クルマは「家の次に高い買い物」といわれるほどの高額商品ですが、中古車販売店に並ぶクルマを見ると、「ASK」「応談」「P.O.R.」という表記を見かけることがあります。価格が表記されないことにはどのような理由があるのでしょうか。

中古車店の「ASK表示」 なぜ価格が書かれていない?

 中古車販売店に並ぶクルマを見ると、「ASK」「応談」「P.O.R.」という表記を見かけることがあります。
 
 このような表記の場合には具体的な価格が表記されていないことがほとんどですが、どのような理由があるのでしょうか。

 基本的に、これらはいずれも「価格は担当者に尋ねてください」という意味です。

 クルマにかかわらず、商品物を買うときは価格が非常に重要なポイントになります。

 さらにいえばクルマは「家の次に高い買い物」といわれるほどの高額商品ですが、なぜ価格を表記せず、担当者に聞くように促しているのでしょうか。

「ASK」や「応談」の表記について、中古車販売店の担当者は以下のように話します。

「『ASK』や『応談』と表示している中古車は、そのほかの中古車と比較しても旧車であったり今となっては希少なクルマであることがほとんどです。

 そのため、こちら側としても本当にクルマが欲しいというお客さまに手に取っていただきたいという思いがあります。

 そういう意味では、いわゆる『冷やかし』対策という意味合いが強くあります。

 さらに、『ASK』や『応談』と表記しているクルマのなかには、非常に希少なモデルもあり、そうしたモデルのなかには、一般的な中古車と違って相場が形成されていない場合がも少なくありません。

 そのため価格を公にしてしまった場合、その価格が相場となってしまい、競合店舗やユーザーとの駆け引きの対象になってしまうおそれがあります」

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 量販車であれば、中古車オークションなどによって統計的に相場が形成されているため、相場を大きく超える価格が付けられることはほとんどありません。

 一方、流通台数の少ないモデルは、その個体の状況と購入希望者の懐事情に依存する部分が大きく、価格を公表することによるメリットはほとんどありません。

 このように、これまで「ASK」や「応談」といった表記は、希少なモデルに対して用いられることが多かったといえます。

「ASK」や「応談」が増えている?その背景とは

 一方、最近では「ASK」や「応談」という表記を用いる中古車が増えてきたといいます。

 その背景にあるのは、昨今の急速な円安です。

 2022年1月1日時点では115円41銭だったドル円相場ですが、2022年10月19日には149円81銭となるなど、短期間で30%近い変動がありました。

 中古車の一部は国外へと輸出されることから、為替の変動は中古車販売店の利益に大きく関係します。

 前出の中古車販売店担当者も「『ASK』や『応談』といった表記は、海外への販売を意識している場合によく用いることがある」と話します。

 加えて、新型コロナウィルス感染症の影響により、新車の長納期化が問題となっていることも「ASK」や「応談」が増える要因となっているようです。

 中古車のメリットといえば、かつては「新車より安い」ことが大部分を占めていましたが、現在では「新車より早く手に入ること」が最大のメリットとなっています。

 むしろ、人気モデルについては新車よりも価格が高いケースも見られるといった逆転現象も起こっています。

 ただ、量販車に対して新車を超える価格を掲示すると、時には批判の声にさらされることもあるようです。

 実際、ある中古車販売店が話題のスポーツカーに対して、新車価格の3倍近い価格を掲示したところ、SNSで炎上するということが最近ありました。

 実際には、仕入れ値自体が高額になっている場合も多いため、中古車販売店が必ずしも「暴利をむさぼっている」というわけではありません。

 とはいえ、中古車販売店としてもそうした批判の声は避けたいというのが実情であることから、あえて「ASK」や「応談」といった表記を利用する場合もあるといいます。
 
 このように、不安定な社会情勢に加えて、SNSなどでさまざまな情報が拡散されやすくなった昨今では、これまでよりも「ASK」や「応談」といった表記を利用する中古車販売店が増えているようです。

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 このように、中古車に「ASK」や「応談」と表記する背景にはさまざまな事情があります。