クルマのデザインは時代によって変化し続けていますが、1960年代に誕生した国産車のなかには、斬新かつ洗練されたデザインのクルマも存在。そこで、50年以上も前の日本車離れしたデザインのクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

50年以上前に誕生した美しい国産車を振り返る

 クルマのデザインは刻々と変化を繰り返しており、時代によってのトレンドも移り変わっているといえるでしょう。

 また、デザインはクルマの販売台数に大きく影響するため、新型車の開発ではもっとも重要な要素のひとつです。

 各自動車メーカーとも優秀なデザイナーを雇い、時には有名なデザイナーやデザイン工房に依頼することも珍しくありません。

 これまで誕生したクルマのなかには名作だけでなく迷作もありますが、1960年代のマイカー黎明期には、秀逸なデザインの国産車が数多く誕生。

 そこで、50年以上も前の日本車離れしたデザインのクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

●マツダ初代「ファミリア」

 マツダは1920年に「東洋コルク工業株式会社」として創業し、社名のとおりコルク材のメーカーとして誕生しました。

 その後、1931年に同社初の自動車である3輪トラックの生産を開始し、第二次世界大戦後もトラックメーカーとして成長。

 そして、1960年に初の乗用車「R360クーペ」が誕生して、続いて1963年に本格的な乗用車(登録車)である初代「ファミリア」を発売しました。

 ファミリアはイタリア語で「家族」を意味し、日産(ダットサン)初代「サニー」やトヨタ初代「カローラ」に先行して開発された大衆車です。

 ボディは当初ライトバンがデビューし、1964年には4ドアセダンとピックアップトラックが追加され、1965年には2ドアクーペが登場するなど、バリエーションを拡大。

 エンジンは最高出力42馬力(グロス、以下同様)を発揮する800cc直列4気筒OHV(クーペは1リッター)で、シリンダーヘッドとエンジンブロックがアルミ製の先進的なエンジンでした。

 当時、マツダは乗用車のデザインを、数多くのスポーツカーや名車を手掛けてきたイタリアのカロッツェリア「ベルトーネ」に依頼していました。

 しかしファミリアについては、社内のデザイン能力の育成がマツダの発展には不可欠との認識から、入社間もない若手デザイナーの案を採用し、フラットデッキのデザインを巧みに融和させた個性的かつ欧州車を思わせる秀逸なスタイルが完成。

 その後、初代ファミリアはマツダの本格的な輸出の担い手にもなり、性能を実証する場として海外のレースへも積極的に参戦しました。

●ダイハツ「コンパーノ」

 ダイハツは1907年に創業。産業用エンジンの生産から始まった国内屈指の老舗メーカーです。1930年には初の3輪トラックを発売して自動車メーカーへと移行しました。

 そして、第二次世界大戦後はオート三輪を主力とし、1957年に名車「ミゼット」を発売して大ヒットを記録。

 ミゼットに続いて、1963年に同社初の乗用車である「コンパーノ」を発売ました。

 コンパーノはイタリア語で「仲間・同僚」を意味し、コンパクトなサイズのライトバン、ステーションワゴン、そして「ベルリーナ」と名づけられたセダン(初期モデルは2ドアのみ)を順次ラインナップ。

 デザインはイタリアのカロッツェリア「ヴィニャーレ」に委託され、上級グレードでは木目パネルやウッドステアリングを備えるなど、外観と同じく内装も大衆車ながらイタリアンテイストが散りばめられていました。

 エンジンは最高出力41馬力の800cc直列4気筒OHVを搭載。他社が軽量化のためにモノコックボディの採用を始めるなか、コンパーノは小型商用車のラダーフレームを流用する構造の車体だったため重量増となり、動力性能は平凡でした。

 しかし、ラダーフレームとしたことはボディ架装の自由度が高く、1965年にはツインキャブの1リッターエンジンを搭載する2ドアコンバーチブル「コンパーノ スパイダー」を発売。

 まだマイカーの普及が始まったばかりながら、欧州製スポーツカーを思わせるスタイルのコンパーノ スパイダーは、かなり斬新なモデルだったといえるでしょう。

●日産初代「シルビア」

 日産「シルビア」といえば、「S13型」から「S15型」に代表されるスポーツクーペやデートカーをイメージさせますが、初代は高級なスペシャルティカーとして1965年に誕生。

 初代シルビアは1964年の東京モーターショーにダットサン「クーペ1500」という名で展示され、その後市販化されました。

 シャシは「フェアレディZ」の前身であるオープン2シータースポーツカー「フェアレディ」をベースとし、スタイリッシュな2ドアクーペボディを架装。エンジンもフェアレディから1.6リッターの直列4気筒OHVエンジンが流用されました。

 外観は開口部以外に継ぎ目をつくらないことにこだわった、美しいフォルムが特徴で、内装もレザーシートに5連メーター、ウッドステアリングなどがおごられ、高級スポーツカーをイメージ。

 また、フロントディスクブレーキや、トランスミッションにシンクロメッシュを採用するなど、当時の最新技術が採用されています。

 初代シルビアは内外装の造形を優先した結果、生産工程の多くがハンドメイドとされ、価格は高級車の「セドリック」を超える120万円に設定。同時期に発売された初代サニーの価格の3倍にあたりました。

 そのため、1965年3月から1968年6月までの約3年間の生産台数はわずか554台と、まさに幻の名車です。

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 今回紹介した3車種以外にも、1960年代にはマツダ「コスモスポーツ」、トヨタ「2000GT」、いすゞ「117クーペ」など、美しいデザインのモデルが誕生しています。

 当然ながら庶民には夢のようなクルマばかりですが、当時の技術者も夢を追い求めていたのではないでしょうか。