2021年12月23日、ホンダ「インサイト」を含む複数車種が2022年内に国内販売を終了することが報じられました。ホンダのハイブリッドカーの象徴ともいえるインサイトは、どのようなクルマだったのでしょうか。

「燃費スペシャル」としてプリウスに真っ向勝負を挑んだインサイト

 2021年12月23日、ホンダ「インサイト」、「シャトル」、「CR-V」が2022年内に国内販売を終了することが報じられました。
 
 インサイトは、ホンダのハイブリッドカーの象徴ともいえますが、どのようなクルマだったのでしょうか。

 1999年に登場して以来、ホンダのハイブリッド専用車として3世代にわたって国内販売されてきたインサイト。

 ライバルであるトヨタ「プリウス」は、どちらかといえば、順当なモデルチェンジを現在まで繰り返してきたのに対し、インサイトは世代ごとにコンセプトを大きく変えてきたという特徴があります。

 例えば、初代インサイトは徹底した燃費性能を追求した「燃費スペシャル」ともいえるモデルでした。

 空気抵抗を低減させるために、後部タイヤをスカートでおおい、なおかつ軽量化を図るために2シーターとし、さらにはMT仕様も用意されていました。

 その結果、35km/L(10.15モード)という量産車としては当時世界最高のカタログ燃費を達成。

 この数値は、1997年に世界初の量産型ハイブリッド車として登場したプリウスをしのぐものであり、後発であるホンダの意地を見せる形となりました。

 2006年まで販売された初代インサイトですが、燃費性能に特化したということもあり、販売台数という面では決して良好ではありませんでした。

 それでも、来たるべき電動化の時代を見据えた1台として、いまでもファンの間に強烈な印象を残しています。

 2代目インサイトは、初代の販売終了から3年後の2009年に登場しました。

 すでに世界中でベストセラーカーとなっていたプリウスに対抗するべく、プリウス同様の5ドアファストバックスタイルへと変更。

 パワートレインには1.3リッターと小型モーターを組み合わせたハイブリッドシステムが搭載され、カタログ燃費は26.0km/L(JC08モード)となっています。

 また、189万円から221万円というリーズナブルな価格も魅力でした。

 2代目インサイトは、当時のエコカーブームを追い風に、2009年4月度には月間販売台数1位を記録するヒットモデルとなりました。

 ライバルであるプリウスと激しい争いを繰り広げた2代目インサイトですが、ホンダ全体の新ハイブリッドシステムへの移行などにともない、2014年で販売を終了することとなります。

上質なスポーティセダンへとイメージを変えた3代目だが…

 2018年に登場した3代目インサイトは、それまでのファストバックスタイルから大きくイメージを変えた、スポーティなセダンとなりました。

 パワートレインには、EV走行とハイブリッド走行、そしてガソリンエンジンのみによる走行をクルマが自動的に選択する、1.5リッターのガソリンエンジンとホンダ独自のハイブリッドシステム「スポーツ ハイブリッド i-MMD」が搭載され、燃費性能はJC08モードで34.2km/L、WLTCモードで28.4km/Lを実現しています。

 全体的な質感の向上に加え、先進の安全運転システムである「ホンダセンシング」も標準装備。

 さらにはインターナビも全車に搭載するなど、3代目は「コストパフォーマンスに優れたエコカー」というこれまでのイメージから「高機能かつ上質なスポーティセダン」へと大きく印象を変えました。

 しかし、結果としてこの方向転換がユーザーのイメージとのズレを起こしてしまったようです。

 ホンダ販売店は次のように指摘します。

「『プリウスのライバル』というイメージの強かったインサイトですが、3代目になって質感の向上や機能の充実が図られた結果、ベースグレードでも335万5000円。

 最上級グレードになると372万9000円という価格帯となってしまいました。

 おおむね300万円前後のプリウスと比べると、インサイトの割高感が目立ってしまっているのが現状です」

 3代目インサイトは、必ずしもプリウスを直接のライバルとしているわけではありませんが、かつての関係が、現在もユーザーの心理に残ってしまっているようです。

 また、ホンダの主力市場である北米を意識した横幅の広いセダンというパッケージングも、ユーザーが敬遠する一因となっているようです。

 ただ、世界的に見ればミドルサイズのハイブリッドセダンはまだまだ需要があります。

 日本では、2021年に11代目となった「シビック(ハッチバック)」のハイブリッド車が2022年に登場することが予告されているため、SNSでは「インサイトの代わりにシビックが出てくるのか」と納得する声も見受けられます。

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 そうしたなかでホンダは、2040年までにすべてのモデルを電気自動車(EV)もしくは燃料電池車(FCV)にすることを宣言しています。

 2040年に向けて、今後多くのEVやFCVが登場することが予測されますが、それらのモデルにはインサイトの技術が活かされることになるのは間違いないでしょう。

 ハイブリッド車がめずらしくなくなった今、役目を終えつつあるインサイトですが、そういった意味で、ホンダにとっては極めて重要な1台であるといえそうです。