夏の暑さで酷使されたタイヤは、熱や紫外線によって劣化が進んでしまいます。すこしでも寿命を延ばすためには日常点検が重要です。どのような点に注意したら良いのでしょうか。
夏の暑さでタイヤがピンチ!
クルマと路面を繋ぐ唯一の接点である「タイヤ」は非常に重要なパーツです。日常的な点検が必要とされていますが、走行前のタイヤチェックをサボりがちになっている人もいるのではないでしょうか。
とくに、猛暑でタイヤを酷使していることもあり、改めてタイヤの状態を確認しておく必要があるでしょう。
タイヤのトラブルにはある傾向があり、ロードサービスをおこなうJAF(日本自動車連盟)が発表したロードサービス出動要因の資料によると、「タイヤのパンク・バースト(エアー不足)」は一般道では全体の2割程度である一方、高速道路では約4割とかなりの割合となっているのです。
タイヤのトラブルが発生しやすい時期として、ゴールデンウィークや年末年始よりも、お盆シーズンのほうが起こりがち。冬の「スタッドレスタイヤ」使用を含んだ状態より、一般的な「ノーマルタイヤ(夏)タイヤ」のほうが酷使されているといえるでしょう。
そこで気になるのが、ノーマルタイヤの寿命はどれくらいなのかということです。都内のタイヤ専門店スタッフのT氏に教えてもらいました。
「まず一般的なノーマルタイヤは、走行距離で3万kmから5万km、または3年から5年程度が寿命と言われています。
しかしこれは使用条件や保管状態によってかなり変わるのですが、それでも経年劣化や硬化などを考慮すれば、新車時に新品だったタイヤも2回目の車検(5年)以内には交換したほうが良いでしょう。
ただ、何のケアもおこなわないでいると、たった2年で危険な状態になることもあるのです」
実際に車種や乗り方、走行距離によっても劣化具合は変わってくるそうですが、実は車種ごとに装着されているタイヤの状態を理解すれば「傷みやすい箇所」は自ずとわかってくるといいます。
「まずタイヤ(特にフロントタイヤ)は、直進安定性を高めるためにあえて垂直には装着されていません。
ごく微量の角度(キャンバー角やキャスター角)が付いており、少し踏ん張るようにセッティングされています。
つまりそれだけ走行中やコーナリングで負荷がかかり、摩耗もしやすくなっている箇所があるのです」(タイヤ専門店スタッフ T氏)
一般的に、スポーツカーはキャンバー角が強めでタイヤの内側が摩耗しやすい傾向があり、逆にミニバンやSUVなど車重があるクルマは、コーナリングなどで荷重がかかりやすく外側が傷みやすい傾向にあるそうです。
「最近の異常気象で夏は灼熱ともいえる気候になりやすく、当然ながら路面温度もかなり上昇しています。
そのため、ゴムを主成分とするタイヤはさらに負荷がかかってしまい、傷みが進行しやすくなっていると言われています。
路面の熱の影響でグリップ力が低下していたり、偏摩耗が進んでしまうこともありますし、強烈な紫外線によって表面の劣化が進行し、ヒビ割れが起きやすくなることも考慮しておきたいポイントです」(タイヤ専門店スタッフ T氏)
コンディションを保つために簡単にできることとは?
夏の過酷な時期を経験したタイヤですが、どうすれば多少なりとも劣化を抑え、コンディションを維持できるのでしょうか。
「まず簡単にできることといえば、タイヤの空気圧を適正に保てるように小まめにチェックすることです。
夏は気圧が高めなので空気圧の減りも少なそうに感じますが、実際は毎日少しずつ減少していて、空気圧が減っていると偏摩耗の原因になったり、燃費も悪化します。
ガソリン価格も高騰しているこのご時世ですから、少しでも燃費を改善するためにも、少なくとも月に一度はガソリンスタンドやタイヤ専門店などでチェックし、空気圧を適正に保ちましょう」(タイヤ専門店スタッフ T氏)
また気圧による体積の変動が少ないとされる「窒素ガス」の充填ですが、確かに変動は減るものの別料金がかかることを考えると、通常のエアー注入で十分とのこと。
「あとは、タイヤワックスや艶出し剤などでタイヤの側面を保護するのも有効です。コーティング作業で必然的にタイヤをチェックでき、ヒビ割れや溝の減り具合なども確認しやすくなるでしょう
普段はあまりタイヤワックスを推奨していないのですが、夏の強い日差し(紫外線)の直射を少しでも減らす、カバーするという意味では『紫外線防止剤』などを配合しているクリーナーなどは有効です。
同様に日中の長時間駐車は、できる限り日陰を選ぶことでわずかながらタイヤの劣化を遅らせることができます」(タイヤ専門店スタッフ T氏)
走り方によってもタイヤの状態が左右されるといいます。
夏はタイヤのゴムも熱によって柔らかくなっており、カーブなどではタイヤのショルダー部を傷めないように急ハンドルや急発進を控えたり、駐車場などでクルマが停止したままハンドル操作をする据え切りも極力おこなわないようにするなど、タイヤに優しい運転を心がけるのも意外に大切なことなのだそうです。
※ ※ ※
タイヤは「生もの」と言われるほど、実は繊細で路面状況や温度によって性能も変化します。できる限り長く使うために、タイヤローテーションなども含めた日頃の点検とケアを意識しましょう。