デビューから年月が経過しても、地道に売れ続ける「ロングセラーカー」があります。ホンダ「フリード」もそんな1台です。人気の秘密を探ってみました。

「ステップワゴン」との違いは「より若い客層」と「女性支持率の高さ」にあり

 街中を歩いていたり、ドライブしているときに「そういえばよく見かけるなぁ」と気が付くクルマはいくつもあります。話題の最新モデルばかりではなく、地道にコツコツと販売台数を伸ばし「実は売れている」ロングセラーカーもそのひとつです。
 
 このようなロングセラーが誕生する背景には、一体どんな秘訣や魅力があるのでしょうか。
 
 取り上げるのは、ホンダのコンパクトミニバン「フリード」(2代目)です。

 初代フリードは、5ナンバーサイズのコンパクトなボディながら、2列シートの5人乗りのほか3列シートの7人/8人乗りを備える画期的なモデルとして、2008年に登場しました。

 フロアボードの高さを簡単に変えることのできる反転フロアボードや、荷室に設置される多機能のポケットやトレイ、ビルトインテーブルなどを備えるリアサイドユーティリティなどによって、コンパクトながらも幅広い用途に使えるモデルとして人気を博しました。

 そして、現行モデルである2代目もその初代のコンセプトを引き継いでいます。5ナンバーサイズを維持しつつ、スライドドアの開口部を広げたことで乗降性が向上し、左右のシート間が広がったことでウォークスルーもしやすくなっています。

 さらに、2代目には「フリード+(プラス)」が設定されました。

 フリード+は2列シートの5人乗りとしたことで、荷室の使い勝手の幅がより増えているモデル。荷室フロアをさらに低床化することで、ユーザーからの要望があった26インチの自転車を2台積載できるようになりました。

 2列目のシートを折りたたんでユーティリティボードと繋げれば、フルフラットな空間が作り出せるので、車中泊を想定している人などにはぴったり。

 またフリードに対してリアの設計を見直したことで、リアゲートの開口部が広がり、荷物の載せ下ろしがしやすくなったり、ユーティリティボードで荷室を分割できたりと、様々な用途にも対応できる柔軟性を備えています。

 また低い床は、車いすを搭載できる福祉車両への展開も容易にしています。高齢化社会までを見据えた設計に、さすがと唸らされます。

「コンパクトとはいえ、客層はステップワゴンなどのミニバンと同じなのかな」と思っていましたが、少しずつ違うようです。

 ホンダ広報部に確認したところ、基本的には、いずれの車種も子育てファミリーのユーザーが多いものの、ステップワゴンは30代から40代メインなのに対し、フリードは20代から30代と若い世代が多く、女性オーナーの比率は、ステップワゴンが3割に対してフリードは4割と高い比率になっているとのことでした。

 子育てをスタートした世代にとっては、利便性の高い使い勝手のほかに、200万円台前半からというお手頃な価格帯もフリードを選ぶ大きな要因になっていそうですね。

 改めてフリードのパッケージングを見てみると、3列シートが装備されているうえに取り回しのしやすい5ナンバーサイズ、両側電動スライドドア、多彩なシートアレンジ、さらにハイブリッドモデルも設定されていて、「子育て世代がまさに欲しい!」というニーズにドンピシャに当てはまっています。

 最近の軽自動車も使い勝手や室内空間はどんどん拡大していますが、3列シートでいざという時に大人数が乗車できるのがフリードの強みになっているようです。

 初代の発売から毎年コンスタントに約5万台から10万台売れ続けているという人気ぶりもうなずけますよね。

 ホンダの調べによると、歴代のフリードシリーズは2022年5月末現在で累計107万2416台が売れているといいます。

日常使いにうれしい「視界の良さ」「気軽に乗れるサイズ感」に改めて感心

 実際に筆者(伊藤梓)もフリードを運転してみたのですが、運転席に座ってみると、とにかく視界が広いことに感心しました。

 着座位置が高いことに加えて、フロントウィンドウが上下方向に広いので見切りが良く、安心感があります。さらにAピラーに設置される三角窓のおかげで、斜め前方もきちんと確認できるところが◎です。

 先進安全装備も大切ですが、クルマの安全性として意外に見落とされがちなのが、視界の良さや死角の少なさ。

 まず自分の目で安全を確認できることが何よりも大切なので、特にお子さんを乗せる子育て世代は、周囲の安全をしっかり確認できるフリードのようなモデルは安心して使えると思います。

 私自身、アクティブな趣味を持っているわけではないうえに独身なので、フリードの多彩なシートアレンジの上手な用途が思い浮かばないのですが、東北の田舎出身者としては、コンパクトながら自転車を簡単に積載できるところはすごいと思いました。

 田舎では学校に自転車で通うことも多く、急な天候の変化のためにクルマで迎えに来てもらって自転車を載せるシーンというのは想像以上にたくさんあります。

 多人数乗車可能なシートレイアウトを備えながらも、積載などのアレンジニーズにも細やかに応えているところはさすがのひとこと。

 実際に運転してみると、小柄で小回りも効いているので小道でもスイスイ入って行ける気軽さがあるし、軽い操作感で運転できるので女性ユーザーが多いのも納得です。

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 フリードはクルマの使いやすさに全振りしていると言ってもいいので、運転に関して細かく「ドライビングフィールがうんぬん……」と語るクルマではないと思いますが、新型ステップワゴンでは質感の高い走りが実現していたので、次世代のフリードもステップワゴンやフィットくらいしっかりとした走りが実現できれば、さらに安心して楽しく使えるモデルになる予感がします。

 SNSなどで次期型フリードの噂を見聞きする限り、フィットなどと同様にセンタータンクレイアウトになるとか。いま以上に広く使い勝手の良い室内空間が生まれて、さらに幅広い用途として使えるモデルになりそうですね。