2021年10月7日に、日産新型「ノート AUTECH クロスオーバー」が発売されました。日産のベーシックカーに、新たな派生車が加わったかたちです。ノートといえば、昔ならば大衆車と呼ばれるモデルです。大衆車は1960年には誕生し、1970年代には一気にラインナップが増えました。そこで、大衆車ながら優れたデザインの日産製クーペを、3車種ピックアップして紹介します。

1970年代に誕生したスタイリッシュなクーペを振り返る

 日産は2021年10月7日に、「ノート AUTECH クロスオーバー」を発売しました。これまでノートにはスポーティな「ノート AUTECH」、コンパクトなプレミアムカー「ノート オーラ」という派生車がありましたが、今度はその名のとおりクロスオーバーSUVが加わりました。

 ノートと同クラスのモデルとしては、かつての「パルサー」があり、さらに前身である同社初のFF車だった「チェリー」と、いわゆる大衆車と呼ばれたクルマに辿り着きます。

 大衆車は文字どおり大衆のためのクルマで、現在ならノートのようなコンパクトカーや軽ハイトワゴンといったところでしょう。

 1960年代にマイカー時代へ歩調を合わせるように誕生した大衆車は、1970年代には一気にラインナップが拡大し、さまざまなボディタイプや高性能モデルも登場しました。

 そんな大衆車のなかには、優れたデザインのスタイリッシュなモデルも存在。

 そこで、1970年代の日産製大衆車のなかから、優れたデザインのクーペモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

●サニー クーペ

 1966年に誕生した日産(ダットサン)「サニー」こそ、日産の大衆車の原点となったモデルです

 その後、1970年に登場した2代目では高性能グレードを設定し、レースでも活躍するなど、大衆車であると同時に若者をターゲットとした安価なスポーツカーでもありました。

 さらに1973年デビューの3代目では、アメリカ市場を見据えてボディを大型化。全車FRの2ドア/4ドアセダンに、ライトバン、そしてスタイリッシュな3ドアハッチバッククーペがラインナップされました。

 3ドアハッチバッククーペには大きく分けて2タイプあり、1.2リッター直列4気筒OHV「A12型」エンジン車が「サニー クーペ」、1.4リッター(後に1.6リッターが追加)SOHC「L14型」エンジン車が「サニーエクセレント クーペ」と名付けられました。

 フロントフェイスは逆スラントノーズの精悍なデザインで、ルーフの前端からリアハッチの後端まで緩やかなカーブを描きながら傾斜するラインは、美しいサイドビューを演出。

 またテール部分はサニーエクセレント クーペは専用デザインの丸形6灯式ライトを採用し、独特な形状のCピラーと三角形のクオーターウインドウも斬新でした。

 スタイリッシュなサニー クーペは若者から支持され、日本のみならずアメリカでもヒットを記録しました。

●バイオレット ハードトップ

 1973年に、大衆車のサニーとより大型化した「ブルーバードU」の中間に位置するモデルとして、新型車「バイオレット」が誕生。

 シャシや主要なコンポーネンツをブルーバードUと共有するかたちの姉妹車で、4ドアセダン、2ドアハードトップ、ライトバンの3タイプのボディがラインナップされました。

 なかでも2ドアハードトップはロングノーズのファストバックスタイルで、リアウインドウに逆Rガラスを採用し、ルーフ後端からトランクリッドへのラインに連続性を持たせることで、美しく個性的なシルエットを実現。

 搭載されたエンジンは1.4リッターと1.6リッターSOHCの「L型」で、スポーティグレードの「1600SSS-E」には、最高出力115馬力(グロス)を発揮する「L16E型」を搭載し、電子制御燃料噴射装置を備えていました.

 駆動方式はFRで足まわりはブルーバードU譲りの4輪独立式のサスペンションを採用し、優れた乗り心地と操縦安定性の高さを両立。

 基本性能の高さから海外のラリーでも活躍し、1977年にオーストラリアで開催された第12回サザンクロスラリーでは、総合優勝を飾りました。

 ちなみに、TVCMでは俳優の藤岡 弘さんをイメージキャラクターとして起用していました。

●チェリー クーペ

 日産はサニーに続く新たな大衆車として、1970年にチェリーを発売。前述のとおり同社初のFF車で、FFのメリットを生かしてワンクラス上のブルーバードに匹敵する、広い室内空間を実現しました。

 発売当初のボディバリエーションは2ドアセダンと4ドアセダンでしたが、1971年にはスポーティな3ドアクーペが加わります。

 クーペのボディサイズは全長3610mm×全幅1470mm×全高1375mmと非常にコンパクトで、グレードは「スタンダード」「セミデラックス」「デラックス」「GL」「X-1」の5グレードを展開。

 エンジンはサニー用に開発された1.2リッターのA12型をベースに横置きに対応し、トランスミッションをエンジンの下に配置する「2階建て構造」とすることでパワートレイン全長を抑え、コンパクトなエンジンルーム内に収められました。

 そして、もっとも高性能なX-1ではSU型ツインキャブレターが奢られ、最高出力80馬力(グロス)を発揮。なお、ドライビングフィールは黎明期のFF車とあって、独特のクセがあったといいます。

 さらに1973年には「スカイラインGT-R」や「フェアレディ240ZG」を彷彿とさせるオーバーフェンダーを4輪に装着した「クーペ X-1R」がラインナップされ、大衆車ながらもレーサーイメージを強調していました。

 実際にチェリー クーペX-1はツーリングカーレースに出場し、FFのメリットをフルに生かして雨のレースでは圧倒的な強さを見せました。

※ ※ ※

 最近は大衆車という言葉を耳にすることはほとんどありません。マイカーを所有することが一般的になった証でしょう。

 一方で、今回紹介したサニーやチェリーがスポーティなグレードをラインナップしたように、現在のノートも人気のSUVを設定する販売戦略を実施するなど、時代のニーズに合わせるという根底の部分は変わっていないのかもしれません。