいでしょう。

高速道路走行では想像以上にバッテリー消費が激しい

 では、満充電にするにはどうすればいいのでしょうか。

 これは単相200Vか、一般的な100Vのコンセントによって供給される普通充電を使います。

 しかし、急速充電に比べて普通充電は充電時の電流が低いこともあり、出先でちょっと立ち寄ったついでに充電しても、ほとんど残量が増えていきません。満充電を狙いたいなら自宅の車庫か、あるいは宿泊した先で一晩かけてじっくり充電しないと、“満タン”にはできないと認識したほうが良さそうです。

 一方でこの満充電は、バッテリーにとって必ずしも好ましくないともいわれます。

 EVに多く使われるリチウムイオン電池は、種類にもよりますが、多くが満充電のまま長時間放置するのは電池劣化の要因ともなるからです。しかも、前述のように80%を超えると充電効率が低くなるため、満充電を繰り返すと充電するための電力を無駄に消費することにもつながります。

 日常的には80%を少し超えるぐらいの残量で使い、遠くまで出かけるときにのみ自宅のコンセントで満充電にするのがバッテリーを長持ちさせる賢い使い方といえるでしょう。

 また、急速充電器は施設によって最大充電量が異なることも知っておきたいポイントです。

 高速道路などでは50kWを多く用意し、最近は日産ディーラーなどで90kWもの高効率充電器を備えてこともあります。

 反対にコンビニなど少し古めの店舗系施設では、30kW程度のものも少なくありません。当然、この出力が大きいほうが効率よく充電できるのですが、たいていは車両側で充電の最大値を50kWに制限している場合もあり、実際はこの出力を活用できていないのが現状です。

 それと、知っておきたいのは高速道路でのEVの走り方です。

 じつはEVで高速走行を連続すると想像以上にバッテリー消費が激しくなります。これは、一般道ではブレーキやアクセルオフ時などに回生ブレーキで充電ができるのですが、高速道路ではアクセルペダルを踏んでいることのほうが多くなり、バッテリーを消費するだけの走行となってしまうからです。

 加えて、アクセルを強めに踏んで負荷をかけるような走りを続けるとバッテリーが発熱しやすくなり、その状態で充電すると思うように充電していかないといった状況にもなります。

 その意味でも、高速道路ではACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)などを使いつつ、速度控えめに走ることが電費向上にもつながるし、効率よく充電をすることにつながると認識しておきたいところです。

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 ここまで、「EVと付き合う上での心得」的なものを採り上げてきました。

 いろいろ内燃機関とは違い、付き合う上でのさまざまな条件があることは否めません。ただ、EVには圧倒的なトルクによる走りの楽しさや、静かで快適な乗り心地が味わえるなど、内燃機関車を上まわるメリットがあることも確かです。

 これまでの経験として個人的に思うことは、長距離移動する機会が多い人は、効率の良いHEVを含むハイブリッドがベストだと感じます。これならば、近所を走るにしてもEVモードで走り切ることができるからです。

 一方でクルマを使うのは近所か県境を越える程度で、遠くに行くのには公共機関を使うというならEVを選択するのがいいでしょう。むしろ、そういった使い方でこそ、EVならではのメリットを知ってもらいたいと思います。