トヨタが新型「GRカローラ」を発表し、「ホットハッチ」に注目が集まっています。VW「ゴルフGTI」の登場をキッカケに誕生したホットハッチというジャンルですが、そもそもどのようなモデルを指すのでしょうか。

ホットハッチって一体ナニ?

 トヨタ「カローラスポーツ」を高性能化した「ホットハッチ」として、新型「GRカローラ」が発表され、話題になっています。

 新型GRカローラは、通常のカローラには設定がない、最高出力304馬力、最大トルク370Nmを発揮する1.6リッターターボエンジンを搭載。

 トランスミッションはiMT(6速MT)、駆動方式はスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」を採用し、本格的なスポーツ走行が楽しめる一方、5ドアハッチバックの5人乗りという実用性も兼ね備えています。

 そもそもホットハッチとは、実用性の高さが魅力のハッチバックに、ハイパワーエンジンや引き締められたサスペンションなど高性能なメカニズムを搭載するモデルのこと。スポーツカーも顔負けの走行性能が与えられていることが特徴です。

 ホットハッチの元祖とされているのが1976年6月に発売されたVW初代「ゴルフGTI」です。

 しかし、同年1月にルノー「5アルピーヌ」が登場していますし、それ以前にもアウトビアンキが「A112アバルト」(1973年)、ホンダが「シビック1200RS」(1974年)が登場しており、ゴルフGTIは厳密には元祖とはいえないのですが、ホットハッチを人気のジャンルにした立役者という意味で元祖的存在になっています。

 実際、ゴルフGTIのヒットを受けて欧州ではにわかにホットハッチブームが起こり、各メーカーから続々とフォロワーが登場。

 以降、ホットハッチは世界中で定番ジャンルとなり、ほとんどのハッチバック車には高性能なスポーツモデルがラインナップされるようになり、現在にいたるまで数多のホットハッチが誕生しました。

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 ホットハッチは大まかに4つの系統に分けることができます。

 1つめが「プラスアルファ系」で、初代ゴルフGTIやプジョー「205GTI」、ホンダ「フィットRS」、スズキ「スイフトスポーツ」など。

 排気量アップやツインカム化、あるいは過給機の装着などでパワーアップはしていますがベースモデルの延長線上にあり、性能はあくまでもプラスアルファなレベルのスポーティグレードです。

 2つめは「ガチスポーツカー系」で、ホンダ「シビック タイプR」、ルノー「メガーヌR.S.」などで、ベースモデルの1.5〜2倍程度にパワーアップされたエンジンを搭載し、軽量化やワイド化が施されたボディに締め上げられた足回りを採用。

 サーキットやターマック、グラベルで本格スポーツカーやスーパーカーとタイムを競いあえるクルマです。

 3つめの「大排気量系」は、VW「ゴルフR32」やアルファロメオ「アルファ147GTA」、先代BMW「1シリーズ」のM135i/M140iが代表的なモデル。

 1.5リッターから2リッタークラスのボディに3リッター以上の6気筒エンジンを搭載し、豪快な加速性能を実現。国産車ではトヨタ「ブレイド」に3.5リッターを積む「マスター」が存在しました。

 そして4つ目が「もはや別のクルマ系」。見た目こそベース車両をイメージさせるものの中身はまったくの別物で、たとえばエンジン搭載位置や駆動方式が異なったり、プラットフォームが違うものだったりします。

 プジョー「205ターボ16」やルノー「クリオV6」、トヨタ「GRヤリス」などが該当します。

インパクトが強かった「国産ホットハッチ」

 日本が誇る国産ホットハッチにはどのようなモデルがあるのでしょうか。ちょっと古めのモデルから最新モデルまで、インパクトが強かったホットハッチを紹介します。

●日産「マーチ スーパーターボ」

 1982年に登場したコンパクトハッチの日産「マーチ」はいわゆるリッターカーで、軽自動車をラインナップしていなかった当時の日産のエントリーモデルでした。

 基本デザインを担当したのはジウジアーロ。飽きのこないシンプルなスタイリングもあって、ほとんど形を変えることなく10年間も販売された長寿モデルです。

 そして1989年に登場した「スーパーターボ」は、モータースポーツ向けの競技車両として登場した「R」を市販化したもの。フォグランプが埋め込まれたフロントグリルやパワーバルジが目立つボンネットなど、一見して特別なクルマであることがわかります。

 最大の特徴はターボとスーパーチャージャーというふたつの過給機を備える930ccのエンジンでしょう。

 現代の基準では最高出力110馬力は少々非力に思えますが、車重が770kgと軽量だったため、走りは痛快。ジャジャ馬的な側面もありましたが、多くのクルマ好きを惹きつけるホットハッチでした。

●ホンダ「シビックタイプR」

 初代モデルに「RS」グレードがラインナップされて以来、モデルチェンジしても常にスポーティなグレードを設定してきたホンダ「シビック」。

 1995年に発売された6代目モデルにもVTECエンジンを搭載する「SiR」グレードが用意されていましたが、1997年には運動性能をさらに進化させた「タイプR」が登場しました。

「NSX」「インテグラ」に続く「タイプR」シリーズの第3弾で、軽量化されたボディに185馬力の1.6リッターVTECエンジンを搭載。

 レカロシートやMOMOのステアリング、チタン製シフトノブなど、スポーツカー好きに響くアイテムが装備されていました。

 この6代目シビック以降、モデルチェンジにあわせタイプRも進化。代を重ねるごとに過激になり、2017年に登場した10代目シビックのタイプRは、ニュルブルクリンク北コースでFFの市販車世界最速(当時)のタイムを記録しています。

 なお、2022年夏に11代目シビックを高性能化した新型シビックタイプRが登場する予定です。

●トヨタ「GRヤリス」

 名称からもわかるように、「GRヤリス」はトヨタのコンパクトハッチ「ヤリス」がベースのスポーツモデルですが、中身はほとんど別物。

 ヤリスは「GA-B」と呼ばれる小型車向けプラットフォームを採用していますが、GRヤリスは「GA-B」とひとクラス上の「GA-C」を合体させた複合プラットフォームを採用しています。

 これもWRC参戦のベース車両となるべく開発されたクルマということで、ハイパワーや強い路面からの入力に耐えるために強靭な専用プラットフォームが必要とされたためです。

 GRヤリスは4グレードをラインナップ。1.6リッターターボ×6速MT×4WDの「RZ」、「RZハイパフォーマンス」、「RC」のほか、通常のヤリスと同じ1.5リッターNAエンジンを搭載し、ダイレクトシフトCVT×FFの「RS」があります。

 最高出力272馬力のターボモデルはリアルスポーツカー、1.5リッターモデルは120馬力と手頃なパワーですが、タフなシャシのおかげで軽快に走ることができます。

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 時代によりクルマに求められるものは変わり、ホットハッチもまた時代にあわせて移り変わってきた歴史があります。

 近年は、日産「ノート オーラ NISMO」やホンダ「フィット e:HEV モデューロX」など、ハイブリッド車にのスポーティグレードが設定されるなど、ホットハッチもエコにシフトしています。

 ルノーは2024年に「5」をEVで復活させると発表しており、新しいホットハッチの登場にワクワクさせられます。