クルマの電動化が進むなか、スポーツカーもEV化が求められています。日産「シルビア」のEVデザインが欧州で公開されましたが、2030年代のスポーツカーはどうなるのでしょうか。

EVシフトでスポーツカーからエンジンが消える!?

 欧州を中心にクルマのEVシフトが一気に進む様相を呈しており、そうなると2ドアスポーツカーのEV化も避けられないでしょう。

 これから迎える電動化時代の2ドアスポーツカーはどのような姿になるのでしょうか。

 2021年11月中旬に開催されたトヨタ新型「GR86」とスバル新型「BRZ」の公道試乗会で、2ドアスポーツカーの企画や開発をおこなったトヨタとスバルのエンジニアを直撃。

「2ドアスポーツカーはこれからどうなると思いますか?」、または「2ドアスポーツカーはどうあって欲しいと思いますか?」ということについて聞いてみました。

 これに対して、皆さん、あくまでも個人的な意見として答えてくれました。

 たとえばエンジン開発担当者は、「スポーツカーはやはりエンジンが一番。このままでは内燃機関がなくなってしまうことを危惧しています。最近は水素や合成燃料を使うという話も出てきましたが、いずれにしろ(マイルドハイブリッドなど)段階的な電動化が必要になることは間違いないと思います」と、エンジンに対する熱い思いを語ってくれました。

 車体開発担当者は、近未来に向けた希望として、次のようにコメントしています。

「今後スポーツカーがEV化したとして、バッテリーは車体の低い位置に置くので(スポーツカーの重要点である)低重心になりますが、(GR86やBRZのような)小型スポーツカーでは重量増が課題です。

 今後、電池のエネルギー密度が高くなれば、電池の搭載量が減り、クルマ全体としてのパフォーマンスのバランスが上手く取れる時代が来るのだと思いますが、それがいつ頃になるのか……」

 そのほか「電動化となると、(内燃機関としてのエキゾーストノートやエンジン振動などの)音がなくなってしまいますが、スポーツカーはやはり音が重要です。また、(オイルやガソリンなどの)臭いも私の世代にとってはスポーツカーに欠かせない要素です」と、スポーツカー愛を強調する関係者もいました。

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 2021年7月に開催された新型GR86と新型BRZのプロトタイプ試乗会の際にも、同様の質問をデザインや操縦安定性、アフターマーケットなどさまざまな部門の人たちに聞いたのですが、「正直、これからどうなるのか分からない」という声が多く聞かれました。

 さらに「我々としては、これが非電動化時代の最後のスポーツカーという認識で誠心誠意、開発をおこなってきました」といい切る人もいました。

現実路線はマイルドHVだが一気にEV化が進む可能性も

 日本を代表するスポーツカーといえば、マツダ「ロードスター」があります。

 ロードスターの未来については、マツダがオンラインでメディア向けに実施した電動化など将来の事業に関する意見交換で、同社の幹部は筆者(桃田健史)の質問に答える形で、「2030年代の電動化のロードマップにロードスターも組み込まれています」と断言しました。

 これより前に、ロードスターの開発責任者も筆者との取材時に、これからの先のロードスターのあるべき姿を聞くと「今後は、(マイルドハイブリッドなど)電動化を視野に入れなければならないという認識はある」という発言もあったのです。

 ただし、ロードスターがEVになるというイメージは、現時点でマツダのなかにはないように思えます。

 軽量かつコンパクトが商品性の主体である小型スポーツカーについては、マイルドハイブリッドとして内燃機関が当面の間は継続される可能性が高く、ユーザーもそうした段階的な電動化の流れを望んでいるのではないでしょうか。

 エンジニアとしてもまずはマイルドハイブリッド化をやりきってから、その時点でまたその次の段階を考えていくというのが現実的だといえるでしょう。

 一方で、国産スポーツカーが一気に電動化する可能性もあるかもしれません。

 その筆頭は、日産「シルビア」です。

 日産ヨーロッパは2021年9月、自社サイトの日産ストーリーズというコーナーで、1964年の東京モーターショーでデビューした初代シルビアをモチーフとした新型EVのデザインイメージを公開しています。

 これを見て、「シルビアEVの量産もあり得るのでは?」と思った人が少なくありません。

 なぜならば、ステランティス傘下のオペルが2021年5月に、1970年代の「マンタ」をモチーフとしたEVコンセプトモデルを公開しましたが、その2か月後には、2028年までに欧州内で販売するオペルをEV100%ブランドとして再生し、マンタも復活することを発表したからです。

 そうしたオペルによる布石があるため、「シルビアがEVで復活」に対する真実味が増しているといえます。

 シルビアはスポーツカーというよりは、エレガントさを兼ね備えたスポーティカーというイメージが強く、また1980年代当時でもAT車率が高かったこともあり、MT車比率が比較的高いGR86/BRZやロードスターを比べると、EVとの相性が良いのかもしれません。

 また、2022年に登場予定の日産新型「フェアレディZ」についても、型式「Z34」を維持したままということもあり、その先はシルビアと部品共通性も持つEVに進化する可能性も否定できないのではないでしょうか。

 いずれにしても、2ドアスポーツカーは2020年代後半から2030年代にかけて、大きな転機を迎えることは間違いなさそうです。