輸入車、日本車にかかわらず、ライフスタイルに合わせて好きなクルマを買う人が増えつつつあるなか、日本車ブランドの「隠れ輸入車」も存在しています。どのようなクルマなのでしょうか。

モデル途中で広島製からタイ製へと切り替わった珍しいケース

 かつて輸入車といえば「高価で特別なもの」というイメージも強かったですが、近年はライフスタイルに合わせて、国産、輸入車を問わず機能やデザイン、性能などで自由に比較し、選ぶ人も増えてきました。

 そのようなボーダーレスの時代になっているなか、まさに日本車・輸入車という垣根を超えたような「日本車ブランドの“隠れ”輸入車」をご紹介します。

 2015年2月に発売が開始されたマツダ「CX-3」は、同社のクロスオーバーSUV「CX」シリーズの中でももっともコンパクトなモデルです。

 ちなみにCXの名は、2007年に発売された「CX-7」からスタートしています。

 そして2012年、マツダの新世代技術群“SKYACTIV TECHNOLOGY”を全面的に採用した「CX-5」を皮切りに、3列シート車「CX-8」やコンパクトクラスの「CX-30」、そして海外専売の「CX-4」「CX-9」など次々と展開されました。

 さらに2022年から始まったラージ商品群として、2列シート車「CX-60」や北米向け3列シート車「CX-90」、そして今後「CX-70」「CX-80」も順次投入される予定となっています。

 そのなかでCX-3は、2014年に発売されたコンパクトカー「デミオ」(途中「マツダ2」に改名)のプラットフォームがベースですが、ミドルクラスの各モデルにも負けない精緻さと存在感あるスタイリングや、上質なインテリアが特徴です。

 日本のほかタイやメキシコの各工場でも生産され、マツダにとってもグローバルに展開される重要なモデルとなっています。

 発売当初、日本仕様のCX-3はすべて国内製でしたが、2022年7月上旬で日本での生産を終了。2022年4月からは、タイで日本向け仕様の生産を開始しました。

 モデル途中で生産国を移すというのは、国内向けの日本車ではほとんど例がない珍しいケースといえます。

 ちなみにマツダで販売されているモデルでは、OEM供給されるモデルや教習車専用モデル(国内未発売の「マツダ2」セダン)を除くと、初の輸入車となっています。

 なおCX-3は2021年11月下旬に年次改良版が発売されており、モデルチェンジを機に国内生産車と輸入車の切り替えが行われたわけではなさそうです。

 つまり同じ仕様のCX-3でも、2022年3月から7月頃までの期間は国内生産車と輸入車が混在している可能性があります。

 そのことからも、外見では全く区別がつかない“隠れ輸入車”といえそうです。

 ちなみに2022年度(2022年4月から2023年3月)、CX-3の年間販売台数は7863台です。

 同期間にCX-5が年間2万7250台(月平均)を販売したと考えると「絶好調」というわけではありませんが、ほぼ2021年度と同じ台数の販売をキープしており、デビューから8年が経過したいまも根強い人気があるといえます。

 ベースモデルともいえるマツダ2も、2023年1月にビックマイナーチェンジがなされたばかり。

 よりサイズが大きい「マツダ3」をベースとする「CX-30」にすぐに置き換わることなく、今後もしばらくは販売が続けられる可能性もありそうです。

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 海外生産のクルマを日本へ輸入して販売するメリットはいくつかあります。

 なかでもコスト面でいえば、海外の安い生産コストで利益率をあげ、日本市場で販売できるという点が思い浮かぶところです。

 ただし昨今の円安傾向や輸送費の高騰などの推移次第では、再度国内での生産に移行することもあり得ない話ではないでしょう。

 また一方で、CX-3のモデルライフの長さを考えると、いつまでも現行型のままという訳にもいかず、仮に販売台数が低迷するようなことがあれば販売終了となってしまう可能性も否定できません。

 いずれにしても、今後のCX-3の動向が気になるところです。