約70年の歴史を経ていまも進化を続けるトヨタ「クラウン」ですが、16代目となる各モデルはどのような棲み分けがなされているのでしょうか。
トヨタが16代目として投入した「クラウン」は何を目指したのか
2022年に登場した「クラウンクロスオーバー」、2023年秋から冬に登場する「クラウンスポーツ」、「クラウンセダン」、そして2024年に登場する「クラウンエステート」と、注目の16代目クラウンシリーズ。
約70年の歴史を経ていまも進化を続けるクラウンですが、16代目となる各モデルはどのような棲み分けがなされているのでしょうか。
トヨタの乗用車の中で、最も歴史を持つモデルがクラウンです。
トヨタ自身、クラウンに対してこのような想いを語っています。
「いつの時代も、クラウンが目指してきたものは『幸せの量産』。
日本の豊かさ、『ジャパンプライド』の象徴であり、世界に誇る日本の技術と人材を結集したクルマでした」
そして、2022年7月に16代目となる新型が世界初公開されました。
「16代目クラウンにも、そんな日本の底力が詰まっております。
『日本のクラウン、ここにあり』。それを世界に示したい。
さぁ、新しい時代の幕開けです」
その第1弾として登場した「クロスオーバー」は序章に過ぎず、エモーショナルなSUVである「スポーツ」、アクティブライフを楽しむ相棒「エステート」、そして正統派サルーン「セダン」の登場を控えています。
これは多様性が求められる時代に合わせたラインアップと言えるでしょう。
ちなみにクラウンの歴史を振り返ると、様々な用途に合わせてセダン、2/4ドアハードトップ、ステーションワゴン、バン、ピックアップなど、色々なボディバリエーションがラインアップされていました。つまり16代目は“原点回帰”でもあるのです。
では、16代目クラウンシリーズは各モデルにどのような個性が与えられているのでしょうか。
ここでは筆者の予測も含めてチェックしてみたいと思います。
ちなみに各モデルのキャラクターは横軸に「理性-感性」、縦軸に「基盤-創造」のグラフで位置づけされています。
そのセンターに位置するのが「クロスオーバー」です。
「セダンとSUVのいい所取り」と言うコンセプトは、セダンというキーワードが忘れて検討を行なった時に浮かんだアイデア(シルエット、目線の高さ、乗り降りのしやすさ、電動化対応)を全て両立させるパッケージを具体化した物です。
実際に乗るとFF横置きレイアウトのAWDモデルながらも、まるでFR縦置きレイアウトのような旋回姿勢と滑らかでスムーズな動きです。
パワートレインはふたつのハイブリッド(デュアルブーストハイブリッド/THSII)を用意。
デュアルブーストハイブリッドのほうが若干スポーティな味付けではあるものの、トヨタ車の共通の味「Confident(安心) & Natural(自然)」のひとつの完成形に近い仕上がりと言えるでしょう。
2023年秋以降に登場予定の「スポーツ」は感性/創造に位置するモデルで、トヨタのラインナップで言えば「RAV4/ハリアー」とは違う新時代のスポーツSUVを具現化しています。
エクステリアはクラウンシリーズの中で最もエモーショナルで、欧州のスーパーSUVが横に並んでも負けないカッコ良さです。
ボディサイズはクロスオーバーに対して短い全長/ホイールベース(-80mm)、ワイドな全幅(+40mm)は走りにも大きく寄与しています。
ハンドリングの基本はクロスオーバーに対して「より機敏」、「より俊敏」、「より曲がる」と言う形容詞がプラスされます。
過去のクラウンで例えるなら、クロスオーバーは「アスリートとロイヤルのいい所取り」ですが、スポーツは明確に「アスリートの後継」と呼べる味付けです。
分類上はSUVになりますが、走りはスポーツセダンに近い心躍るような乗り味に仕上がっています。
気になるのは17年ぶりに名称復活の「エステート」か… それとも正統派セダン?
2024年に登場予定の「エステート」は理性/創造に位置するモデルで、ワゴンとSUVのクロスオーバーとして大人のアクティブライフの相棒を具現化したモデルです。
ボディサイズはクロスオーバー同等ですが、全高1620mmとユーティリティ重視のパッケージで特にラゲッジの広さはシリーズ最大でしょう。
ちなみに後席は格納式な上にフラットデッキにすることが可能で、優雅な見た目とは裏腹に利便性は非常に高そうです。
走りは未試乗なので推測になってしまいますが、クロスオーバーに対して「より大らか」、「より穏やか」、「より遠くに」といった形容詞がプラスされているはず。
グランドツアラーのようにどこか心が落ち着く乗り味であることを期待したい所です。
そして、2023年秋頃登場予定の「セダン」はパーソナル/ビジネス共に答える新時代のフォーマルセダンを具現化したモデルです。
「セダンの呪縛から解けた今、新たな発想でセダンを!」と言う豊田章男氏の提案によって生まれたモデルですが、他の3台との最大の違いは「縦置きFRベース」のプラットフォームを採用している点です。
恐らくTNGA 「GA-L」だと思われますが、同プラットフォームを用いる「MIRAI」とレクサス「LS」の中間と言ったボディサイズです。
ホイールベース3000mmを活かしたゆとりの後席空間はクラウンシリーズ最良。
走りは基本素性の良さを活かした15代目譲りの精緻なハンドリングとやさしく快適な乗り味を両立しているはずです。
もしかしたらドライブモードで乗り味は大きく化けるのかもしれません。