「ヴィータ」「オメガ」など、かつてヒットモデルを生み出したオペルが日本市場から撤退したのは2006年。それからおよそ15年。2022年にはオペルブランドが日本に再上陸します。そもそもオペルとはどんなブランドなのでしょうか。

新型コロナ蔓延や半導体不足の影響で日本再参入は後ろ倒しに

 オペルブランドの日本での展開が、もうすぐ2022年にはじまります。すでに日本語版サイトがオープンしており、準備は万端です。

 2020年2月18日、プジョー、シトロエン、DSのブランドを展開するグループPSAジャパンがオペルの日本市場への再参入を発表した際には、2021年内に立ち上げるとされていましたが、実際の販売開始およびディーラーのオープンは2022年にずれました。

 これは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大、またそれにともなう世界的な半導体の供給不足など外的要因が原因です。2021年12月の段階でも、オペル上陸の詳細なスケジュールは「まったく決まっていません」(グループPSAジャパン関係者)といいます。

 再参入というように、オペルは以前、日本市場で販売されていたことがありました。2006年の撤退が直近の動向です。

 オペルの歴史は非常に長く、創業はなんと1862年。日本でいえば幕末の文久元年です。これは明治維新による明治元年の1868年よりも6年も前になります。さらにいえば、カール・ベンツが自動車を発明する1886年よりも24年も前のことになります。

 当初はミシンを製造していましたが、1899年にオペル第一号車「システム・ルッツマン」を発売しました。そして第一次世界大戦前までに小型車をヒットさせ、当時はドイツ最大の自動車メーカーに成長していました。

 しかし、1920年代に創業一族の主要メンバーが死去したことを鑑み、オペルは1929年に大きな決断を下します。それがアメリカのGMとの資本提携で、以降オペルはGM傘下のブランドとしての歴史を歩むことになります。

 第二次世界大戦によってドイツは荒廃するものの、オペルは戦後わずか1年で生産を再開。GMもすぐに復帰したことで、オペルの戦後復興は順調に進んでいきました。

 ちなみに1952年から日本でもオペルが発売されています。

 その後、欧州では小型や中型のファミリーカーとしてオペルは高い評価を得て、販売を伸ばします。1970年代にはワールドカー構想をもとに、オペルの「ニューカデット」をベースにした兄弟車が世界のあちこちで生まれました。日本では、当時GMと提携していたいすゞより「ジェミニ」が生まれています。

 一方、日本市場ではオイルショックの影響で、オペルの輸入が1980年代前半まで一時中断しました。

 そして1993年に、日本で大きな動きがありました。それは輸入車販売大手のヤナセが、オペルを扱うようになったことです。さらに1995年には、エントリーモデルとなる「ヴィータ(欧州名:コルサ)」が日本に上陸。なんと200万円を下まわる手ごろな価格で大人気になっています。

 当時、輸入車といえばイコール高級車であり、大衆車としてのドイツブランドの登場に、オペルが注目されることになりました。ただし、その後のオペルの販売は伸び悩み、結局、2006年に日本から撤退しています。

最初に日本に導入されるモデルはコンパクトな3車種

 オペルとGMとの関係は、はるか90年ほども前の1929年から続いていましたが、2017年にオペルはGMとの関係を断ち切り、当時のグループPSAに参加することに。

 グループPSAとは、プジョーとシトロエン、DSの3ブランドを展開するフランスの自動車メーカーで、ここにオペルが加わることで、欧州におけるシェアはVWグループに次ぐ2位となりました。

 さらにグループPSAは、2019年の暮れにFCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)との合併にも合意。現在では「ステランティス」として、世界シェアは4位という巨大なメーカーとなっています。

 ステランティスのなかでオペルは唯一のドイツブランドということで、技術的にも非常に重要なポジションを担っています。

 オペルは、グループPSA合流後に経営計画となる“PACE!”を発表しました。

 内容は多岐にわたりますが、注目点は「2020年代の半ばまでに、欧州以外の市場での販売台数比率を10%にする」ということ。逆にいえば、オペルはほとんど欧州市場だけで戦っていたブランドだったのです。

 この計画に沿ってオペルは、アジア、アフリカ、南米での存在感強化に努めるといいます。さらに2022年までに新たに20の市場への参入が謳われています。

 その計画があるからこそ、日本への再参入が決まったのでしょう。ちなみに、日本以外にもロシア市場への再参入、コロンビアやエクアドルへの市場参入もおこなうとしています。

 また電動化の推進も謳われており、2024年までには完全な電動化をおこないたいといいます。その具体例として挙げられるのが、2019年にフルモデルチェンジした「コルサ」です。

 Bセグメントのコンパクトカーであるコルサには、純粋な電気自動車仕様の「コルサe」が用意されており、グループPSAのなかでも電動化の急先鋒といえる存在になります。

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 日本で最初に導入するモデルはすでに発表されています。

 Bセグメントハッチバックのコルサとコルサe、BセグメントSUVの「モッカ」、そしてCセグメントSUVの「グランドランド」の3車種です。ちなみにコルサは、以前日本で展開されていた際にはヴィータという車名でしたが、今回は日本でも欧州名と同じコルサの車名で登場する予定です。

 さらにMPVの「コンボ」やCセグメントハッチバックの「アストラ」など、モデルレンジは随時拡大予定となっています。

 これらはどれも日本車でも人気のジャンルばかり。しかも、どのモデルも欧州での販売価格を見ると、日本車と遜色ないレベル。ドイツのプレミアム・ブランドとは異なる価格帯で、日本に再参入することは間違いありません。

 つまり、再参入するオペルの強みは1990年代の時と同じくコストパフォーマンスです。

 ドイツ車ならではの高速走行性能を備えつつも、他のドイツ車とは違うリーズナブルさがあり、生産コストはステランティス傘下で大幅に圧縮されています。今後は、車種アーキテクチャーを9つからふたつまで減らす計画さえもあるといいます。

 ただし、1990年代から2000年代初頭のオペルは、品質面での不満もありました。それが2006年の撤退の理由のひとつとなっています。

 今度の再参入では、そこをクリアしつつ、しかもリーズナブル。それを実現できれば、オペルの日本での足場も固まるのではないでしょうか。すべては品質にかかっています。