バブル崩壊後の1992年半ば、若者や学生を不景気が襲いはじめました。不景気は、就職活動の激化や収入の低下だけでなく男女とクルマの関係にも影響。若者のクルマを「デートカー」から「ナンパカー」へと変えていったのでした。1990年代後半に現れた「ナンパカー」3台の事情を探ってみます。

バブルのデートカーが廃れ、不景気で「ナンパカー」が出現!?

 2021年9月14日、東京市場の株式市場は、1990年12月のバブル期に記録した3万8915円に迫る3万670円の高値をつけました。この報道に、当時を思い出した人は多いのではないでしょうか。

 バブル景気は1990年1月から後退し、1992年中頃を過ぎると若者や学生にも不景気の兆候が見え始めました。

 不景気となってからというもの、企業はとくに女性事務職の採用を抑制したために、女子大生の就職事情が悪化。事務職の女性も「リストラ」などを余儀なくされていたのです。

 1995年を過ぎると、バブル期ならではの女性の活躍ムードは沈静化。就職活動では皆苦労するために、学生はお金をかけずに遊ぶようになりました。

 街には「アムラー」や「チーマー」、海には「サーファー」、山には「スノーボーダー」と、男女で遊ぶようになっていったのです。

 その結果、ファッションも遊びもスポーツ化やカジュアル化が進み、男女の出会いも遊びの場を中心とした「ナンパ」に変化していきます。

 そしてクルマの位置づけまでも変化。バブル期に女性をもてなすために流行った「デートカー」は廃れ、カジュアルなキャラクターを演出するためのナンパの道具へと変わっていきました。

 1990年代末にモテた「ナンパカー」にはどのようなモデルがあったのでしょうか。そのなかでも、遊びに使えるワゴン車3台紹介します。

●スバル「レガシィツーリングワゴン」

 1990年代後半、ワゴンとしてオールマイティに活躍したのが、スバル2代目「レガシィツーリングワゴン」です。

 当時はキャンプやバーベキュー、釣りにウインタースポーツなどのアウトドアレジャーが急速に普及。海や山へ出かけるのにレガシィは男性にとって選びやすく、女性にとっても助手席に乗りやすいために、当時流のデートカーとして重宝されました。

 レガシィツーリングワゴンのなかでも「GT」グレードは、250馬力の「EJ20H型」エンジンやMT車もラインナップされ、その気になればスポーツカー的な走りも可能でした。

 後期型は280馬力を発揮する進化した「EJ20R型」エンジンを搭載し、ビルシュタイン社製倒立式ショックアブソーバーを装着して走りの性能を熟成させました。

 本音ではスポーツカーを選びたい人が、走る気持ちを持ちながら女性ウケを狙ってレガシィツーリングワゴンを選んでも、十分に満足できたモデルだったのです。

カスタムベースとしても人気を博したワゴン車とは?

●ホンダ「アコードワゴン」

 ホンダ「アコードワゴン」は1991年に米国から日本に逆輸入され、CMでは「USアコードワゴン」を強調していました。

 140馬力の2.2リッターSOHCエンジン「F22A」が搭載され、帰国子女的で上品な育ちの良い雰囲気により、新車当時は都会的なデートカーとして活躍しました。

 ナンパカーとして活躍したのは、この1991年のモデルとフルモデルチェンジ後の1994年に登場したモデルです。

 ユーザーの志向により「ローダウン」や「エアロパーツの装着」など、上品とは正反対の雰囲気にカスタムされることも多く、とくにサーファーなどに愛用され、ドライバーのファッションのひとつとして活用されました。

 アコードワゴンは、夏の夜の海沿いの道路でも活躍します。

 女性たちは歩道に間を空けて立っており、男性はクルマに乗って車道に列をなし、男女が話をしてOKだったらデート成立、不成立なら1台分先に進んで別の女性と話す、などのスタイルでナンパがおこなわれたようです。

●日産「アベニール」

 日産「アベニール」は1990年に登場。当時人気だった「プリメーラ」に似たフロントマスクと、ワゴンとしては強力な140馬力のエンジン(SR20DE)を搭載し、比較的安価でよく走るワゴンとしてスマッシュヒットしました。

 1994年にはビッグマイナーチェンジにより「アベニール サリュー」を名乗り、「SR20DETエンジン」も搭載。松嶋菜々子さんの「お・ま・た」のCMとともに話題になりました。

 しかし、アベニールの中古車動向は大きく異なり、1990年代後半、アメリカ車のワゴンのプレスラインなどを埋めて、つるんとした外観にする「スムージング」というカスタマイズ手法が現れました。

 当時、安価に出回っていた中古車のアベニールは、スムージングのベース車として好んで用いられたのです。

 さらにラジエーターグリルを「アメリカンビレットグリル」に変えると、よりアメリカンな雰囲気が出たのもアベニールならではの特徴でした。

 もちろん車高は極端に下げ、荷室には大容量オーディオを搭載し、大音量の音楽で周囲にアピールするのがアベニール流。

 これらのボディスタイルやオーディオによるカスタマイズをおこなっていた若者は、駐車場や駅のロータリーなどに集まり、その場に来た女性と会話をしながらナンパをしていたようです。

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 ナンパカーが存在した1990年代後半は、規制緩和でさまざまなカスタムスタイルが登場。

 合わせてファッションも、当時なりのカジュアルファッションが確立されたものですが、それらも2000年代半ばまでにはナンパカーとともに姿を消してしまいました。