過去に発表されたコンセプトカーの中には、好評を得るも市販化に至らなかったモデルが多く存在します。東京モーターショー2017でお披露目され話題になった「GR HVスポーツコンセプト」もそんな1台でした。どのようなモデルだったのでしょうか。

「ハイブリッド」と「タルガトップ」を搭載したスポーツカー!

 2023年10月には、国際的な自動車ショー「東京モーターショー」に代わる「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」が東京で開催されます。
 
 過去の東京モーターショーは、未来を予感させるモビリティや今後市販される可能性の高いコンセプトカーがお披露目され、「市販化して欲しい」と話題になったモデルも存在。
 
 今回は、そのなかでも記憶に残った1台の「GR HVスポーツコンセプト」について紹介します。

 GR HVスポーツコンセプトは、2017年10月開催の「第43回東京モーターショー2017」で世界初公開された、トヨタのコンセプトカーです。

「クルマを操る楽しさ」と「環境への配慮」を両立した新たなスポーツカー像を提案するスタディモデルとして製作され、ボディは2012年に販売開始したトヨタ初代「86(ハチロク)」をベースとしながらも、外装やパワートレインを大幅に換装。

 GR HVスポーツコンセプトのスタイリングは、見る者に強烈な印象を与える個性的な縦型LEDランプをフロントに構えるとともに、リアには大型のディフューザーを採用したことで、トヨタのハイブリッドレーシングマシン「TS050 HYBRID」を想起させるスポーティなデザインを実現しました。

 さらに、トヨタの伝統的スポーツカー「トヨタスポーツ800(通称:ヨタハチ)」や「スープラ」にも通じる、ルーフ中央部が脱着可能な「タルガトップ(エアロトップ)」を採用し、オープンエアの開放感も満喫できる仕様となっています。

 ボディサイズは全長4395mm×全幅1805mm×全高1280mmで、ベースとなった86の全長4240mm×全幅1775mm×全高1320mmよりもロー&ワイドに進化。駆動方式は後輪駆動(FR)で、乗車定員は2+2で4人乗りとする86より少ない2人乗りです。

 パワートレインには、TS050 HYBRIDがサーキット走行で磨き上げたハイブリッド技術「THS-R(トヨタ ハイブリッドシステム レーシング)」を搭載し、さらに重量物である駆動用のバッテリーを車両中央付近に配置したことで、スポーツカーとしての「走り」の性能も向上していると説明します。

 GR HVスポーツコンセプトの特筆すべき事項として、オートマチック車でありながら6速マニュアル車のような操作を楽しめる「Hパターンシフト」を備えている点が挙げられます。

 これはクルマが自動でシフトチェンジをおこなう快適な「ATモード」と、MT車さながらのシフト操作が楽しめる「MTモード」を自在に切り替えることが可能な機能。ATとMTの良いとこ取りをすることで、スポーツカーならではの「シフトを操る楽しみ」を将来も残すという画期的な機構を搭載していました。

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 電気自動車やハイブリッドカーがより一般化し、クルマの電動化が急速に進む現在から振り返ると、GR HVスポーツコンセプトの目指した「クルマを操る楽しみと環境性能の両立」という当時先進的な方向性は今や実現化しつつあるようにも思えます。

 2023年10月に開催されるジャパン モビリティショー2023でも、クルマの未来を示しつつクルマ好きを唸らせてくれるスポーティなモデルが登場するか注目が集まります。