現在、人気にかげりを見せないSUVですが、その源流はクロスカントリー4WD車です。クロカン車は文字どおり悪路走破性が高いクルマですが、なかにはオフロード性能を極めたようなモデルも存在。そこで、究極のオフロードカーを3車種ピックアップして紹介します。

まさに道なき道を走る究極のオフロードカーを振り返る

 2000年代に入って、じわじわと人気が高まっていったSUV。今では世界の自動車市場を席巻している存在です。

 このSUVの源流となったのがクロスカントリー4WD車で、SUVの主流がオンロード走行を重視したクロスオーバーなのに対し、クロカン車は文字どおりオフロード走行を重視したクルマで、過酷な環境で活躍しています。

 さらにクロカン車の源流をたどると軍用車までさかのぼり、快適性よりも耐久性や悪路走破性などに特化して開発されました。

 三菱「ジープ」やメルセデス・ベンツ「Gクラス」が、軍用車から民生用が派生した代表的な例です。

 しかし、これら一般的なクロカン車のさらに上をいくオフロード性能のモデルも存在。

 そこで、究極のオフロードカーを3車種ピックアップして紹介します。

●トヨタ「メガクルーザー」

 トヨタ「ランドクルーザー」シリーズは、世界中の過酷な環境で活躍している日本を代表するクロカン車に君臨しています。

 2021年8月には300系新型ランドクルーザーが発売され大いに注目されていますが、このランドクルーザー以上の悪路走破性を実現した究極のオフローダーとして1996年に誕生したのが「メガクルーザー」です。

 メガクルーザーは、陸上自衛隊の「高機動車」をベースに民生用に仕立てられたモデルで、救難救助車、救急車、未開地域走破用を目的に開発されました。

 ボディサイズは全長5090mm×全幅2170mm×全高2075mmと巨体ですが、日本の狭い道路でも機動力が発揮できるように、最大12度の逆位相4WS(4輪操舵)を装備し、最小回転半径は5.6mを実現。

 デザインは四角を組み合わせたスクエアなフォルムのステーションワゴンタイプで、高機動車がソフトトップのオープンボディを基本としているトラックだったのに対し、メガクルーザーはメタルトップです。

 さらにフロントフェイスも丸目2灯から角目2灯に改められるなど、独自のデザインを採用していますが、余計な加飾は施されていません。

 室内は2+4名の2列シート6人乗りで、前席の間にはトランスミッションを収めるカバーが鎮座しているため、スペースは平凡ですが後席スペースと荷室は広大です。

 搭載されたエンジンは最高出力155馬力の4.1リッター4気筒ターボディーゼルのみで、トランスミッションは4速ATが組み合わされました。

 駆動方式はハイ・ロー切り替え式の副変速機を持つフルタイム4WDで、前後のデファレンシャルギヤにデフロック付きのトルセンLSDを装備し、後輪にはオプションでタイヤの空気圧調節機能も装着可能でした。

 サスペンションはトーションバー式の4輪ダブルウィッシュボーンで、ブレーキは4輪ベンチレーテッドのインボードディスク。ドライブシャフトと車軸の間にギヤを介したハブリダクションドライブを採用し、420mmもの実質的な最低地上高を確保するなど、あらゆる路面での走行に対応しています。

 メガクルーザーの当時の新車価格は962万円(消費税含まず)とかなり高額で、2002年に販売を終えていますが、高機動車は現在も継続して自衛隊に納入されており、災害時を中心に活躍しています。

●メルセデス・ベンツ「ウニモグ」

 前述のとおり、GクラスはNATO(北太平洋条約機構)に採用された軍用車が源流ですが、それとは異なるアプローチで開発されたオフロードカーがメルセデス・ベンツ「ウニモグ」です。

 ウニモグの1号車が生産されたのは1946年で、2021年の今年で75周年を迎えました。

 開発された経緯は、第2次世界対戦後のドイツの食糧不足という状況下で、農業の生産性を高めるための農業用車両に端を発し、1946年10月には最初のテスト走行がおこなわれたといいます。

 そうして誕生したウニモグは特殊車両で、いわゆる多目的作業車に分類されます。とにかく高い車高と巨大なタイヤが特徴で、見るものを圧倒する存在感があります。

 現行モデルのボディはシングルキャブとダブルキャブのトラックが基本で、さまざまなアタッチメントが用意されており、農業、林業、土木、除雪などの作業車や、道路も無いような場所での物流を担っています。

 ボディは巨大で、標準的な仕様でも全長5800mm×全幅2300mm×全高2900mmあるので、日常の使い勝手は考慮されていません。

 エンジンは最高出力231馬力の5.1リッターの直列4気筒ディーゼルを搭載し、駆動方式はパートタイム4WD。圧巻なのがトランスミッションで、標準は前進8速/後進6速ですが、最大で前進24速/後進24速の設定も可能です。

 登坂性能は最大斜度45度の斜面を登れるほか、最適地上高は380mmを確保して高い悪路走破性を誇っています。

 また、ウニモグならではのオプション装備として、ステアリングがコラムとメーターごと左右にスライド可能な「バリオパイロット」が設定されており、作業の状況によって右ハンドルにも左ハンドルにも変更できます。

 なお、ウニモグは日本でも消防車両や警察車両、除雪車などにも使われており、災害時や悪天候で威力を発揮しています。

●三菱「ミニキャブトラック 4クローラー」

 三菱の軽商用車「ミニキャブ」は1966年に誕生した軽トラック/バンで、現行モデルはスズキ「キャリー」がOEM供給されていますが、EVバンの「ミニキャブMiEV」のみ三菱が自社生産しています。

 このミニキャブトラックをベースに、1997年に究極のオフロードカーとしてラインナップされたのが「ミニキャブトラック 4クローラー」です。

 ミニキャブトラック 4クローラーは4WDのミニキャブトラックをベースにした特装車のひとつで、4輪をタイヤからクローラーに付け替えることで、泥ねい地や砂地、深雪地帯など、過酷な路面状況での荷物の運搬に特化した商用車として開発されました。

 車検証にはタイヤ装着時とクローラー装着時の2種類の諸元が記載され、特殊車両ではなく一般的な軽トラックとして登録できるため、普通免許での運転が可能です。

 また、一般公道をタイヤとクローラーどちらでも法的に走行可能となっており、利便性の高さも考慮されていました。

 ただし、クローラーユニットはひとつ約70kgあり、交換作業はそれなりの設備が必要だったと想定されます。

 ベースグレードは2タイプあり、標準の荷台とダンプが選べ、パワートレインは660cc直列3気筒自然吸気+5速MTのみです。

 当時の新車価格(消費税含まず)はベースの82万6000円に対し182万6000円と100万円高ですが、特装車の割には比較的安価に設定されていたといえます。

 かつてはダイハツやホンダも同様のクローラー装着車を販売しており、2代目「パジェロ」にも設定されていました。今では社外品でクローラーだけでも入手可能となっており、スキー場などでクローラー車を見ることができます。

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 クロカン車の最大の魅力は、本物の道具ならではの機能美といえるでしょう。これは工具やアウトドアギア、腕時計などにも通じるものです。

 本格的なクロカン車のオーナーの多くは、オフロードを走る機会はほとんどなく、性能的にもオーバースペックといえかもしれませんが、やはり無骨な見た目やメカには惹かれるものがあります。

 それこそが、ジムニーやランドクルーザーの人気の証といえるでしょう。