ガソリンスタンドに行っても、場合によっては給油を断られる場合があります。そのひとつが「携行缶への給油」です。

2020年2月の法改正で一部のクルマの給油が厳しくなった

 予備の燃料や発電機用の燃料として活躍する携行缶ですが、最近ではガソリンスタンドで断られるケースが増えてきました。
 
 ガソリンスタンドで断られる条件とは、どういったものなのでしょうか。

 ガソリンは、自動車のみならず原動機で発動する農業用機械器具や発電機などさまざまな機械で活躍しています。

 自動車なら直接ガソリンスタンドまで出向いて給油を行えばすみますが、自走が不可能な農業用機械器具では直接給油が困難です。

 農業用機械器具などの給油を手軽に行えるようにしたものが携行缶で、場所を問わず給油ができ、レジャーや災害時などの予備燃料としても重宝します。

 ところが最近、携行缶への給油に関するルールが厳格化し、ガソリンスタンドによっては給油が断られるケースも増えてきました。

 利用者からすれば便利な携行缶ですが、給油できなくなってきた背景にはどのようなことがあるのでしょうか。

 一番の大きな要因は、総務省消防庁から2020年2月1日より施行された消防法の改正案によるものです。

 改正案では携行缶に給油をする際は、販売店への身分証の提示及び使用目的の確認にくわえて、販売記録の作成を行うことが義務付けられました。

 携行缶は、法律で定められた規格の金属製の運搬容器のみで、ポリタンクやペットボトルへの給油はできません。

 ほかにも給油は、危険物取扱者の有資格の従業員か有資格者立ち会いのもとで、ほかの従業員のみが行えるよう改正されました。

 セルフのガソリンスタンドで購入者が給油することは、法律で禁じられており、実際に「携行缶または自走しない車両などへの給油は法律により禁止されています」というアナウンスを見かけます。

 首都圏内のセルフサービスのガソリンスタンドスタッフは「当店ではスタッフが対応できないため、法律で定められている通り当店では携行缶への給油はできません」と話します。

事故による危険や事件の発端により、携行缶の給油が厳格化されるように

 ガソリンは取り扱いの難しい液体にも関わらず、気軽に購入できることもあり事故や犯罪の原因になることが後を絶ちません。

 ガソリンは引火点がマイナス30度からとなっていて、冬季でも可燃性蒸気が発生するほど高い引火性です。

 沸点も30度からと低いこともあり、夏場は気体が膨張しやすく、一度引火すると大火災に発展する可能性もあります。

 2013年の福知山花火大会露店爆発事故では、発電機に給油をおこなう際に気化したガソリンが引火して60名以上の被害が発生する大事故となりました。

 そして法改正のきっかけになったのが、2019年の京都アニメーションでの放火事件です。

 京都アニメーション第1スタジオに侵入した男が、バケツに入ったガソリンをまいてライターで着火した際に、爆発を伴う火災が発生して70名以上の死傷者が出ました。

 平成の時代最大の放火事件が起きたことをきっかけに、総務省消防庁はガソリン販売に関する規制強化に踏み切りました。

 規制強化が実施されて3年以上が経過しましたが、販売店での携行缶への給油はどのような対策を行っているのでしょうか。

 首都圏内のフルサービスのガソリンスタンドスタッフでは次のように話します。

「携行缶への給油はスタッフが行いますが、免許証をお持ちであれば携行缶をお渡しできます。携行缶へ給油できる量は1日20Lまでです。

 また、携行缶をお渡しする際に5000円預かり、返却する際に5000円はお返しするというルールでおこなっています」

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 有資格者の給油や販売記録の保管など、携行缶に給油するための経費を考えると縮小の一途を辿るのは致し方ないかもしれません。

 ガソリンは、保管できる場所や時間も限られる上に、静電気でも引火する可能性があり一度引火すると鎮火も難しい液体です。もし使用する際には安全面に対しての細心の注意が必要です。