氾濫の一因になったのは、通行のために堤防を切り落とした「切り通し」と呼ばれる部分だった。8日未明に滋賀県長浜市大井町を襲った姉川の濁流。県も市も、増水時に「切り通し」をふさぐ対応を地元自治会に任せており、避難者から「もう少し早く対応できなかったのか」と嘆く声も上がった。

 県長浜土木事務所によると、旧大井橋は通常の橋と異なり、両岸の堤防より低い位置にある。堤防設置後も住民が行き来できるように、橋を通る県道と堤防の結合部分を削った「切り通し」を姉川で唯一設けていた。

 旧大井橋の下流約100メートルに新大井橋が完成した1993年、県は旧大井橋の撤去と「切り通し」の廃止を検討した。だが、「農作業や通学に便利だから残してほしい」との一部住民の意向に応じ、撤去しなかった。氾濫を懸念し、県に撤去を求めていた住民もいた、という。

 市によると、増水時は地元の大井町自治会が独自に危険性を判断し、右岸と左岸にある「切り通し」を木製の堰板(せきいた)などでふさぐ決まりになっている。同自治会が8日午前2時ごろに堰板をはめようとしたが、すでに川が氾濫しており作業は難航。同3時半に設置を終えたが、家屋の浸水を防げなかったという。

 饗場富蔵自治会長(59)は「午後11時に氾濫危険より1メートル以上も下だった水位が、あっと言う間もなく上がってきた。あんな光景を見聞きするのは初めて。自治会が判断できるレベルを超えている」と話した。

 近くの米田賢一さん(70)は「もう少し早く堰板を取り付けていたら避難の必要はなかった」と悔やんだ。