国の特例措置による実証実験がおこわれるなか、電動キックボードによる全国初の死亡事故が東京都内で発生し、大きな波紋を呼んでいます。電動キックボードの特性を踏まえつつ、一般的な自転車と比較しながら、今後の安全対策について改めて考えます。

今後も増える可能性が!? 「電動キックボード」の事故について考える

 2022年9月25日の夜、電動キックボードによる全国初の死亡事故が東京都内で発生しました。
 
 国の特例措置による実証実験がおこわれるなかでの重大事故に対し、任意装着とされるヘルメットを非装着であったことや、運転者に飲酒の疑いがあることなどから、大きな波紋を呼んでいます。
 
 電動キックボードの安全対策に落ち度はなかったのでしょうか。

 実証実験真っ最中の電動キックボードで初の死亡者が出たことで、大きなニュースになっています。

 多くのメディアは、単なる事故の情報として報じているだけですが、電動キックボードの規制緩和により、今後この手の事故は急上昇していく可能性が極めて高いとみられます。

 こういった事故を「単なる事象」とせず、今後の安全を考えるべき材料にすべきだと考えます。

 まず今回の事故について判明していることを踏まえ、状況を振り返ってみましょう。

 事故を起こした電動キックボードは大手レンタル会社のもので、国が特例を認めており合法的に公道走行可能なものです。

 定格出力が0.60キロワット以下の電動キックボードは、本来の道路交通法上なら第一種原動機付自転車に該当します。

 ただし国の措置により道路交通法施行規制の特例が認められ、小型の耕耘機などと同じ「小型特殊車両」という位置づけとされています。

 小型特殊自動車は、普通免許を持っていれば運転出来ます。

 小型特殊のためヘルメットの強制装着義務は無く(着用は任意)、最高速度は時速15km。

 もちろん交通法規は遵守する必要があり、当然ながら飲酒運転も道交法違反になります。

 ちなみにレンタル車は最高速度15kmの速度リミッター付きです。今回のケースもマンションの駐車場内で発生した事故だといい、人間が走るより遅い速度で発生した事故だと推察されます。

 とはいえ、前提条件としてあげておきたいのは、電動キックボードは操縦安定性が極めて低いという特性についてです。

 筆者(国沢光宏)自身も電動キックボードを所有しているので、その点はよく実感しています。

 電動キックボードのルーツは、みずからの足を使って動かす遊具のキックボードにあります。

 生い立ちからして「安定性」を重視していない乗り物で、移動の道具として進化してきた自転車とは全く違う立ち位置にあります。

 広い場所でまっすぐ走るのならそれほど難しくないものの、狭い道路など限られたスペースでの「曲がる」「止まる」に代表される操縦性能は、自転車より圧倒的に低いレベルにとどまります。

 今回の事故は、駐車場内にあるクルマ止めの縁石で転んだと報じられています。

 運転者が酔っていたという一部報道もありますが、小さいミスで転倒することなど普通にあり得ます。

 私が所有している電動キックボードですら、貸した際に転んだ人は二桁くらいいます。

 今後も電動キックボードが増えるに従って、転倒事故は増えておくと考えておくべきでしょう。

 自転車で転んだことのある人なら、電動キックボードだとはるかに高い確率で痛い目に合うはずです。

転んで危険なのは「自転車」も同じだが「事故リスク」の高さは異なる

では、転んだ時の危険性はどうでしょうか。

今回、時速15kmしか出ない電動キックボードでした。自転車なら普通に時速20km以上出すでしょうから、ヘルメット着装無しで転んだ時の危険度は、同等だといえます。

 ただTV報道などは、死亡した運転者がヘルメットを着装していなかった点を強調しています。

 確かにヘルメットを着装していれば、大きな問題にはならなかったと思われます。おそらく「転んじゃった」という笑い事で済んでいたかもしれません。

 ただヘルメット着装が望ましいのは、全国で年間400人ほど死亡している自転車の乗員も同じです。

 事故を起こした時の危険性で考えたら、電動キックボードだって自転車と同じだからです。

 だからこそ警察はヘルメットを義務付けませんでした。1事故あたりの危険性を判定すればその通りだと思います。

 しかし電動キックボードは前述の通り操縦安定性が極めて悪く、当然ながら事故も多いだろうと推測されます。

 考えてみてください。

 東京都内には、少なく見積もっても1000万台程度の自転車があります(東京の自転車普及率70%から推算)。

 その台数のうち、昨年2021年の自転車による死亡事故者は、警視庁の統計によると18人となっています。

 一方、電動キックボードの保有台数は1万台以下かと推察されます。加えて、本格的に増えてきてからまだ1年くらいしか経っていません。

 ここから算数です。今回の1人を特殊な例だと考えたとします。

 自転車と電動キックボードの死亡率が同じだとすれば、2人目の死亡事故が起きるのは50年から100年後ということになります。

 逆に考えたら、1年後に次の死亡事故が起きたら50倍から100倍危険だということです。

 そして前述の通り、事故が起きた時の死亡率は自転車と変わりません。

 これらの仮説をもとにすれば、電動キックボードは事故そのものを起こす可能性が高い、ということになります。

※ ※ ※

 総合して考えると、基本的に自転車より50倍から100倍事故を起こしやすい可能性のある乗り物に対し、再度忖度しない識者の意見を聞き、安全対策を早急に実施すべきだと考えます。

 そして今回の事故を受け、あらためて確認すべきは、自転車よりはるかに事故を起こしやすい乗り物に乗るときは、ヘルメットの着装を強く強く推奨しておきたい、という点でしょう。