複雑な地質条件により「日本のトンネル技術が敗退」したこともあった青崩峠。ここで現在、改めて道路トンネルの建設が進んでおり、およそ4年を経てついに貫通しました。どのような計画なのでしょうか。

中央構造線の近くを通過

 国土交通省中部地方整備局飯田国道事務所は2023年5月30日、長野・静岡の県境で建設を進めてきた三遠南信道「青崩峠トンネル」(仮称)が、26日に貫通したと発表しました。

 三遠南信道は、長野県飯田市から静岡県浜松市に至る延長約100kmの高規格幹線道路です。中央道の飯田山本ICから南信州・北遠州・奥三河地域を通り、新東名高速の浜松いなさJCTまでを結びます。現在は矢筈トンネルや三遠トンネルなど4区間が開通しています。

 青崩峠トンネルは、未開通区間のうち長野・静岡の県境に位置します。延長は4998mです。

 国内最大の断層である中央構造線がすぐ近くを走っていることから地盤が非常に脆く、最難関のトンネル工事とされており、当初の計画ルートを断念したことから「あまりの崩落の激しさに日本のトンネル技術が敗退」と表現されたこともありました。

 平行して走る中央構造線との間隔はわずか500mであり、工事は、断層運動の影響を受けた複雑な地質を貫くことを余儀なくされます。そのため、トンネルは一際「高強度」で造られているのが特徴です。

 国土交通省中部地方整備局飯田国道事務所によると、掘削工事は2019年4月に開始し、約4年を経て貫通したといいます。

 青崩峠トンネルは、幅員9.5m、車道2車線、設計速度60km/hで整備されます。現在は峠で途切れている国道152号の代替路となり、三遠南信地域の交流促進と連携強化、災害に強い道路機能の確保、救急医療活動の支援などに寄与することが期待されています。

 同事務所は今後、早期開通に向け覆工コンクリート、インバート、中央排水、側溝、監査路、舗装、通信・電気・機械設備などのトンネル内工事や、両坑口の改良、舗装工事を進めていくとしています。