AT車に乗っている際、「停車中にNレンジにすると燃費が向上する」という噂は本当なのでしょうか。

信号待ちで「N」にしてたらガソリンを節約できる?

 クルマをよく運転する人のなかには、燃費を良くしたいと考える人も多いでしょう。
 
 では、巷で噂されている「AT車の信号待ちなどでNレンジ(ニュートラル)にシフトを入れておく」という燃費向上の噂はどれほどの効果があるのでしょうか。

 燃費を良くする方法としては、例えば、急アクセル・急ブレーキにならないように「急」が付く操作をしないことや、荷物を減らして積載量を減らすなどの方法が挙げられます。

 最近のクルマのなかには、信号待ちなどの停車時に、エンジンが自動で停止する「アイドリングストップ」の機能が搭載されていることもあります。

 アイドリングストップではエンジンが駆動していないため、燃費の消費を抑えることができるうえに、排気ガスも出ず、エコとされています。

 そんななか、燃費向上のひとつとして、信号待ちといった停車の際に、Nレンジに入れておくと良いという噂があるようです。

 都内の自動車販売店の整備士は、ニュートラル時の燃費向上について「ほとんど変化はない」としつつ、以下のように話します。

「そもそもニュートラルの状態では、エンジンが停止しているわけではありません。

 そのため、車内空調などを使用していない場合でも、エンジンは稼働しているので多少の燃料消費は起こります」
 
 ニュートラル時のエンジンの状態は、AT車よりもニュートラルを使用する機会が多いMT車でイメージしたほうがわかりやすいかもしれません。

 例えば、マニュアル車で信号停止時にシフトをニュートラルにし、サイドブレーキを引いておくと想定します。

 1速に入れた場合とニュートラルに入れた場合では、エンジン音や車内空調などにはなんの変化も起こりません。

 また、ニュートラルの状態でアクセルペダルを踏むと、エンジンの回転数は上がるもののクルマは動きません。

 このことから、ニュートラルはエンジンの稼働には関わりがないことがうかがえます。

 また、アクセルを踏んでも前進・後退しないことから、ニュートラルの状態では、エンジンとタイヤなどの駆動系が分断された状態にあることもわかります。

 つまり、前述したアイドリングストップと異なり、ニュートラルではエンジンを停止させる効力がないため、特に燃料消費とは関係のないものであるといえます。
 
 当然ながら、クルマはエンジンの稼働にガソリンを使用しているため、エンジンが停止されないニュートラルの状態で燃料が消費されてしまうことは当たり前です。

 前述ではMT車を例としましたが、これはトランスミッションに関係なく共通する内容です。

 信号待ちなどの停車中にニュートラルを使用しても、燃料の節約は期待できないと考えて良いでしょう。

むしろ「N」にしないほうが良い?

 ニュートラルの状態では、エンジンの動力がタイヤに伝わらないものの、タイヤ自体をロックしているわけではないため、クルマのタイヤを文字道り「転がす」ことは可能です。

 そのため、上り坂でニュートラルにして、そのままブレーキペダルから誤って足を離してしまうと、クルマが後ろ向きに後退してしまう危険性が考えられます。

 ドライブであればクリープ現象で前に進む力が働くため、上り坂で足を離してしまってもよほどの傾斜でない限りは、クルマが後ろ向きに進むことはないでしょう。

 基本的に停車中はブレーキを踏んでいることが当たり前であるため、そのような事態に陥る可能性は高くないかもしれませんが、もし、なんらかの要因によって停車中にニュートラルを使用する機会がある場合には注意したほうが良いでしょう。

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「燃費に影響がなく、使用も推奨されていないのであれば、AT車にニュートラルは必要ないのでは?」と考える人もいるかもしれません。

 ニュートラルが有効的に活用されるのは、クルマにトラブルが発生し自走できなくなった場合です。

 牽引車両にレッカーされる際、タイヤが転がらなければクルマを牽引することができません。

 そうした事態が発生した際には、タイヤをフリーな状態にできるニュートラルが求められるといえます。