AT限定免許しかない人がMT車を運転した場合、「無免許運転」に該当するのでしょうか。該当する違反はどういったものなのでしょうか。

無免許運転? それとも…?

 クルマの普通運転免許には、MT(マニュアルトランスミッション)車とAT(オートマチックトランスミッション)車の両方を運転できるものと、AT車に限定して運転できる2種類があります。
 
 ではAT車限定免許しか取得していない人がMT車を運転した場合、どういった違反に該当するのでしょうか。

 MT車は、アクセル、ブレーキ、クラッチの3つのペダルがあることから「3ペダル」とも呼ばれており、クラッチを操作して手動でギアチェンジをおこないます。

 これに対し、AT車のペダルはアクセルとブレーキの2つ(2ペダル)となり、CVT(無段変速機)やDCT(デュアルクラッチトランスミッション)も含め、ギアチェンジはクルマが自動で判断してくれます。

 自動車教習所などでMT車の教習を受け、普通運転免許を取得すれば、同時にAT車も運転できるようになりますが、クラッチの操作がなく、クルマの運転が比較的簡単であるという理由からAT限定免許を取得する人が年々増加。

 警察庁が公表している「運転免許統計」によると、2020年に普通自動車第一種運転免許を受験した人は158万7700人で、そのなかでAT限定を選んでいる人は111万3229人と、全体の7割以上を占めていることが分かっています。

 また、近年新車で販売されるクルマのほとんどがAT車になっており、MT車に乗る機会がないことも、AT限定免許の取得者が増加する理由のひとつといえます。

 なお、AT限定免許の場合、運転免許証の免許の条件欄には「普通車はAT車に限る」などと記載されます。

 通常の自動車を運転するのに必要な第一種免許のうち、「8トン限定中型免許」「5トン限定準中型免許」「普通免許」「大型二輪免許」「普通二輪免許」「小型限定普通二輪免許」の6種類にAT限定免許があります。

 たとえ車両の総重量や最大積載量が同じクルマであっても、AT限定免許の場合は、ドライバーがMT車を運転することはできません。

 では、もしAT車限定の普通免許しか持っていない人がMTの普通自動車を運転した場合には「無免許運転」になってしまうのでしょうか。

 結論からいうと、無免許運転には該当せず、「免許条件違反」という交通違反にあたります。

 そもそも無免許運転は、大きく分けて7種類のケースに分類されます。

 まず「公安委員会の免許を受けていない状態で運転した場合」です。

 具体的には、普通免許しか持っていないのに大型自動車を運転する、第一種免許で第二種免許を必要とするタクシーやバスの運転をするなどのケースです。

 次に「有効期間の過ぎた免許で運転した場合」では、運転免許の更新を受けずに車両を運転すると無免許運転となる可能性があります。

 このほか、「免許の取り消しを受けた後に運転した場合」や、「免許の停止や仮停止中に運転した場合」、「免許証交付前に運転した場合」というケースもあります。免許の効力がないときには運転をしてはいけません。

 さらに、「仮免許で練習目的以外の運転をした場合等」、「期限の切れた国際運転免許証等で運転した場合」と計7つのケースが挙げられます。

 一見するとひとつ目の「公安委員会の免許を受けていない状態で運転した場合」に該当しそうですが、AT車限定の普通免許でMTの普通自動車を運転したときのように、AT車限定という条件付きではあるものの、普通自動車について公安委員会の運転許可がある場合には免許条件違反が当てはまるのです。

 免許条件違反をおこなった場合には、罰則として3か月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられる可能性があるほか、違反点数2点、普通車で7000円の反則金を科されることがあります。

 なお、無免許運転の場合は、普通免許で大型バスを運転する、普通二輪免許で大型バイクを運転するといったように運転を許可されていない車種を運転した場合に違反が成立します。

※ ※ ※

 AT車限定の普通免許でMTの普通自動車を運転した場合は、無免許運転ではなく免許条件違反が該当します。

 すでにAT車限定免許を取得済みで、どうしてもMT車を運転したいという場合には、AT限定解除の審査を受ければ運転することができるようになります。