全国の自治体で「公用車」の車検切れが相次いでいますが、そこにはどのような理由があるのでしょうか。

なぜ全国の自治体で「公用車」の車検切れ…相次ぐ?

 全国の自治体において、公用車が車検切れの状態で走行していたというニュースが相次いで報道されています。
 
 官公庁では監査などにより定期的に公用車点検がおこなわれていますが、一体なぜ車検切れが発生するのでしょうか。

 2023年に入り、島根県松江市や埼玉県さいたま市、大分県玖珠町、奈良県宇陀市など、全国各地の自治体で車検切れの公用車を使用していた事例が次々と発覚しています。

 自治体によっては規程を設けて公用車を管理したり、監査などによって定期的な点検がおこなわれていますが、なぜ公用車の車検切れが起こるのでしょうか。

 奈良県宇陀市の事例では、秘書広報情報課の自主放送室で管理する公用車を2023年1月19日から4月24日までの約3か月間に計14回、距離にして247km、車検切れの状態で使用していたことが明らかになりました。

 宇陀市秘書広報情報課の担当者は車検切れを起こした理由として以下のように話しています。

「今回車検切れとなっていた公用車は令和3年1月に購入した軽四貨物自動車(いわゆる4ナンバー)であり、普段はケーブルテレビ番組の取材用のクルマとして機材の運搬などに利用していました。

 軽四貨物自動車の初回の車検は新車登録時から2年ですが、公用車の担当職員が初回の車検を一般的な自家用乗用車と同じ3年だと思い込んでいたため、車検を受けていませんでした」

 また、車検切れが判明した経緯について前述の宇陀市の担当者は以下のように説明しています。

「市内の自動車整備工場の人から『車検切れではないか』という問い合わせをいただいて調査したところ、車検切れが分かりました。

 市役所の駐車場に駐車されていた公用車を見て気づかれたようです」

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 また宇陀市以外でも島根県松江市の事例では、リースしていた公用車を市の所有に切り替えた際に「公用車管理システム」に車検情報などを正しく登録していなかったことが原因でした。

 さらに、埼玉県さいたま市の事例では、職員が車検に必要な自賠責保険の証明書を受け取った後、引き継ぎをしないまま放置し車検手続きを怠っていたことが原因と報じられています。

 その他、大分県玖珠町の事例では車検業者が変更となり、職員が業者との連絡を取れていなかったことが車検切れの理由として挙がっており、職員の確認不足やミスなどによって車検切れが発生している実態が浮き彫りとなりました。

職員以外が気づくケースも… 再発防止にはどう取り組むのか?

 宇陀市以外に松江市の事例でもガソリンスタンドの店員から指摘を受けて車検切れが判明しており、職員以外の人が気づくケースも少なくありません。

 また、公用車の車検に関係した予算要求をするにあたって公用車の一斉点検をしたところ発覚したというケースもあります。

 公用車の車検切れが判明した自治体では再発防止の取り組みを進めており、宇陀市では職員が公用車に乗る前に車検ステッカーを確認するよう意識徹底を図るほか、車検終了後には必ず総務課への報告をおこなうこととしました。

 そして、これまではそれぞれの部署で管理していた「専用車」と呼ばれる公用車を特定の部署で一元管理することについても検討するとしています。

 そのほかの自治体においても車検の有効期間を記したシールをクルマの見えやすい場所に貼り付ける、整備業者とも公用車の情報を共有するといった対策を講じています。

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 全国の自治体では公用車の車検切れが相次いで判明しています。

 その原因の多くは関係職員の確認不足といったヒューマンエラーであり、車検切れをなくすためには担当者だけでなく複数の職員が車検の有効期限をチェックすること、またエラーが起こりやすい管理体制自体を見直すことが肝要といえるでしょう。

 そうした中で国土交通省は2023年7月3日から、クルマのフロントガラスに貼られている車検ステッカーの位置を変更すると発表しています。

 これは「運転者から車検証の有効期限をより見えやすくすることで、車検切れで運行するクルマを減らす」という狙いが背景にはあるため、今回のような相次ぐ車検切れの抑止に繋がるか、期待が高まります。