デビューから年月が経過しても、地道に売れ続ける「ロングセラーカー」があります。日産の現行「エクストレイル」もそんな1台です。人気の秘密を探ってみました。

歴代「エクストレイル」の4WD車比率は一貫して8割を占める

 街中を歩いていたり、ドライブしているときに「そういえばよく見かけるなぁ」と気が付くクルマはいくつもあります。話題の最新モデルばかりではなく、地道にコツコツと販売台数を伸ばし「実は売れている」ロングセラーカーもそのひとつです。
 
 このようなロングセラーが誕生する背景には、一体どんな秘訣や魅力があるのでしょうか。
 
 取り上げるのは、日産のミディアムクラスSUV「エクストレイル」(T32型・3代目)です。

 思い返してみれば、エクストレイルの歴代モデルは街でも郊外でもよく見かけます。

 エクストレイルの初代(T30型)は2000年に発売され、手に届きやすい価格帯のスポーツ四駆として人気を博しました。

 外観は、アウトドアなどでしっかり使えそうなタフネスさを想像させるスクエアなデザインです。

 初代エクストレイルは、当時としてもやや古典的な無骨さが特徴でしたが、“タフギア”を全面に推したCM戦略と相まって、むしろおしゃれでかっこいいと受け入れられ、たくさんのファンを生んだ大きな要因となりました。

 続いて2007年にフルモデルチェンジした2代目(T31型)エクストレイルは、初代が人気だったこともあり、そのコンセプトを活かしながら進化を遂げました。

 しかし現行モデルの3代目からは、これまでのスクエアで無骨なデザインからガラッと変更して、現代の日産車デザインに合わせるようにスタイリッシュなシルエットになりました。

 発表当時、初代や2代目のエクストレイルファンを中心に、その路線変更を肯定的に捉えない意見もあったようですが、実は販売台数では3代目エクスレイルが歴代でもっとも売れているモデルです。

 エクストレイル各世代の国内での販売台数は、初代T30型が約19万台、2代目T31型が約21万台、3代目T32型が約34万台(2022年5月までの統計/日産調べ)となっています。

 8年以上続く販売期間の長さも台数が伸びた理由のひとつだとは思いますが、世の中のSUV人気の盛り上がりも、販売増の追い風になっていました。

 日産の担当者に聞いたところ、現行型エクストレイルの購入者層は、他社からの乗り換えや新規購入よりも、エクストレイルからの乗り換えの割合がもっとも多いそうです。

 ちなみに4WD比率はおよそ80%とのこと。エクストレイルは2WD(FF:前輪駆動)モデルも選択できるのですが、この比率は3世代通じて変わらないというから驚きます。

 3代目でデザインは変わっても、エクストレイル本来のタフギアとしてのイメージや使い勝手が引き継がれているからこそ、これまでのユーザーも「やっぱり“四駆の”エクストレイルから離れられない!」と考えている人が多いのかもしれません。

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 私自身もその魅力を体感してみようと、改めて現行型エクストレイルに試乗してみました。

 現行型のデザインは、これまでの四角く無骨なデザインから現代的になったと先に書きましたが、今のデザインもこれはこれで別種のたくましさがあって、“タフギア”を求める人たちが気に入るのも分かるような気がします。

 また、荷室を開いてみると、そのスペースの広さには驚きました。

 3列シートの7人乗りモデルも設定されている(ハイブリッドには未設定)ので、自分の使い勝手にあわせて、荷室のスペースや乗車人数を選べるのもいいですね。

 5人乗りモデルなら、キャンプやウィンタースポーツなどを楽しむ人は、荷物の容量を考えなくても何でもポイポイ放り込めるくらい広々としたスペースがあります。

 しかも床面は樹脂製フロアになっていて、あまり気をつかわず積めそうです。

走りも使い勝手も安全性も…現行型「エクストレイル」は全方位で抜かりがなかった

 運転席に乗り込んでみると、いたってシンプル! インテリアは高級感よりも、ガシガシ使えるようなギア感が高い印象です。

 試乗したのは「20Xi レザーエディション Vセレクション」(2列)で、消費税込み価格は325万6000円。

 300万円台の価格帯にしては、内装にソフトパッドよりもハードな樹脂パーツが多用されていて、ちょっぴり簡素な内装にも思えます。

 でも汚れたら簡単に拭き取れそうなところが、エクストレイルらしいといえばエクストレイルらしい。このあたりの商品戦略も上手だなぁと思いました。

 現行型エクストレイルにはハイブリッドも用意されていますが、今回乗ったのは2リッター4気筒ガソリンエンジンを搭載した電子制御4WDモデルでした。

 センターコンソールに切り替えスイッチがついていて「AUTO」「2WD」「LOCK」(悪路向け)と走行モードを切り替えることができます。

 オフロードを走らず、常時2WDモードで一般道や高速道路を走行してみたところ、実燃費は燃費メーターの表示が15km/L前後で推移していました。このサイズのSUVとしては優秀な燃費ですし、ハイブリッドならさらに燃費が伸びそうです。

 そして何より乗ってみて驚いたのは「運転のしやすさ」でした。

 乗り込んでみると、背の高いクルマらしく視界は開けています。

 全長4690mm×全幅1820mm×全高1740mm(ガソリン車・4WD)と、どちらかと言えば大きめなボディサイズなので、街中で運転するともっと窮屈に感じるのかなと思いましたが、思いのほか取り回しは良好です。

 初代のエクストレイルは、クルマの四隅が分かりやすいようにデザインされたと聞きましたが、それが3代目にも受け継がれているのか、その大きさを意識するシーンはほとんどありませんでした。

 ハンドリングはキビキビしているタイプではありませんが、もっとコンパクトなSUVを運転しているときくらい自然な動きで、気負わずに運転できます。

 高速道路を走っているときにも、エンジンのトルクが低速から中速までしっかり出てくれるので、どんなシーンでもスムーズに加速できます。

 エクストレイルには「インテリジェント エンジンブレーキ」と「インテリジェント トレースコントロール」というシステムがあり、カーブを曲がる際に、エンジンブレーキで速度調整したり、ブレーキ制御でより曲がりやすくなっているそうです。

 こうした走行安定性を補助するシステムが導入されていることもあって、コーナリングで大きく膨らんだりせずに安定して走れることも、全体的な運転のしやすさにつながっていると感じました。

 さらに2017年以降には、高度運転支援システムの「プロパイロット」も搭載されたので、高速道路での運転がより楽になったことも大きなポイントです。

 現行型エクストレイルに採用されているのは、いわゆる「プロパイロット1.0」なので、最新EV「アリア」のようなハンズフリーはできませんが、前車の追走やアクセル/ブレーキ/ハンドルのサポートなどがあるので、ロングドライブで疲れている時や渋滞時は本当に重宝します。

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 エクストレイルといえば、4WD性能が高く、オフロードやアウトドアなどアクティブな用途で積極的に使われる“タフギア”のイメージが強いですが、今回改めて現行型エクストレイルに乗ってみて、普段の使い勝手もとても良いところに人気の秘訣があるのではないかと実感しました。

 人も荷物もたっぷり入るうえに、取り回しも十分良く、4WD性能も高いけれど、燃費も悪くない……。

 いくらアウトドアが好きな人でも、さすがに毎日キャンプに行ったり、山や川に行ったりする人は多くないはず。

 やはり一番長く運転する街中や高速道路での運転のしやすさはとても大事なことです。そして、いざという時には、4WDの性能をいかんなく発揮!

 全方位で抜け目のないタフなSUVだからこそ、現行型エクストレイルはここまでの人気を誇ったのかもしれませんね。

 すでに海外では4代目の新型エクストレイルが発表されています。34万台もの現行型ユーザーも、きっと新型の登場を待っているに違いありません。

 新型が日本に導入された際には、さらなる人気を呼ぶモデルとなりそうです。