背の高い軽スーパーハイトワゴンが人気を集めるなか、ジャンルの異なるダイハツ「ムーヴキャンバス」も着実に販売台数を伸ばしています。根強い人気の理由について探ります。

軽自動車の新たなトレンドを開拓した「ムーヴキャンバス」の功績は大きい

 現在、軽自動車販売の主流となっているのは、ホンダ「N-BOX」やダイハツ「タント」に代表されるような、後席にスライドドアを備えた背の高い軽スーパーハイトワゴンのカテゴリーです。
 
 一方でこのトレンドにマッチしないながら人気を博しているのがダイハツ「ムーヴキャンバス」です。どこが違うのでしょうか。

 全高1700mm以上が分類される軽スーパーハイトワゴンのジャンルでは、ホンダ「N-BOX」やスズキ「スペーシア」、ダイハツ「タント」など、各社を代表する人気モデルがしのぎを削る超激戦区となっています。

 軽スーパーハイトワゴンの魅力は、背の高さがもたらす広い室内にあります。小学生3年生くらいの児童なら室内で立って着替えができるほど。

 後席左右には広い開口部を持つスライドドアを備えることでチャイルドシートの乗せ降ろしにも便利なうえ、抜群の乗降性も誇ります。

 年々動力性能が向上したことも相まって、コンパクトカーなどの普通車から乗り換える人も増加中。

「これ1台で十分だ」と考える子育てファミリー層を中心に、絶大な支持を集めています。

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 しかし後席にスライドドアを備える軽乗用車は、なにも軽スーパーハイトワゴンだけではありません。

 ダイハツは2016年9月、新型「ムーヴキャンバス」を軽自動車市場に投入しました。主なターゲットは、親世代と同居する独身女性です。

 しかも母娘で共有して利用することも想定し開発されたというのが、従来にない新しい視点でした。

 タントなどの軽スーパーハイトワゴンが絶大な支持を集める前の1990年代後半から2000年代前半までは主流だった、少し背の高い軽ハイトワゴン「ムーヴ」をベースにしながら、新型ムーヴキャンバスは全く趣きの異なる内外装デザインとしています。

 タントの全高1755mmに対し、ムーヴキャンバスの全高は1655mmと、グッと低めに抑えられています。

 幅広い世代から支持を集めそうなレトロなムードの外装デザインはかわいらしく、さらにナチュラルで明るい印象のインテリアも飽きのこない雰囲気です。

 そして最大のみどころが、背の低いムーヴクラスではあまり採用例がなかった後席スライドドアにあります。

 例えば、母娘で郊外のアウトレットモールに出かけたくさんの買い物をした帰り、洋服やバッグなど大切な手荷物は、トランクではなく後席に置きたいものです。

 そんなときに役立つアイテムが「置きラクボックス」。後席の足元下から収納ボックスが現れるというものです。

 しかも、ボックスの中敷きは立ち上がる構造になっていて、背の高いトートバッグなども支えられるようになっているなど、ユーザーの使い勝手を良く考えた設計となっています。

 そして手荷物でいっぱいな時、ワンタッチ操作でオープンする電動スライドドアが手助けしてくれます。

 混み入った駐車場でも後席側にサッと荷物を積み、スピーディに乗降を済ませることができるという訳です。

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 登場以来、ムーヴキャンバスはダイハツの予想を超える人気を集めました。

 新型デビューからおよそ5年が経過した2021年度(2021年4月から2022年3月)の軽自動車販売ランキング(全軽自協調べ)でも、軽スーパーハイトワゴンがひしめくなか、ムーヴシリーズは堂々4位にランクインしています。

 しかもムーヴキャンバスは、シリーズ販売の60%前後を占めているといいます。

 これまで女性ユーザーを主なターゲットとしたカワイイ系の軽自動車といえば、スズキ「ラパン」に代表される全高1500mm級で背の低い小ぶりなモデルが主流でした。

 対するムーヴキャンバスは、ラパンよりは背の高いハイトワゴン系です。新たに後席スライドドアも加えたことで、実用性も大幅に高めています。

 見た目のかわいらしさに加え、使い勝手の良さもしっかり兼ね備えているムーヴキャンバスは、いままでにない魅力をプラスした新鮮なモデルと映ったのです。

 これまで家族でミニバンの実用性に慣れ親しみ、厳しい選択眼を培ってきた独身女性や母親層たちのニーズにもハマり、デビュー6年目の2022年上半期も着実に売れ行きを伸ばしています。

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 ムーヴキャンバスの安定した人気ぶりを受け、ライバルのスズキも、ムーヴの対抗車「ワゴンR」をベースにデザインを一新させた「ワゴンRスマイル」を2021年9月に市場投入しています。

 丸いヘッドライトに代表されるかわいらしいデザインや、後席のスライドドアの採用など、ムーヴキャンバスに真っ向勝負をかけていることがわかります。

 全高1700mm以下が分類される軽ハイトワゴン系のスライドドア市場の規模は、今後もさらに拡大していきそうです。

 この勢いが続けば、いずれホンダや日産などからも、ムーヴキャンバス対抗の軽ハイトワゴン車が登場する可能性も出てきます。王者ムーヴキャンバスの動向から、ますます目が離せそうにありません。