多くのクルマの走行にはガソリンが欠かせませんが、現状では税金に税金がかかる「二重課税」の状態です。どういうことなのでしょうか。

ガソリン高い理由には不可解な「税金×税金」の仕組みがある

 近年、原油価格高騰によってガソリン価格が高止まりしています。しかし、それだけではなく、ガソリン自体に複数の税金が課せられていることも理由として挙げられます。
 
 現在、ガソリン価格は税金に税金がかかる二重課税の状態になっているといいますが、どういうことなのでしょうか。

 クルマを日常的に使用している人にとってランニングコストとなるのがガソリン代です。近年では価格が高止まりしており、ユーザーにとって負担が大きい状態が続いています。

 その理由としては主に原油価格の高騰が挙げられますが、実はガソリンの販売価格のうち、原油価格高騰の影響を受けるガソリンそのものの価格はわずか55%ほどで、残り約45%は税金で占められているのです。

 一般的に、ガソリンスタンドの店頭ではガソリン1リットルあたりの価格が表示されています。

 たとえばガソリン販売価格が1リットルあたり160円のとき、ガソリンそのものの価格は約89円で、残りの約71円はガソリン税や消費税などの税金です。

 ガソリン価格に含まれる税金は「ガソリン税」とも言われる「揮発油税」と「地方揮発油税」、それに「石油石炭税」で、石油石炭税には「地球温暖化対策税」が上乗せされています。

 このうち、ガソリン税は基本の税額となる28.7円に加えて暫定的に25.1円が加算されており、そこに石油石炭税2.04円と地球温暖化対策税0.76円が加算され、これだけでも56.6円となります。

 さらに、ガソリン本体価格とこれらの税金を合計した金額に10%の消費税約15円が課せられることになります。

 これを加味すると、さきほどと同じ1リットルあたり160円で考えた場合、ガソリン30リットルを給油すると4800円かかりますが、このうちガソリン本体価格はおよそ2665円、およそ2135円がガソリン税や消費税などの税金です。

 このようにガソリン税を含めた価格に消費税が課税されることについて、税金に税金がかかる二重課税、いわゆる「Tax on Tax」の状態であると指摘されています。

 税金に消費税が上乗せで課税されることについて、国税庁では、ガソリン税や石油石炭税と消費税とでは納税義務者が異なるためであると説明しています。

 税金を納める義務を負う人を納税義務者といいますが、ガソリン税や石油石炭税などの納税義務者はメーカーである石油会社であり、消費税はガソリンを購入するユーザーが納税義務者です。

 このことから、メーカーが納税義務を負うガソリン税や石油石炭税はガソリン販売価格の一部を構成するものであり、ユーザーが納税義務を負う消費税の課税対象であるということです。

 この状況に対してJAF(日本自動車連盟)では、「税に税がかけられる」(Tax on Tax=タックス・オン・タックス)という、極めて不可解な形であり、自動車ユーザーが到底理解・納得することができない課税形態を早急に解消すべきであると、自動車税制改正に関する要望活動を続けています。

 実際に、JAFがおこなったアンケート調査によれば、自動車ユーザーの約98.5%がクルマの税金を「負担に感じる」と回答したといいます。

 こういった納得感のない課税形態は、ユーザーにとってガソリン価格への負担が大きく感じられる要因のひとつとして考えられます。

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 2023年5月26日、経済産業省はガソリン価格を抑えるため、石油元売り会社などに支給していた補助金を段階的に縮小し、9月末で終了することを発表しました。

 高止まりを続けているガソリン価格ですが、この補助金の終了によって市場価格への影響は避けられないとみられ、消費者の負担が変化する可能性も十分に考えられます。

 地方などでは生活の足として欠かせないクルマですが、物価上昇などから生活全体の負担が増えるなかで、ガソリン価格がこれ以上値上がりするとなれば、多くのユーザーから不満の声が聞かれることは想像に難くありません。