台数限定や期間限定で販売される特別仕様車や限定車は、大いに魅力的な存在で、近年はプレミア価格で中古車が販売されるケースも珍しくありません。そんな限定車のなかでも、かなりユニークなモデルも存在。そこで、かなり攻めた限定車を3車種ピックアップして紹介します。

ユニークかつ攻めの姿勢で誕生した限定車を振り返る

 近年、1980年代から1990年代に生産された、旧車やネオクラシックと呼ばれるクルマの価格高騰が続いていますが、同じく中古車がプレミア価格で取引されるケースが多くなっているのが、限定車です。

 限定車は台数限定や期間限定で受注・販売されるクルマで、装備の充実や仕様を変更した特別仕様車だけでなく、まったくの新型車が限定販売されるケースもあります。

 こうしたクルマは希少価値から注目され中古車のプレミア価格につながっていますが、1980年代の終わり頃から見られるようになり、最近はその傾向が顕著になりました。

「限定」というワードが大いに魅力的に感じられるのはクルマだけでなく、心理的に「手に入れたい」と思う人の消費行動に見事にマッチした策ともいえるでしょう。

 そこで、限定車のなかでもかなりユニークなモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

●トヨタ「クラウン“ReBORN PINK”」

 トヨタが販売している現行モデルのなかでも、もっとも長い歴史を刻んでいるのが「クラウン」です。

 1955年に「トヨペットクラウン」の名で誕生し、当初から高級車として開発され、現行モデルの15代目までトヨタを代表する高級車に君臨しています。

 そして、2012年に登場した先代の14代目では、シリーズでもかなり異色な限定車が存在しました。

 それは、2013年に発売されたピンクのボディカラーの特別仕様車「クラウン“ReBORN PINK”」(以下、ピンククラウン)です。

 このピンククラウンは14代目の発表会の際に展示され、14代目のコンセプトである「生まれ変わる」ことを象徴して企画されました。

 ベース車は「アスリートG」グレードのハイブリッド車とガソリン車で、「モモタロウ」とネーミングされた外装色を採用。

 内装もホワイトとブラックの組み合わせに、テリー伊藤氏がカラーコーディネートを手掛けたというピンクのステッチや、各部にピンクの差し色が施されています。

 受注期間限定で販売されたピンククラウンは、クラウンのイメージからすると奇異なモデルながら約650台も生産されました。

 また、ピンククラウンの効果として、それまでクラウンに興味を持っていなかった女性ユーザーからも注目を集めることに成功したといいます。

●三菱「ピスタチオ」

 1996年に発売された三菱「ギャラン」とステーションワゴンの「レグナム」は、量産車では世界初となるガソリン直噴エンジン「GDI」を搭載し、大いに注目されました。

 その後も三菱はGDIの搭載を拡大し、1999年には当時世界最小のガソリン直噴エンジンを搭載した「ピスタチオ」が登場しました。

 ピスタチオは軽自動車の8代目「ミニカ」をベースにした3ドアハッチバックのコンパクトカーで、専用のバンパーによって全長は3440mmに延長されましたが全幅は1475mmと軽自動車規格のままで、乗車定員も4名です。

 エンジンはピスタチオ専用に開発された1.1リッター直列4気筒GDIで、アイドリングストップを採用し、トランスミッションは5速MTのみ。

 装備はミニカに準じてエアコン、パワーステアリング、パワーウインドウ、運転席エアバッグなどは装備するも簡素で、車重は700kgを達成していました。

 軽量な車体とGDIエンジンによってピスタチオの燃費は30km/L(10・15モード)と、純粋なガソリンエンジン車で当時世界一の低燃費を実現。

 ピスタチオは「第3のエコカー」の1台として開発されましたが一般ユーザーには販売されず、わずか50台のみの限定販売で、顧客は環境保全に取り組む自治体や公益企業などの法人のみとされました。

 50台のためにエンジンを新開発したのは驚きますが、ピスタチオは実証実験という意味合いがあったようです。

 どれだけ現存しているかは不明ですが、今では路上で見ることはまず無いであろう、幻のクルマなのは間違いありません。

●スバル「インプレッサ S201 STiバージョン」

 スバルのモータースポーツ活動を支え、今ではスポーティグレードのブランドにもなっているのが、スバルテクニカインターナショナル(以下、STI)です。

 STIは1988年に創業され、世界ラリー選手権で培った技術力を生かし、これまでスバル車をベースにしたハイパフォーマンスなコンプリートカーも数多く開発してきました。

 そのなかの1台で、歴代コンプリートカーのなかでもユニークなモデルだったのが、2000年に発売された「インプレッサ S201 STiバージョン」(以下、S201)です。

 S201のベースとなったのは初代インプレッサ WRXで、開発コンセプトはオンロードでの走りを追及。

 そのため外観では、グリル一体式のフロントエアロバンパー、ボンネット上の大型エアスクープ、空気抵抗を削減する小型のドアミラー、サイドスカート、ダブルウイングリアスポイラー、ディフューザー形状のリアエアロバンパーなどが装着され、空力性能の向上が図られました。

 エンジンは2リッター水平対向4気筒ターボ「EJ20型」をベースに、専用のECUと吸排気系のチューニングにより、最高出力はベースから20馬力アップの300馬力を発揮。

 足まわりでは車高調整式サスペンションと、ピロボールのアーム類が組み込まれるなど、オンロードに特化したセッティングにより卓越したハンドリングを実現していました。

 迫力あるシルエットが話題となったS201は限定300台で販売され、当時の価格は390万円(消費税含まず)でしたが、現在は中古車が500万円台から600万円台で販売されています。

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 前述のとおり、近年の限定車の多くはプレミア価格となるのが定番になってしまいました。とくに高性能なモデルは争奪戦が繰り広げられ、デリバリーと同時に新車価格を大きく上まわるプライスタグが付けられています。

 資本主義における商取引では仕方のないことなのですが、本当に乗って楽しみたいと思うユーザーが手に入れられない状態になってしまいました。

 メーカーも抽選販売や受注期間を定めるなど対策をおこなっているケースもありますが、とくにファイナルモデルなどでは生産台数に限りがあるため、抜本的な解決策になっていないのが実情です。