高速道路などでスマートに支払いができるシステムが「ETC」ですが、進化した「ETCX」というサービスが存在します。既存のETCと新しいETCXとの違いは何なのでしょうか。

「ETC」と「ETCX」ってどう違う?

「ETC」は、クレジットカードや口座などと紐づいたキャッシュレス決済で高速道路の利用料金を支払えるとあって、高速道路を利用するクルマの9割以上が搭載しています。
 
 これまでは高速を含む有料道路での支払いがメインだったETCですが、新しいキャッシュレス決済サービス「ETCX」へと進化しようとしています。

 これは、高速道路の料金所でのスムーズな支払い方法を、クルマに関連する街中の施設でも使えるようにした新しいサービスだというのですが、一体どのようなものなのでしょうか。

 ETCは「Electronic Toll Collection System」の略語で、原則的には高速道路における「自動料金収受システム」のこと。

 高速道路の混雑抑制および支払いのキャッシュレス化による利便性の向上や管理費の削減を目的に、イタリアなど欧米諸国で導入が進み、日本では1997年の試験運用を経て2001年から本格運用されています。

 そのシステムは、有効な「ETCカード」が挿入された状態の車載器と、道路側(ゲート)に設置されたアンテナで情報を無線で通信し、瞬時に決済までおこないます。

 利用するには有効期限内のETCカードと正しく稼働する車載器が必要で、カードを挿し忘れたり期限切れの場合はゲートが開かず利用できません。

 そんなETCですが、2022年は電波法が改正されたことで2007年以前の旧規格電波を使用した車載器が利用できなくなるという、いわゆる「2022年問題」がありました。

 この2022年問題は、昨今の新型コロナウイルス感染拡大などの影響から無線設備の製造や移行作業に支障が生じていることが考慮され、新規格への移行期間が「当分の間」と改められ、しばらくは古い車載器でも通行が可能です。

 しかし、各車載器メーカーは順次新規格の機器へと切り替えを呼びかけており、また2030年にはETCシステムのセキュリティ規格が改定される予定で、既存の車載器は使えなくなる可能性があります。

 そこで現在は、バージョンアップされた「ETC2.0」を採用した車載器が増えています。主な違いは、今までの「自動的な料金収受」だけでなく、リアルタイムの渋滞情報をもとに迂回ルートの提示など、これまでの一方通行だった通信がより相互通信に近くなったことがポイントとされています。

 そして2023年に本格運用がはじまろうとしているのが、ETCXです。これはETC2.0のさらなるバージョンアップとも呼べるもので、簡単にいえば、高速道路の通行料のほか、クルマを利用して料金が発生する施設でもETC感覚で決済できるようになるというものです。

 たとえば、商業施設の駐車料金やドライブスルー、ガソリンスタンドでの給油なども、ETC同様にクルマに乗った状態でキャッシュレス決済できるようになると期待されています。

街中のクルマ関連施設でもETCXが使えるようになる?

 新しいキャッシュレス決済サービスであるETCXへの期待は大きいのですが、一般的なキャッシュレス決済と違い、あくまでクルマ関連の施設での利用という縛りがあるので、どこまで普及するのかは未知数です。

 現時点では、有料道路の料金所に加え、ETCXによる決済ができるガソリンスタンドもまだわずかしかありません。街中のガソリンスタンドで導入されるのかどうかも未定です。

 そこで、都内のガソリンスタンドの店長に導入予定はあるのか聞いてみました。

「グループとして導入を検討するかもしれないという話は聞いたことがあります。ただしコロナ禍による利用者の減少、ハイブリッド車の普及やEVの台頭などで、いまガソリンスタンドの経営はかなり厳しい状況です。

 仮にユーザーが搭載しているETC車載器でETCXが使用できたとしても、ガソリンスタンド側に必要なアンテナの設置費用をどう捻出するのかなど、問題は多いようです」

 クルマがメインの移動手段となっている地域ではドライブスルー型店舗も多いでしょうが、都市部にはそもそもドライブスルー自体が少なく、スマホでのキャッシュレス決済の導入が先行していることもあり、商業施設での普及は遅れそうです。

 一方で、商業施設以外でクルマユーザーには欠かせない駐車場での決済には有効なのではないかといいます。

「それでも、通行料金を現金で払っている有料道路はもちろん、駐車場の支払いなどは普及が進みそうです。

 とくに有料駐車場は、料金支払機のためにお金を出す手間も省けますし、入口と出口は必ず通過するのでアンテナとの送受信もしやすいと思います」(先出の都内ガソリンスタンド店長)

 確かに有料道路の通行料だけでなく、駐車料金の支払機は中途半端に手が届きにくい高さだったりしますし、わざわざ小銭を探す手間も省けます。まずは駐車料金の支払いからETCXを普及させるのは良いアイデアかもしれません。

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 2021年7月1日からは、静岡県沼津市から下田方面へ向かう「伊豆中央道」「修善寺道路」で地方有料道路では全国初のETCX本格導入がなされています。

 地域の僅かな区間とはいえ、どれだけETCXのロゴがある施設や店舗が増えるか、その成り行きを見守りつつ、今後さらに便利なサービスが登場することに期待します。