プロレーサー、テストライダー・ドライバーの丸山浩氏によるオーナー目線のインプレッション。今回のテストカーである2代目ホンダ「NSX」の試乗は初めてではないという丸山氏は、スーパーカーのあり方について考えされられたようです。

運転しやすいこととスーパーカーに求められるもの

 さすが国産、さすがホンダと唸らされる。2代目「NSX」の試乗は初めてではないが、このクルマは確実にスーパーカーというカテゴリーに収まっているはずなのに、既存のスーパーカーとはまったく違う方向を向いている。そういう意味では、オリジナリティにあふれた“ニッポンの”、そして“ホンダの”スーパーカーだ。

 スーパーカーらしさはたっぷりある。シートに腰を下ろしてドアミラーを覗くと、リアの派手なダクトが視界に入ってくる。ドライバーに「ただのスポーツカーではないぞ」と感じさせてくれる演出だ。ドライビングポジションもスポーティ。調整次第でステアリングはほぼ垂直になり、少しリクライニングさせるとまるでフォーミュラマシンのようだ。

 ミッドシップマウントされた縦置き3.5リッターV型6気筒DOHCツインターボエンジンはハイブリッドで、エンジン+モーターのシステム全体で581psを発生。

 ドライブモードを、「スポーツ+」にすると驚くほど速い。路面にピタッと吸い付くようなコーナリングは見事。ロール感はほぼなく、サーキットなどでハイスピードコーナリングしてもまったく音を上げる気配はない。

 基本的にはリア駆動だが、スライドするとモーター駆動の前輪がフロントからクッと引っ張り安定させてくれる。試乗車はオプションのカーボンセラミックディスクブレーキが装着されていたが、いうまでもなく高い制動力を発揮する。

 と、ここまでのインプレッションでは、いわゆるスーパーカーっぽいスーパーカーという印象しか持たないかもしれない。だがNSXが他のスーパーカーと一線を画すのは、圧倒的に乗りやすいということだ。

●高齢化社会に向けたスーパーカー

 まず、スーパーカーではあり得ないほど後方視界がいい。9速DCTはシフトショックがほとんど感じられず、1、2速落とした程度ではシフトダウンしたかどうかも分からないほどだ。

 アクティブダンパーもよくできていて、通常の走行では路面の段差を柔らかく受け止めて、凸凹をほとんど感じさせない。乗り心地は良好なので、長距離乗っても疲れない。

 カーボンセラミックディスクも初期タッチからスムーズで、非常にコントローラブルだった。低速の街乗りでも違和感なく扱える。そしてエキゾーストノートも、車外ではそれなりの迫力を轟かせるが、車内に入る音はかなり減衰されている。総じて緊張感が薄く、いつ誰が乗っても問題なく走れる上質さだ。

「誰にとっても乗りやすい」という表現が、果たしてスーパーカーにふさわしいかどうか。ここがNSXの評価が分かれるポイントだろう。

 私としては、高齢化社会が進むにつれて、こういった方向性はもっと受け入れられていくと思う。エレガントながらドライビングの本質を備えていて、普段使いもこなす。社会人として現役時代は好きな車趣味を我慢していた人が、定年退職後にNSXを走らせる。なんとカッコいい生き様ではないか。

 個人的には、もっと派手なエキゾーストノートが聞きたくなるし、モーターの出力をもっと高めて、電気ならではの猛烈な加速を……なんて思ってしまう。こういう熱狂的な「古き良きスーパーカーファン」がいることも分かっていながら、あえての洗練、あえての使い勝手のよさを堅持しているあたり、NSX、やはりオリジナリティにあふれている。

 そういえば、初代NSXも当時としては圧倒的に扱いやすいクルマで、その後のフェラーリなどに多大な影響を及ぼしたのであった。