2023年5月25日に発売される三菱の軽SUV「デリカミニ」が話題です。車名の由来となった同社の老舗ブランド「デリカ」シリーズについて改めて振り返ります。

もともとの車名の由来は「配送車」だった!?

 先行発表されるや否や、軽自動車らしからぬタフなスタイルとスライドドアの使い勝手に注目が集まり、あっという間に人気車種となった三菱 新型「デリカミニ」が、2023年5月25日に正式発売となります。

 車名の通り、三菱のオールラウンドミニバン「デリカ」(デリカD:5)をモチーフとした軽自動車ですが、今回はその“元ネタ”であるデリカシリーズの歴史について、ワゴンモデルを中心に振り返ってみます。

●初代「デリカ」

 デリカの始まりは、1968年に登場した600kg積のトラックであり、エンジンは当時のコルト1100と同じ1.1リッターを搭載。商用トラックということもあり、「Delivery Car(デリバリーカー:配送車)」が車名の由来となっていました。

 そして翌年にはこのトラックをベースにワンボックスタイプのボディを架装した「コーチ」、「ライトバン」、「ルートバン」を追加。コーチモデルは9人乗りのワゴンとなっており、現在に繋がる3列シートミニバンの元祖となりましたが、当時はまだまだレジャーに供するユーザーは少なく、もっぱら業務用の輸送車として活用していたようです。

 しかし1972年には、当時としては極めて珍しいポップアップルーフテントを備えた純正キャンピングカー仕様が設定されていました。

 現代のデリカブランドのイメージに通じる「アウトドア志向」がすでにこの頃からあったという点には、改めて驚かされます。

●2代目デリカ「デリカスターワゴン」

 1979年にはデリカ初のフルモデルチェンジを実施し、ワゴンモデルには新たに「スターワゴン」のサブネームが付けられました。

 1982年10月には、パジェロと同じ4WD機構を備えたスターワゴンが追加となり、ここからオールラウンドミニバンの第一歩がスタートしたと言えるでしょう。

 なお、国産ワンボックスカーとして4WDを採用したのはこのモデルが初となります。

 また4WDが追加されたタイミングで2.3リッターディーゼルエンジンを搭載した仕様も追加設定され、タフなエンジンを搭載したワンボックスカーというイメージもプラスされました。

 ボディサイズも初代に比べて大型化し、全幅は5ナンバーサイズいっぱいまで拡幅され、室内空間も拡大しています。

 この頃からはワンボックスカーもレジャー用途で使われることが増えてきており、デリカスターワゴンにもセカンドシートに対座機構を備えたほか、サンルーフやハイルーフ仕様も用意されています。

●3代目デリカ「デリカスターワゴン」

 1986年6月に登場した3代目モデルのワゴンは、先代と同じくスターワゴンのサブネームを継承。人気を集めたスタイルは踏襲しつつ、一部グレードではフロントにガードバーを備えるなど、オフロード性能をよりアピールするスタイルとなっていました。

 搭載エンジンも、2リッターのガソリンと2.5リッターのディーゼルターボへと排気量を拡大し、それまではMTのみだった4WDモデルにも、88年8月にはディーゼル、91年8月にはガソリンモデルにそれぞれAT仕様が追加され、より幅広い層に楽しんでもらえるモデルに進化。

 そして1990年8月にはビッグマイナーチェンジを実施し、フェイスリフトを実施したほか、側面のフラッシュサーフェイス化、インテリアの変更などを実施して近代化を果たし、1994年5月に後継車種のデリカスペースギアが登場した後も併売され、1999年9月まで販売が続けられました。

●4代目デリカ「デリカスペースギア」

 1994年5月に登場した4代目デリカは、それまでのキャブオーバータイプから、エンジンをフロントに搭載したレイアウトを持つモデルに生まれ変わり、車名も「デリカスペースギア」へと一新されました。

 このモデルは4WDシステムだけでなく、フレームもパジェロと同じものを採用し、サスペンションもパジェロのものを踏襲することで、それまでも定評のあったオフロード性能をさらにワンランク高い次元へと昇華。

 搭載エンジンも2.4リッターのガソリンと2.5リッター、2.8リッターのディーゼルターボのほか、3リッターV6のガソリンエンジンもラインナップし、プレミアム感も追加したことでさらに幅広いユーザーに受け入れられるモデルとなったのでした。

 なおデリカスペースギアには、全長5mを超える4列・10人乗り仕様も存在し(2002年8月まで)、一見すると普通のスペースギアなのに、全長が異様に長いという変わり種車種となっています。

5代目「D:5」のあとに登場した「D:2」や「D:3」!?

●5代目デリカ「デリカD:5」

 現行モデルとなる5代目デリカは、新たに車名を「デリカD:5(ディーファイブ)」に改めて2007年1月に登場。プラットフォームはモノコックボディとなりましたが、オフロード走行も考慮してリブボーンフレームと大型クロスメンバーを装着することでボディ剛性を大幅に強化していました。

 4WDシステムもパジェロのものとは異なり、SUVの「アウトランダー」などにも採用された電子制御4WDシステムを採用し、ダイヤル式のセレクターによって走行中でも簡単に変更できるようになっています。

 デビュー当初は2.4リッターのガソリンエンジンに4WDの組み合わせのみでしたが、登場からおよそ4か月後に2リッターエンジンを搭載した2WD仕様を追加。さらに2012年12月には従来型のファンの声に応える形で、2.3リッタークリーンディーゼルターボエンジンを搭載したモデルを追加しています。

 2019年2月には三菱の共通フロントデザイン「ダイナミックシールド」を採用するなど、大規模なマイナーチェンジを実施(ディーゼルモデルのみ)。先進運転支援機能や大画面のナビゲーションシステムを設定するなど、ほぼフルモデルチェンジ同等の近代化に対応しています。

 エンジンも型式こそ変わらないものの、構成部品の半数を一新し、尿素SCRシステムを採用するなど、こちらも近代化がなされていました。

 なお、車名のD:5は、当初デリカの5世代目を表していると言われていましたが、後にデリカの名前を冠した他車種が登場したことで、車格も合わせて表していると改められています。

●番外編 その1「デリカD:2」

 デリカミニが登場するまでは、デリカの名前を冠する車両の中で最もコンパクトなボディを持っていたのが「デリカD:2」でした。

 ただデリカの名前を冠してはいるものの、実はスズキ「ソリオ」のOEMモデルとなっており、本家のように高いオフロード性能を持ち合わせている、というワケではありません。

 現在販売中のモデルは早くも3世代目となっており、初代にデリカD:5(前期型)を彷彿とさせるフロントグリルがオプション設定されていたほかは、ほぼソリオと同一となっており、エンブレム程度の違いしかありませんが、使い勝手の良さから安定した人気を誇っている1台となっています。

●番外編 その2「デリカD:3/デリカバン」

 現在はラインナップから姿を消していますが、1.6リッターエンジンを搭載したワゴンモデルの「デリカD:3」という車種も存在していました。

 こちらもD:2と同じくOEM供給を受けて販売されていたモデルで、ベースは日産「NV200バネット」のワゴンモデル。2列シートの5人乗りと3列シートの7人乗りが用意されており、フロントマスク(バンパー&グリル)は専用のものが用意されていました。

 またNV200バネットのバンモデルをベースとした商用車の「デリカバン」も併売されていましたが、どちらも2019年4月で終売となりました。

※ ※ ※

 今回はデリカのワゴンモデルと派生車種について振り返ってみましたが、デリカミニの人気によって再び再注目された本家デリカ(デリカD:5)も、デビューから16年が経過しており、フルモデルチェンジはどうなるのか、また派生車種がさらに登場するのかについて、気になるところですね。