中央道の渋滞ポイントとしてかつてよく聞かれた「鶴川大橋」の名前は、その後ほとんど耳にしなくなりました。何が変わったのでしょうか。

かつて中央道の鶴川大橋が渋滞していた原因

 中央道は、東京と愛知を結ぶ高速道路です。2022年11月には全線開通40周年を迎えます。

 高速道路といえば週末や大型連休の渋滞が印象的ですが、中央道も例外ではありません。特に上野原IC〜大月JCT間にある鶴川大橋(山梨県上野原市)は、下り線のボトルネックになっていました。

 ラジオやテレビの交通情報では、毎週末のように「中央道は鶴川大橋を先頭に渋滞◯km……」とアナウンスされていたため、印象に残っている方も多いでしょう。

 しかし、2022年現在では、交通情報で鶴川大橋の名前を聞くことはほとんどありません。何が変わったのでしょうか。

 中央道下り線のボトルネックだった鶴川大橋ですが、その原因は主に「サグ部やトンネル」と「交通量に対する車線の少なさ」の2つでした。

 まず「サグ部やトンネル」についてです。中央道は、関東平野から山梨県の甲府盆地にかけて山岳地帯を通過しています。鶴川大橋付近もこの区間に含まれていますが、東京から山梨に向かう場合、鶴川大橋までは緩やかな下り坂(マイナス0.3%)ですが、橋を過ぎるとすぐに最大5%もある上り坂に差し掛かります。

 下り坂から上り坂に切り換わる場所はサグ部と呼ばれ、そこを走るクルマは上り坂に入ったと気付かず、走行速度が無意識に下がるケースも少なくありません。

 走行速度が低下すると後続車との車間が詰まり、後続車がブレーキを踏みます。すると、さらに後ろのクルマもブレーキを踏み、これが連鎖して渋滞が発生するのです。

 交通集中による渋滞の約58%はサグ部が原因といわれており、鶴川大橋の渋滞もこれが最大の原因でした。

 また、鶴川大橋を過ぎた先の上り坂の先には複数のトンネルがあります。

 トンネルに差し掛かると、入口の暗さや圧迫感で無意識に走行速度が低下するクルマがいます。これによりサグ部と同様のメカニズムで渋滞が発生するため、鶴川大橋は渋滞の名所といわれていました。

 次に「交通量に対する車線の少なさ」についてです。中央道の上野原IC〜大月JCT間の交通量は、平成以降、1日あたり5万台前後で推移しており、そのうち20〜30%はトラックなどの大型車が占めています。

 また、中央道は河口湖・富士山方面や甲府方面など沿線に行楽地が多く、土休日は平日に比べ2割程度、交通量が増える傾向にあります。

 このように利用が多いにもかかわらず、中央道は片道2車線しかありませんでした。

 そのため、下り線の上野原IC〜大月IC間は、4時間を超える渋滞が1999年の時点で年間86件、そのうち鶴川大橋を起点となっていた渋滞は47件も発生していたのです。

鶴川大橋の渋滞が解消した理由

 さまざまな問題によって渋滞の名所となっていた鶴川大橋ですが、2003年には渋滞がほぼ解消されています。

 その理由は、上野原IC〜大月JCT間の20.7kmを片道3〜4車線に拡幅したためです。

 1993年から10年かけて進めた拡幅事業で1280億円が投じられ、上野原IC〜大月JCT間は片道3車線に広がりました。

 拡幅前後(1999年と2006年)を比較すると、下り線における渋滞発生件数は97%、渋滞量も99.9%それぞれ減っています。上り線も渋滞発生件数が41%、渋滞量は55%それぞれ減少しました。

 この結果、交通情報で鶴川大橋の名前を聞くことはほとんどなくなりました。また、鶴川大橋と同様に渋滞ポイントとなっていた中野トンネル、鳥沢橋、猿橋バス停、岩殿トンネルなどの名前も、拡幅区間に含まれていたため交通情報では聞かなくなりました。

 上野原IC〜大月JCT間の車線の拡幅によって、下り線の渋滞はほとんど解消されました。しかし、上り線の渋滞は解消しきれていません。

 2022年現在、上り線のボトルネックになっているのは、相模湖IC〜八王子JCT間にある小仏トンネルです。

 拡幅事業によってかつての渋滞ポイントだった笹子トンネルや猿橋バス停などの名前は聞かれなくなりましたが、上野原IC〜八王子JCT間はいまだ4車線(片側2車線)です。

 つまり“上流”が拡幅されても“下流”は細いままであるため、そのウエスト部分である小仏トンネルに渋滞が集約される形になりました。

 この問題を解消するため、NEXCO中日本は相模湖バス停から小仏トンネル手前にかけて付加車線を追加するとともに、小仏トンネルをもう1本掘っています。2015年に事業化され、2021年にトンネル本体工事に着手されています。

 この新小仏トンネル(仮称)の開通時期はまだ発表されていませんが、開通することにより、中央道上り線の渋滞減少が期待されています。