京都府綾部市睦寄町古屋でITを使った獣害対策プロジェクトが進行している。人の目が届かない森林を、センサーで24時間監視し、鳥獣の出没地点を予測して駆除につなげる試みだ。過疎高齢化の進む中山間地での効果的な対策として期待され、取り組むIT関係者や猟師、地元住民は、初秋に一定の成果を出したい考えだ。

 「ひづめが土に入ってるのが見える。子ジカかな」。6月下旬、古屋公民館から数十メートル離れたわなの近くで、猟師の林利栄子さん(29)が解説した。近くに備えたカメラの映像を公民館で確認すると、わなの中にある餌を狙うシカ3匹の姿が映っていた。

 プロジェクトは、シカ害に悩む古屋周辺のトチノキ林にセンサーを取り付け、パソコンでシカの行動をデータ化して把握。出没地点を予測して効果的な駆除を狙う試みだ。市内のIT関係者でつくるNPO法人「綾部ITワークス」や地元の古屋自治会などが行う。

 「民家近くまでシカが出ます」と自治会長の渡邉和重さん(65)はぼやく。古屋では菓子製造に使う特産のトチへのシカ害が悩みの種となっている。ボランティアらとシカ除け柵を毎年設置するが、800本近いすべての木には不可能で、多くが食害に遭っているのが現状という。

 取り組みは4月下旬から始め、小型パソコンをつないだ人感センサー20個を林に設置した。場所は、猟師の林さんや地元の渡邉さんらがトチノキ林をフィールドワークしたり、集落近くにわなを置き足跡を分析したりして決めた。今後は集まったデータを解析して獣道を特定する。ITプロデューサー洪裕智さん(40)は「現在の駆除は猟師の勘だけに頼っており、データを多くとれば効率的に対応できる」と意義を話す。

 センサーを利用した獣害対策では長野県塩尻市が成果を挙げている。農地で実証したところ、2011年には全体面積の85%が被害に遭っていたが、3年間でなくなったという報告がある。

 綾部では森林での対策で、センサーの無線通信距離や電源に課題もある。だが、システム作りを担当する舞鶴工業高等専門学校の技術職員古林達哉さん(27)は「必要な機器はより安く高性能化するはずで、もっと充実できる」と指摘する。