ハイスペックなエンジンを搭載したスポーツカーは、当然ながら運転する悦びが感じられます。一方で、決してハイパワーでなくても、ドライビングプレジャーあふれるモデルも存在。そこで、現行モデルの国産車のなかからローパワーでもドライビングが楽しいクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

ドライビングプレジャーあふれるローパワーなモデルを振り返る

 速く走ることに特化したクルマというと、スポーツカーやスーパーカーが挙げられます。また、セダンなど一見するとスポーツカーではないモデルでも、大出力なエンジンを搭載したハイパフォーマンスなクルマが存在します。

 そうしたクルマは高性能なエンジンだけでなく、足まわりやブレーキなどトータルでチューニングされているのが一般的で、ドライビングプレジャーも申し分ありません。

 一方で、軽量な車体にそこそこのパワーのエンジンを搭載し、しっかりとしたシャシ性能を確保したクルマも、十分に運転を楽しむことができます。

 むしろ、日本の道路環境で法的に許される速度域ならば、パワーよりも車体の軽さや足まわりをつくり込んだクルマの方が、楽しめるレンジが広いといえるでしょう。

 そこで、現行モデルの国産車のなかからローパワーでもドライビングプレジャー満載のクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

●マツダ「ロードスター」

 1989年にマツダのブランドのひとつであるユーノスから、オープン2シータースポーツカーの初代「ロードスター」が発売されました。

「人馬一体」をコンセプトに開発された初代ロードスターは、決してハイパワーなモデルではありませんでしたが、軽量なボディとシャープなハンドリングのドライビングプレジャーあふれるクルマとして、国内外で大ヒットを記録しました。

 その後、人馬一体を継承しつつ代を重ね、排気量やボディサイズを拡大するなどよりパワフルさを求めるニーズに対応していきました。

 しかし、マツダはロードスターの原点に立ち返るため、2005年に登場した現行モデルの4代目では、エンジンは最高出力132馬力を発揮する1.5リッター直列4気筒にダウンサイジング。ボディサイズも全長3915mm×全幅1735mm×全高1235mmとワイド化しつつも全長を3代目よりも105mmも短くなりました。

 また、ボディの各部にアルミや超高張力鋼板を効率的に使い分けることで、高剛性化と100kgもの軽量化に成功し、ベーシックな「S」グレードでは990kgと1トン未満を達成しました。

 132馬力のエンジンと990kgの車重という組み合わせは、初代の1.8リッターモデルとほぼ同じで、まさに原点回帰したといえるでしょう。

 そして、すでにロードスターのファンミーティングで先行公開されていますが、Sグレードをベースにブレーキのチューニングや軽量ホイールを装着した特別仕様車「990S」の登場も2021年中に控えています。

 990Sは990kgの車重に由来しており、足まわりのファインチューニングもおこなわれるなど、これまで以上のドライビングプレジャーと大いに期待されています。

●ホンダ「N-ONE RS」

 ホンダは1967年に、同社初の軽乗用車として「N360」を発売しました。当時のライバルを圧倒する最高出力31馬力(グロス)を誇り、FFを採用したことから室内も広く、若者を中心に大ヒットを記録しました。

 このN360をモチーフに開発されたのが、2012年に誕生した軽セダンタイプの初代「N-ONE」です。そして、2020年11月には現行モデルの2代目へとフルモデルチェンジされました。

 2代目N-ONEではプラットフォームが一新され、外観は初代のシルエットを継承しながらも細部のデザインをブラッシュアップ。内装も水平基調のインパネに変更され、各種収納を使いやすい位置にレイアウトするなど、実用性も高められています。

 グレードは、自然吸気エンジンの「オリジナル」と「プレミアム」、そしてターボエンジンの「プレミアムツアラー」と「RS」の全4グレードを展開。

 エンジンは全車660cc直列3気筒で、自然吸気エンジンは最高出力58馬力、ターボエンジンは64馬力を発揮し、トランスミッションはCVTだけでなく、RSグレードではFF軽ターボ車では初の6速MTが設定されました。

 この6速MTは「S660」と同じく1速から5速をクロスレシオ化し、かつショートストロークで小気味よいシフトフィールを実現。さらにシフトノブの形状は「S2000」のデザインをモチーフとし、クラッチの踏力軽減やペダルに伝わる振動を低減するなど、細部にまでこだわっています。

 また、CVTもRS専用のセッティングとされ、マニュアルシフトが可能なパドルシフトを装備しており、2ペダルならではのスポーティな走りも可能です。

 全車共通の装備では2WDモデルのサスペンションに前後スタビライザーが装着され、4輪のブレーキを制御することでコーナリング時に車体の挙動を安定させる「アジャイルハンドリングアシスト」を搭載するなど、2代目N-ONEは走りの性能を重視しています。

●スズキ「スイフト RS」

 スズキの現行ラインナップには、今や日本を代表するホットハッチの「スイフトスポーツ」があります。

 スイフトスポーツは最高出力140馬力を発揮する1.4リッターターボエンジンを搭載し、車重は970kg(MT)を達成するなど、ドライビングプレジャーは国内でもトップクラスに君臨しています。

 一方で、スタンダードなスイフトにも、ローパワーながら走りの楽しさはスイフトスポーツに負けないモデルとして「スイフト RS」がラインナップされています。

 RSのエンジンは最高出力91馬力の1.2リッター直列4気筒で、トランスミッションは当初5速MTのみでしたが、現在はCVTもラインナップされています。

 外観は上位グレードの「SZ」に準じてスポイラー形状の前後バンパーやサイドステップ、小ぶりなルーフスポイラーが装着され、フロントグリルにRS専用で赤いストライプが入れられおり、よりスポーティに演出。

 特筆すべきは車体の軽量化で、車重はスイフトスポーツよりも100kg軽量な870kg(MT車)を実現。もはや軽自動車の領域です。

 また、RSの足まわりは欧州仕様と同じチューニングが施され、軽量なボディながら4輪ディスクブレーキが装着されるなど、走りに一切の妥協がありません。

 RSはパワー的にスイフトスポーツよりも大きく見劣りしますが、ちょっとしたワインディングでもパワーを使い切る楽しさが味わえるという点で、優れたドライビングプレジャーを有するモデルといえます。

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 300馬力、400馬力を発揮するスポーツカーも大いに魅力的ですが、やはりローパワーでも軽量なクルマを操る楽しさは格別なものがあります。

 昭和の時代のクルマは装備が簡素ということもあって、軽量なクルマがたくさんありましたが、現在は衝突安全性の向上や、安全運転支援システム、エアバッグ、各種快適装備の搭載が当然ですから、軽量なクルマをつくるのは難しくなりました。

 しかし、スズキのように軽量化技術を駆使することで、軽いクルマの開発が可能なことが証明されています。安全性の向上と軽量化という、相反することを同時におこなっているのは、もっと評価されてもいいでしょう。