訪日観光が好調でゲストハウスなどが急増する京都市で、京都らしい街並みを形成する路地奥の建物が市から宿泊施設として許可されたのに、建築基準法令に適合しないケースが出ている。問題となっているのは、建築確認が不要な小規模物件。建築部門以外で旅館業の許可に関わる保健や消防の部門ではチェックできない体制で、民泊急増による安全面の課題が浮上している。

 7月下旬、下京区にある京町家を生かした簡易宿所が営業を停止した。建物から道路に通じる路地は、西隣の京町家の1階部分を通り抜ける構造の「トンネル路地」で、幅は1メートル弱しかない。こうした場所での営業が「建築基準法令に不適合だ」と市民から通報を受けた市が、宿を開設する企業に指導したためだった。

 外国人観光客が急増する中、路地奥の民家を用途変更して宿泊施設に使うニーズは強い。ただ、建築基準法や市条例では、用途変更できるケースはごく限られ、複雑な制度になっている。

 同法が施行された1950年より前の建物などの場合、建物の出口から道路に通じる路地の幅が1・5〜4メートル以上などの条件を満たさなければ、宿へ変更可能できない。さらにトンネル路地では、火災や地震時に崩れて避難を妨げる可能性があり、建物の裏が道路に接することも必要となる。

 ところが、路地奥に多い延べ100平方メートル以下の建物は小規模物件のため、制度上は建築確認が不要。災害時に有効な避難路の確保は、所有者や事業者が建築の専門家と相談するなど自己責任に委ねられており、「法令に不適合な宿が生じる原因。市内には他にもあるだろうが、どこに何軒あるかは把握できていない」(都市計画局)という。

 旅館業の許可には旅館業法、消防法、建築基準法の主に3法を満たすことが求められる。100平方メートル以下でも、保健福祉局が居室や風呂、消防局が消防設備について、図面や現場で確認している。下京区のケースは旅館業の許可手続き面で問題はなかったが、路地の幅などが建築基準法令に合わない状態を見落とした。

 今回の不適合事案を受け、市は「路地奥の物件に関して、今後は3局で情報共有を強化する」とする。ただ、路地奥の建物を簡易宿所に変更できなかった男性(46)は「同じような条件なのに、一方で市のチェックをすり抜けられる物件がないようにしてほしい」と求めている。