クルマに搭載されている変速機(トランスミッション)には様々な方式が存在しますが、なぜ国産車には「CVT」が多く採用されるのでしょうか。その理由を考察します。

「CVT」を採用するメリットとデメリットとは?

 クルマにはギア付きの自転車と同様に変速機(トランスミッション)がエンジンに組み合わされています。

 エンジンのトルク(力)や回転数を、走行条件に合わせ調整しタイヤに伝えるためです。

 クルマの変速機には大きくわけて2種類あります。

 変速動作を、ドライバーが手動で行う「MT(マニュアル・トランスミッション)」と、クルマ側が自動的に行う「AT(オートマチック・トランスミッション)」です。

 ATにもまた複数の変速タイプが存在しますが、今回は現行販売されている国産車に多い、「CVT(Continuously Variable Transmission:連続可変トランスミッション)」と言われるタイプの変速機について解説いたします。

 現在、クルマに使われている主なCVTは「ベルト式CVT」というタイプに入り、従来のギア式トランスミッションとは違い、金属のベルトやチェーンなどでプーリーの径を変えることで変速を行います。

 プーリー径を連続的に変化させることが可能なため、ギア式で発生する変速時の切り替えが無くなり、低速側(ローギア)から高速側(ハイギア)までシームレスな変速が可能な変速機となります。

 古くは1958年にオランダ自動車メーカーDAFが発売した小型車「DAF 600」に、ゴムベルト式無段変速システム「ヴァリオマチック」を遠心式クラッチと組み合わせ採用されていました。

 その後は1970年代にファン・ドールネ式CVTといわれる耐久性の高いスチールベルト式CVTが開発され、スバル、日産、フィアットなどが採用。その後も改良を重ねながら日本メーカーを中心に広く普及し、CVTの代表的方式となりました。

 一方、金属ベルトもチェーンも用いない、トロイダルCVTという方式もあり、こちらは2つのディスク(入力ディスクと出力ディスク)に挟まれたパワーローラベアリングを傾転させることにより、入力・出力ディスクとの接触点の回転半径を変化させることで変速します。

 滑らかで大トルクにも対応できる変速機ですが、コストが高いため現在の主流はベルト式またはチェーン式CVTとなっています。

 CVTのメリットは、小排気量車のように非力なクルマの走行性能と燃費を両立させる事です。

 変速比もギア式よりも幅広く取る事が容易なため、限られたエンジン出力を最大限に引き出し、かつ低燃費となる制御がおこないやすくなります。

 また同規模の変速幅を持つギア式ATと比べ、比較的低コストで製造することが可能なため、車両価格を抑える事ができます。

 そのため、現在の販売されている軽自動車に搭載されているATは、ほぼCVTになっています。

 一方でCVTは大排気量車のような高出力車を苦手とします。金属ベルトやチェーンをプーリーに押し付けて変速を行うのがCVTですが、エンジンからの出力が高くなるにつれ金属ベルトがスリップし、動力の伝達ロスが発生しやすくなります。

 抑えつける力を高くすれば良いのですが、大元の油圧ポンプもサイズアップせねばならず、エンジンの出力損失も招く事になり燃費悪化に繋がります。

日本の道路環境とCVTは相性が良い!? その理由とは

 現在日本では、軽自動車だけでなく、コンパクトカーやミニバン、SUVにもCVTが主流となっています。

 CVTは変速幅が広く緻密なエンジン回転制御が可能です。

 日本の市街地のようにストップ&ゴーが多くなる場所においても、エンジン回転変動を均し、効率の良いエンジン回転領域を維持しながら走ることができ、燃費の悪化を低減できる変速機となります。

 逆に速度が一定になる高速道路や交通量・信号の少ない大きな幹線道路などの使用が多いと、CVTの緻密な制御も不要となるため、伝達効率に優れたギア式のMTやATが有利となります。

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 現在世界の自動車市場は、カーボンニュートラル社会の実現に向け、電動化にシフトしつつあります。

 電動化の代表格であるEV(電気自動車)は基本的に変速機の必要性が薄く、あっても少ない段数に留められています。

 変速幅が少なくて済む場合、ギア式で事足りてしまうため、EVが普及すれば将来的にはCVTの採用も減少していくと考えられます。

 とはいえハイブリッド車も含め、エンジンを主な動力とするクルマも、当面は併用されていくとみられます。CVTがいますぐ姿を消してしまうことはないでしょう。