モータージャーナリストの国沢光宏氏は2021年から全日本ラリーにトヨタ「ハイエース」で参戦しています。10月23日に北海道・蘭越町で開催された「北海道ハイエースフェスティバル」で、そんな走りのハイエースに試乗する機会がありました。

人気のトヨタ商用バン「ハイエース」がラリー仕様に

 日本で「はたらくくるま」の代表格といえば、トヨタ「ハイエース」です。

 初代ハイエースが登場したのは1967年のことなので、すでに半世紀以上も日本の物流や旅客輸送などを支えてきたことになります。

 現行型は2004年に登場した「H200系」と呼ばれる5代目。登場から17年、マイナーチェンジを重ねて熟成されたロングセラーモデルです。ロング/スーパーロング、標準ボディ/ワイドボディ、標準ルーフ/ミドルルーフ/ハイルーフと、さまざまなボディサイズを用意しています。

 また商用車のバンだけでなく、乗用車のワゴンも人気です。日本自動車販売協会連合会が発表した2021年上半期(1月から6月)の乗用車ブランド通称名別ランキングを見てみると、4634台で全体の49位にランクインしています。ちなみに前年同期比は111.8%と、なお根強い人気を誇っているのがわかります。

 圧倒的な室内空間の広さを利用して、釣り、自転車、バイクのトランポとして、さまざまなアウトドアスポーツという趣味に使う人も多く、最近では車中泊用のキャンパー仕様も増えているそうです。アフターパーツも豊富に揃っているため、ユーザーはイメージする通りにハイエースをカスタムすることも可能です。まさに「走る夢の空間」といえます。

 人気の理由は、室内空間だけでなくその信頼性と耐久性の高さともいえるでしょう。商用車として何10万kmも走っているハイエースも珍しくありません。またリセールバリューも高いため、人気がさらに高まるという好循環になっています。

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 自動車評論家の国沢光宏氏は、そんなハイエースをベースにしたラリー車両で、2021年から全日本ラリーに出場しています。信頼性や耐久性の高さがウリのハイエースだけど、ラリー挑戦は無謀!? という下馬評を覆し、国沢氏によると参戦するたびに仕上がりが良くなっているといいます。

 2021年10月24日には北海道・蘭越町で開催された「ARKスプリント300」に参戦。初のグラベル(未舗装路)ラリーに挑戦しました。サービスパークが置かれた蘭越町役場駐車場には、ラリー車らしからぬハイエースに観客も興味津々、子どもたちが一緒に写真を撮るなど人気となっていました。

 そんなサービスパークすぐ近くの尻別川ランラン公園で、2021年10月23日・24日におこなわれたのが「北海道ハイエースフェスティバル(HIFES)」です。

 これはハイエースのラリー車両を制作したCAST RACING主催のハイエースイベントで、23日にはこのラリー車を開発・製造、ラリーにもドライバーとして参戦する喜多見孝弘さんが本番用ラリー車をドライブし同乗走行もおこなわれました。

3台のデモカーに乗ってわかったハイエースの奥深さ

 10月23日と24日におこなわれた北海道ハイエースフェスティバルでは、CAST製のハイエース機能性パーツを装着したデモカーの試乗も開催されました。デモカー1号車と2号車、そして比較用として市販車のハイエースの3台に乗ってみました。

 まずはノーマルのハイエースに試乗します。試乗車は2.8リッターのディーゼルターボを搭載、トランスミッションは6速ATが組み合わされたモデルで、駆動方式は4WDです。

 これまでハイエースに乗った経験は少ないのですが、現行型H200系が発売された当初に乗った印象では、先代よりも内装の質感などが格段に向上したことに加え、乗り心地や音振動も改善されたのが好印象でした。ただしそれでも商用車っぽい突き上げがあり、当時は4速ATでレンジが広かったこともあり、エンジン音が車内ににぎやかに響いていました。

 久しぶりに乗ったハイエースは、街乗りレベルだと突き上げ感もあまりありません。また6速ATもなめらかで、発売から13年経った熟成度を感じさせます。

 続いて乗ったのは、デモカー2号車。このモデルは2リッターガソリンエンジンに6速ATが組み合わされたモデルで、CAST RACINGのサービスカー兼営業車として使われる1台です。

 足まわりには、喜多見孝弘さんのサンコーワークスが開発したNeoTuneショックアブソーバーにリアショックトランスファーキット、リーフエンドベアリングブッシュを装着、駆動系にはサイレントLSDが組み込まれています。Neo Tuneのショックアブソーバーは3種類用意されていますが、デモカー2号車には柔らかめのセッティングのコンフォート仕様が装着されています。

 まずは一般道を試乗します。走った瞬間、ノーマル車と比べて乗り心地がしなやかになったとわかります。また段差乗り越えもバスッという感覚がなくなり、ボディの揺れもスッと一発で収まります。

 ハイエースは商用車ベースということで、熟成されているとはいえ乗り心地などにはどうしても目を瞑らざるを得ないところもありますが、これはなんというか、乗用車に近いフィーリングで走ることができました。操縦性も、ハンドルを切ったら切ったぶん曲がる感覚があり、運転のしやすさが向上しています。どちらかといえば、日常でハイエースを目一杯運転する人にオススメだと感じました。

 続いてデモカー1号車に乗ります。こちらはCAST RACINGのラリーレッキ車として使われる車両で、いってみれば全日本ラリー参戦車のロードカーバージョン。MT仕様です。

 Neo Tuneショックアブソーバー(ラリー仕様)にリアショックトランスファーキット、リーフエンドベアリングブッシュとサイレントLSDが組み込まれたマシンで、車内はフルバケットシートに小径ハンドルと、見た目にもやる気を感じさせる仕様になっています。

 ハイエースのMT仕様に乗ること自体はじめての経験でしたが、カッチリとしたシフトフィールで好印象です。ラリー仕様のサスペンションというとガチガチにかためられた印象がありますが、実際はオンロードでもしなやかに足が動き不快な硬さはありません。

 フルバケットシートに座り小径ハンドルを動かせば、もうその時点で“やる気”にさせてくれます。試乗コースにはダートもありましたが、バンピーな路面でも駆動抜けすることなく、楽しい「スポーツカー」に仕上がっていたのが印象的でした。

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 ハイエースは、商用での使用はもちろん、キャンパー仕様にも車中泊仕様にもなる趣味グルマの印象は持っていたのですが、走りの楽しさまで得られるとは思っていませんでした。

 信頼性と耐久性の高さをベースにしながら、オーナーが思うような方向にカスタマイズできるのもハイエースの魅力。今回の試乗で実感しました。