度々話題となるガソリン給油の「半分派・満タン派」問題ですが、実際に半分にした場合には月々や年間でどのくらいお得になるのでしょうか。
「半分給油法」は節約に有効?
さまざまな物の価格が高騰する昨今、クルマの燃料代もできるだけ抑えたいものです。
なかには、ガソリンを満タンにしないことで燃費向上を図るユーザーもいるようですが、果たして効果はあるのでしょうか。
資源エネルギー庁によると、2022年末時点でのレギュラーガソリンの全国平均価格は167.9円/Lとなっています。
これは、2022年初めの168.4円/Lと比べるとわずかに低下しているように見えますが、実際には燃料油価格激変緩和補助金による抑制効果が含まれており、補助金がなかった場合には183.6円/Lとなっていたといいます。
ガソリン価格はさまざまな世界情勢の動きに影響されるため、今後の価格変化について見通しを立てることは容易ではありません。
また、ガソリン価格が高騰することで輸送コストも上昇することから、ほとんどすべての食料品や日用品も価格が高騰しています。
こうした状況のなかで、日常的にクルマを利用するユーザーの多くは、燃料代をできるだけ節約したいと考えるものです。
燃料代を節約するためには、より燃費の良いクルマに乗り換えたり、より価格の安いガソリンスタンドで給油するなどの方法があります。
しかし、家計の節約のためにクルマを買い替えるのはあまり現実的ではありませんし、安いガソリンスタンドを探して必要以上の距離を走るのも本末転倒です。
一方、燃費向上のために、給油時にあえて満タンにしないという方法をとるユーザーもいるようです。
一般的な乗用車の場合、ガソリンタンクの容量は40Lから60L程度に設定されています。
ガソリンの質量はおよそ0.75kg/Lであるため、ガソリン満タンの状態では車両重量(乾燥重量)に加えて約30kgから45kgが加わる計算です。
仮に、給油量をガソリンタンクの半分までとした場合、およそ15kgから22.5kgの軽量化が図れることになります。
車両重量は燃費に大きく影響する要素であるため、ガソリンをあえて満タンにしないことで燃費向上へとつなげるというわけです。
節約効果は限定的、万が一の備えを考えると満タン給油がベター
果たして、この方法は実際に燃費向上にどれほど貢献するのでしょうか。
トヨタ「ヤリスクロス」(ガソリン車/FF)の「Z」を例に検証してみましょう。
このモデルのWLTCモード燃費は18.8km/Lとなっています。
月間の走行距離が1000km、ガソリン価格が170円/Lと仮定した場合、燃料代は月間で約9043円、年間で約10万8511円となります。
ヤリスクロスの燃料タンク容量は42Lであるため、満タン状態では車両重量(乾燥重量)の1140kgに対して約31.5kgが加わりますが、もし「半分給油法」を実践した場合、約15.75kgの軽量化が可能です。
新科学技術推進協会によれば「100kgの軽量化によって燃費はおよそ7%から9%向上する」といいます。
今回はおよそ15.75kgの軽量化であるため、燃費向上効果は単純計算で1.1%から1.4%ほどという計算になります。
仮に「半分給油法」によって1.4%の燃費向上効果が得られたとすると、ヤリスクロスの燃費は18.8km/Lから約19.1km/Lへと向上します。
これを先ほどの条件に当てはめてみると、燃料代は月間で約8901円、年間で10万6806円となります。
「半分給油法」を実践しなかった場合と比較すると、月間で約142円、年間で約1705円の節約が実現したことになります。
この金額をどうみるかは人それぞれですが、実際のところは、決して大きな金額とはいえなさそうです。
一方、「半分給油法」について、あるガソリンスタンドのスタッフは次のように警鐘を鳴らします。
「軽量化による燃費向上を目的として、ガソリンを満タンにしないことはあまりおすすめできません。
むしろ、災害発生時などにはじゅうぶんな量のガソリンが入っていた方が好ましいため、できる限り満タンに近い状態でいることが良いと思います」
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2011年に発生した東日本大震災の直後には、沿岸の製油所が被災したことなどを発端に、深刻なガソリン不足が発生しています。
地方部などクルマでの移動が主流となっている地域では、ガソリンは文字通り生命線となっている一方、消防法などの観点からクルマ以外の場所へ個人が大量に備蓄することは困難です。
逆にいえば、個人がガソリンを備蓄する最適な手段はクルマへの給油ということになります。
節約も重要ですが、万が一の事態に備えて、常に満タン給油をするのが比較的に良いといえそうです。