米国で毎年開催されるカスタムカーイベント「SEMAショー」。2021年には「オーバーランド」というテーマでそれぞれのカスタムカーをお披露目しました。トヨタ・日産・ホンダが相次いで発表した「オーバーランド」仕様とはどのようなモデルなのでしょうか。

「どこでもキャンプ」こと「オーバーランド」はなぜ流行ったのか

 米国のラスベガスコンベンションセンターにおいて、2021年11月2日から5日までおこなわれた世界的な見本市の「SEMAショー2021」。

 今回、自動車メーカー各社は世界的に流行りつつある「オーバーランド」というライフスタイルをテーマとしたコンセプトカーを多数発表していました。

 オーバーランドは、オーストラリア発祥の旅のスタイル。

 そもそもは、遊牧のために牧畜農家の人々が豪州を転々と旅をしていたことが由来していますが、その後、レジャーのひとつのカタチとして定着しました。

 オーバーランドは、泊まる場所を決めずに、クルマで大自然のなかを旅し、気に入った場所で一晩過ごし、また次のポイントに移動するというものです。

 このライフスタイルはその後、南アフリカに飛び火し、彼の地ではバスやオフロード4WDがコンボイを組んで絶景のなかを旅するツアーも存在します。

 オーバーランドをすることを「オーバーランディング」、オーバーランディングに使うクルマを「オーバーランダー」ということもあります。

 オーバーランダーは、オーストラリアや南アフリカではオフロード4WDをベースにすることが多く、トヨタ「ランドクルーザー」やランドローバー「ディフェンダー」、スズキ「ジムニー」が人気です。

 オーバーランダーの特徴は、まず快適に野営ができる装備を備えていることです。

 フカフカのマットが敷かれたルーフテント、どこでも本格的な調理ができる車内収納タイプのキッチン、陽光や雨を遮って車外でゆったりとくつろぐことができるサイドオーニングなどが装着されます。

 さらに道なき道を旅するために必要な走破性を確保するため、リフトアップサスペンションやインチアップしたオフロードタイヤ、車体を障害物から守るブルバー(グリルガード)、脱出用のウインチ、大型ランプも追加されます。

 アメリカには10年ほど前にオーバーランドが“輸入”されました。

 当初は、四輪駆動車雑誌が主催するイベントなどでマニアが実践していましたが、4年から5年前から一般にも定着。

 現在では四輪駆動車で岩や砂漠、森のルートを旅する「トレイル」よりもメジャーなライフスタイルとなっています。

 このような状況について、国産タイヤメーカー広報スタッフは次のように反しています。

「ここ数年は北米市場で、オフロード向けタイヤが非常に好調です。

 これは北米で、オーバーランドが流行している影響があるのではないでしょうか。

 北米ではオフロード4WDもさることながら、都市生活者をターゲットにしたSUVをオーバーランダーにカスタムするケースが非常に増えているようです」

 北米でオーバーランドが流行している要素には、コロナ禍の影響もあるようです。

 北米ではテレワークが定着しており、ウイークデーをほぼ家で過ごすという人も少なくありません。

“週末くらいは自然のなかで過ごし、日常の時間を忘れたい”という理由から、オーバーランドが人気を博しているようです。

トヨタ・日産・ホンダが相次いで発表した最強キャンプ仕様とは

 SUV市場は北米で好調ですが、アメリカといえば忘れてならないのが、ピックアップトラックです。

 車両価格や保険料が安いというメリットだけでなく、アメリカンフロンティアの象徴であるピックアップトラックは、老若男女に大人気のカテゴリーです。

 今回のSEMAショー2021にも、ピックアップトラックをオーバーランダーにカスタムしたコンセプトカーが出展されています。

 日産は、「フロンティア」をベースにした「プロジェクト・オーバーランダー・フロンティア」をお披露目。

 キャビンの上にはルーフラックを装着し、コンテナボックスを搭載し、さらに荷台には、ケージタイプのベースラックを装着し、そこにルーフテントを載せています。

 さらに日本でも流行中のタンク・ロトパックスを付けています。

 こうしたスタイルは、カスタムビルダーの手法を模倣したものですが、オーバーランダーとしてはオーソドックスなものです。

 トヨタも、「タコマ」をベースにした「タコマ・オーバーランディング・コンセプト」を出展しました。

 同車は、フロンティアよりもさらにオーセンティックなオーバーランダーカスタムとなっています。

 このクルマにはオーストラリアでもっともメジャーで、アメリカでも大人気のブランド「ARB」のパーツが多数装着されています。

 フロントをガッチリ守るブルバーに、大型のLEDドライビングランプ、樹林帯で引っかかりにくいフラットタイプのラック。

 さらに1980年代の四駆ブームの頃に、日本でも人気を博した「ウォーン」のウインチ、北米のキャリアトップブランド「ヤキマ」のルーフテントなど、“一流どころ”のパーツがてんこ盛りです。荷台には、小型キッチンの搭載されているようでした。

 また、ピックアップトラックだけではありません。人気のSUVでもオーバーランダーのコンセプトが登場しています。

 ホンダは「パスポート」をベースにした「パスポート・トレイルスポーツ・ラギッドロードプロジェクト2.0」を出展。

 ルーフに「ルーフネスト」のラック付きテントを載せているのが目を惹きますが、インチアップした大径のATタイプタイヤを装着し、背面にも同じスペアタイヤとスイングキャリアが装着されています。

 さらに、ロックセクションで車体のダメージを低減させるスキッドプレートも車体下に付けられています。

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 こうしたスタイルは、すでに日本でも広まりつつあります。一昨年あたりからルーフテントの需要が劇的に伸びており、2020年は非常に品薄な状態に陥りました。

 もちろんコロナ禍の影響で商品が国内に入ってこないという理由もあるようですが、「オーバーランドに興味を持つ人が増えている」(輸入元担当者)ということです。

 日本はどこでも車中泊できるという環境にないため、オーバーランドという旅のスタイルにアレンジが必要ですが、オーバーランダーというカスタムスタイルは間違いなく流行しそうです。

 すでに、ジムニーやランドクルーザー、旧型ディフェンダーオーナーの間ではオーバーランダーに改造している人がかなりいます。

 また、このカスタムは軽トラックにも波及しており、トヨタ「ハイラックス」でもオーバーランドをイメージしたカスタムも存在します。

 こうしたこともあり、今後日本でもますます広がっていくかもしれません。