外交官ナンバーのクルマは外交特権を持っているため「交通違反の取り締まりを受けない」という噂も聞かれます。はたしてこれは事実なのでしょうか。

外交官ナンバーによる駐車違反金の踏み倒しが横行!

 大使館や領事館などが集中する都市部では、ときどき外交官ナンバーのクルマが走っているのを見かけます。
 
 実は、外交官は逮捕されないといったさまざまな特権を持っているため、交通違反の取り締まりを受けないという話も聞かれます。はたしてこれは事実なのでしょうか。

 大使館や領事館は東京都、大阪府などの都市部に多く所在しており、クルマを走らせていると外交官ナンバーのクルマを見かけることも珍しくありません。

 外交官が使用するクルマのナンバープレートには、大使館の長である大使の場合は「□」、大使館またはその構成員のものは「外」、領事館関係者のものは「領」、外務省の外国代表部または国際機関関係のものには「代」という記号や文字が、数字の前に入っています。

 具体的には、青色のナンバープレートに白文字で「外-○○○○(数字)」と記載されているものや、白色のナンバープレートに青文字で「領-○○○○(数字)」と書かれているものなどは外交官が乗ったクルマということが分かります。

 意外と知らない人もいるかもしれませんが、実は外交官にはウィーン条約に基づいて逮捕・起訴されない権利や、一定の場合を除いて民事裁判や行政裁判が免除される権利など、さまざまな特権があります。

 そのことが影響してか、たびたび「外交官は交通取り締まりを受けることがない」といった声も聞かれますが、はたしてこれは事実なのでしょうか。

 結論から言うと、外交官であっても交通違反取り締まりを受ける可能性はあるものの、反則金の徴収などの点で一般の人と比べて非常に優遇的な措置がとられています。

 たとえば外交官ナンバーのクルマが駐車違反をしており、警察官などが放置車両確認標章と呼ばれる黄色いステッカーを取り付けたとします。

 一般のクルマの場合であれば、警察に出頭せず放置違反金を支払わないままでいると最悪車検の拒否、財産の差し押さえといった処分を受ける可能性があります。

 しかし外交官ナンバーの場合は、外交官の特権により強制的な財産の差し押さえができません。

 そのため以前から外交官のクルマが安易に駐車違反をしたり、放置違反金を踏み倒すといった事例が多発しました。

 警察庁の「駐日外交団車両による放置車両確認標章取付(違反)件数」というデータによると、外交官ナンバーのクルマによる駐車違反が2018年に3948件、2019年に2615件、2020年に1137件あったことも明らかになっています。

 この問題に関しては外務省が駐車違反を繰り返す人に対して個別に注意喚起したり、違反金を納付するように求めています。

 さらに違反金の納付をしていない場合にはガソリン免税措置を認めないなどの措置をとったことで2018年から2020年までに違反件数が減少しました。

依然として違反件数が多いのはなぜ? やはり特権があるから?

 とはいえ依然として駐車違反の件数は多く、国の顔ともいえる外交官のふるまいとしては非常に疑問が残ります。

 また通常の交通違反に関しては、警視庁の「外国人交通事故及び違反処理要綱の全部改正について」という文書の中で「交通反則通告制度は、刑事処分とは異なる行政措置であるから、外交特権等享有者に対しても適用できる」と記載されており、警察官が交通反則切符を切ること自体は可能です。

 しかし、愛知県警が公表している「外交特権を有する者に対する交通反則通告制度の適用」という文書においては、外交官が反則金を納めなかった場合の対応として「反則金不納付事件の場合は、行政手続の段階で事件を完結すること。」と規定されており、外交官が反則金を納付しなかったとしても、一般人のように刑事裁判にかけられる可能性はないことが明らかになっています。

 そのほか外交官が交通事故を起こした場合においても、警察は原則として逮捕などの強制捜査ができず、任意で捜査をおこなわなければいけません。

 つまり、外交官が事故の捜査協力を拒否することもできるのです。

 過去には外交官が事故を起こすも対応せず、被害者が泣き寝入りするという事例も発生していました。

 しかし、現在は外交官ナンバーに対して外務省が任意保険の加入を義務づけているため、万が一の事故の場合はその保険から補償されるものとみられます。

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 外交官にはさまざまな特権が認められており、それによって駐車違反や放置違反金の踏み倒しなどの発生が問題となっています。

 特権があるとはいえ、国の代表としてふさわしい行動をしてほしいものです。