クルマを運転していると、自車がパトカーの後ろにつくことがあります。そんなときパトカーを追い越しても法的な問題はないのでしょうか。詳しく話をうかがいました。
目の前の「パトカー」にドキッ!追い越したら違反?
街中や高速道路などでクルマを運転していると、パトカーを見かけることがあるでしょう。
パトカーは普段は馴染みの薄い存在であるだけに、とくに何か悪いことをしたわけでなくても緊張してしまうという声もあります。
ときには自車がパトカーの後ろについたり並走することもありますが、そんなときパトカーを追い越しても法的な問題はないのでしょうか。
また、パトカーの近くを走る際に注意すべきことはあるのでしょうか。
元警察官という経歴をもつBさんに、詳しく話をうかがいました。
「先に結論を言うと、一般道や高速道を問わずパトカーを追い抜くことに大きな問題はありません。
ただし、パトカーは基本的に制限速度を守って運転していますので、パトカーを追い抜く際にスピード違反にならないよう注意する必要があります」
制限速度で走るパトカーをスピード違反せずに追い抜くことは無理なようにも思えます。一体どういうことなのでしょうか。
「厳密に言えば、制限速度を時速1kmでも上回ればそれは速度違反をしている状態とも言えますが、じつはクルマのスピードメーターは表示される速度と実際に出ている速度に誤差があります。
このズレは製造時点で存在するもので、その度合は速度にも左右されますが、およそプラスマイナスで時速10km程度、ズレが許容されています。
そのためスピードメーターが時速60kmを指し示していても、実際に出ている速度は時速50kmということもあるのです。
しかも、パトカーに乗っている警察官は交通取り締まりと同時に不審者の発見や職務質問、犯罪者の追跡など様々な業務をおこなっています。
これらとメーターの誤差の存在によって、見るからにスピードを出しすぎているような追い抜きかたをしない限りは、速度を計測しスピード違反で取り締まられてしまうような可能性は低いと言えるでしょう」
とはいえ、そこが高速道路であった場合パトカーを追い抜いた後にも延々と追い越し車線を走行していれば、当然取締対象となってしまいます。
また、パトカーが赤色の警光灯を点けサイレンを鳴らしている状態であれば、それは事故や事件の現場に向かう途中などの“緊急走行”をしている状況となり、一般車両は道を譲って緊急車両を優先しなくてはなりません。
これは“道路交通法第40条第1項および第2項”で定められていて、交差点またはその付近で緊急自動車が近くにいるあるいは近づいてきた場合には、一般車両は交差点を避けた道路の左側に寄って一時停止することなどが決められているためです。
このように、極端な速度で追い抜かないことやパトカーの状態をよく観察することが大切ということでした。
その他にも気をつけるべきことはないのでしょうか。
「他に思い当たる注意点としては、走っている道路が“追い越し禁止”や“車線変更禁止”に指定されていないかも注意が必要です。
“道路交通法第30条”で追い越しを禁止する場所は定められており、道路標識などで示されている場所や、道路の曲がり角付近、上り坂の頂上付近、勾配の急な下り坂、交差点及びその手前30m以内の場所などは追い抜きをすることはできません。
加えて、“道路交通法第29条”では二重追い越し、つまり前のクルマがその前のクルマの追い抜きを開始した場合、後続車は追い越しをしてはいけないと決められています」
パトカーを追い越す際には、上記のように場所や追い抜きのタイミングにも注意することが、自身や周囲の安全とともに免許を守ることにもつながるでしょう。